11.受付のせっちゃん
あたしは節子。
N.A.事務局のみんなからは「せっちゃん」と呼ばれている。
わたしは受付に座って、毎日をのんきに過ごしていた。
タジマ局長の後姿をうっとりと眺めたり、「本日の占い」を本気で信じたり、アタル室長のお茶を出し忘れたり、
そんな風に毎日を楽しく過ごしていた。
そんなある日、マコが入社して来たのは2000年の春だった。(もう5年も経つんだわ!)
-都会からキャリアウーマンが来る!-
あたしたちの間にまさしく激震が走った瞬間だった。
どんなに性格が悪いんだろう、とか
あたしたちの仕事を叩いて周るに違いない、とか
タジマ局長の恋人だわ、とか。
あたしたちは色んなことを言い合ったの。
ところが・・・やって来た彼女はふんわりと優しく暖かい、まるで”春”そのもののようなステキな女性だった。
あたしたちはすっかりマコを好きになったわ。
だって彼女は、あたしたちを無条件で好きになってくれたんだもの。
そんな彼女には”タロ”という恋人がいたわ。
マコは”タロ”の事を愛していた。(それはもう盲目的なほどに)
みんなは2人の事を心から祝福していたし、応援していたけれど、あたしは危ないなって思っていたわ。
だって、話がうますぎるんだもん。
局長だけでなくナリタ会長までが”タロ”を信頼していた。盲目的なほどに。
けれどあたしは疑った。
だってあの男はここに来る前は東京のクラブDJやってたらしいの。
しかもマコの姉はそのクラブに通って死んじゃったらしいし、その後でマコに擦り寄ったって噂だもの。
みんなの目を騙せても、節子の目はごまかせないんだから。
そんなマコが笑わなくなったのは2年前。
あたしは心配になって色々相談に乗ろうとしたわ。
けれど彼女は寂しそうに微笑んで首を振った。
やがて彼女が”タロ”と別れたらしいと局内に噂が周ったの。
あたしは”タロ”を密かに憎んだわ。
あたしの憧れを、あたしの希望のマコを幸せにしないなんて、許せないもの。
マコが突然仕事に来なくなったのは1年前。
それ以来マコは誰にも連絡を取る事もせず・・・あたしたちの前から姿を消したのだ。
そして1年後、あたしは真実を知ることになる。