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続・タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第一章 -長い眠り-
1/59

1.プロローグ (2005年4月)

 草原を渡る風。


さわさわと草をなでる風が、わたしの病室にまで届いて来る。



 風に乗って千切れた草が空を切る。



タロちゃん。わたし起きてるよ。頬に風を感じてるわ。



 わたしは心の中でタロちゃんに報告する。


枕元のテーブルに置かれたリンドウの花が風に揺れる。


タロちゃんの声がラジオから流れるのを聞きながら、わたしは再び夢の世界へ引き戻されて行く。



-ザ・クリスマス・ソング-(Nat King Cole)


タロちゃん、また掛けてるのね。(季節に関わらず、彼はこの曲をプレゼントしてくれる)


 そうしてわたしの意識は途絶えてしまう。


 わたしは幻の雪に包まれるのだ。



---



 僕の愛しいマコさん。


あなたは今、どんな夢を見ている?



 ラジオ局からの帰り道、僕は車のハンドルを切りながらぼんやりと想う。



白い壁、清潔なシーツ。

ビニールのスリッパ。

草原に囲まれた海辺に程近いサナトリウム。


彼女はそこで眠り続けているのだ。



 信号がピカリと光る。

青信号をしばらく眺め、後ろの車からクラクションを鳴らされてやっと僕は意識を戻した。



-God Give Me Strength-Elvis Costello&Bacharach&Tom Ehlen


エルビス・コステロの不器用な歌声が、フリューゲルホルンの音色と共に暖かく車内に響く。


僕は緩やかにアクセルを踏む。


家路へとハンドルを切る。


 車は走る。誰もいない我が家に向って。


挿絵(By みてみん)


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