プロローグ
別に、僕にはこれといった特徴もない。田舎で生まれ、田舎で育ち、外国に憧れて大学の英米文学科に入った。
毎日友達と下手な冗談を言っては笑い合い、留学するために毎日TOIECの勉強でヒーヒー言っている。それが、いま現在の僕で全てだった。
悪い事はしていないつもりだ。普段から善良な一般市民でいるための努力をしてきたし、敵を作ることもなかった。人に悪くは思われても、それは意見や思想の違いであって、どうしようもないくらいに険悪な仲にはなったこともなかった。
ただ、そんな僕だけれど、一つだけ困ったことがある。どうやら僕は、トラブルを呼びこむ体質らしい。子供の頃は、運が悪いと結論づけていた。
しかし19才になり過去を振り返ってみると、笑い事にならないような事件が毎年……いや、毎日のように起きていた。これを運が悪い、とだけで済ませれるだろうか。否、そんな訳はない。
ある時は暴力団同士の銃撃戦に鉢合わせ、ある時は銀行強盗に襲われる。
またある時はガソリンスタンドが爆発事故を起こし、ある時はイノシシ5頭に殺されかけた。
年に一回は犬と猫が交尾している現場に遭遇することもあった。
空を見上げる。どこまでも続いていそうな、終わりのない空が、とても遠く感じた。
人に物を教える時は、きちんと順序を守らなければならない。
愛する女性と一つになるにも、きちんと順序を守らなければならない。
それと同じように、きっと今置かれている状況にも、順序という物が必要だったはずだ。
順序なんてものをパンツと一緒に道端へ放り投げて、さあやりましょうと言っている神様には、怒りを通り越して幻滅した。
この際神様でも仏様でもいいから、この場所がどこなのかご教授願いたい。
状況から察するに、森の中に居るのは理解できます。だがしかし!
ここは南米なのか? 北米なのか? はたまた欧州なのかそもそも日本なのか……。
僕の質問に答えてくれたのは、神でも仏でもなく、優しく頬を撫でるそよ風だけだった。
だけど、それだけで理解出来ることもあった。
――どうやら僕は、異世界に飛ばされたらしい。