10.タロの終わらない番組(不思議なウワサ)
-ぷっぷっぷーーーん。
-みんな元気!僕は今日も元気だよ♪
-昼下がりのひと時を、DJタロがお邪魔しまーす!
-”タロの終わらない番組”始まるよ!
PAミキサーの音量を緩やかに引き上げる。
-ラ・ラ・ミーンズ・アイ・ラヴ・ユー-スウィング・アウト・シスター
la la la・・・I love you♪
晴れ上がった夏の空に、その曲は溶け込んでゆく。
-タロちゃんの選ぶ曲を聞くと、いつも幸せな気持ちになるわ-
頭の中で幻の声が聞こえる。
彼女の眠る病室で、僕の番組が流れているはずなのだ。
聞こえているだろうか。
聞こえるといいな、と僕は祈るのだ。
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リスナーさんからの手紙が届いていた。
- ハロー!タロさんの番組、いつも楽しみにしていまーす。
- わたしの学校で、不思議な話が流行ってるの。今日はそれを紹介しますね。
- わたし達の世界とは違う世界があるんだって。
- その世界は、なんと、人間の身体と同じ成り立ちをしているらしいの。
- その入り口は、口なんだって。
- そういう夢を、見た人が最近増えているってウワサなのよ。
- タロさんはどう思う?
...
-うーむ。不思議な話がブームになっているのですねえ。
-それが本当にあったら・・・僕も行ってみたいなあ。
-それでは、リクエストにお答えして。
-OPEN UP MY WINDOW-クリストファー・クロス
青空に浮かんだ白い雲が、スタジオの向こうの廊下の窓からふわふわと浮かんでいて
リクエスト曲となんだかよく合っていた。
リスナーさんの不思議な話が後に現実となる事など、その時の僕はまだ知らなかったのだ。