"Short Short"
電気的駆動音と共に装置が励起し、ケーブルが微振動する
ケーブルの先には清潔に整えられたベッドが在って
その上では革ベルトでベッドに拘束された少年が、今にも泣き喚きそうな顔で瞼を視開き、装置の様子を過呼吸気味に観察して居る
彼の左胸からケーブルは始まって居る
端的に要約すると、少年は先刻の手術で心臓にスタンガンを突き刺された
無論これは治療では無いが、手術が治療の為だけに在るべきとも僕は思わない
これは娯楽の為の手術だ
この世はエンターテインメントの柄に包装された悲劇に溢れきって居る
別に、これくらいこの世に在ったって構わない筈だ
スタンガンのスイッチは、僕の手元に在る
通電したところで死ぬこと迄は無い様にしたが、きっと死を懇願する程には痛みを伴う電流だと思って居る
そのように設計したからだ
ベッドに近付いて、少年の瞳を覗き込みながら手の中で小さなスイッチを弄ぶ
少年が泣いて叫びながら通電スイッチを引ったくろうとするが、仰向けに寝かされた姿勢では指が届く事は無い
病室が彼の喚き声で大変騒々しくなったが、僕が「騒ぐと押すよ」と告げると、少年は観念したのか指で両眼を覆ってしくしくと泣き始めた
少年がきちんと両眼を塞いで居る事を確認すると、僕は彼の耳元でスイッチを押し込んだ
かちっ、と、小気味の良い音がして
少年は口から臓物を総て吐き出すのでは無いかと思われる様な、恐怖に狂った声で騒ぎ始めた
さりとて何も起こる事は無く
やがて理解が追い付かなくなった少年が無表情になると、僕はスイッチを床に捨てて笑った
「嘘だよ」
「本物はこっち!」
ズボンのポケットから押し込み式のスイッチを取り出して、利き手に握る
視せ付ける様に親指を立ち上がらせると、僕は勢い余ってそのボタンを押し込んでしまった
覗き込んで居た少年の眼球の中で黒眼が、音が聞こえそうな程に大きく視開かれる
僕は驚いて、あ、とだけ発音した後、息を呑むと急いで病室を飛び出し、扉を速やかに閉じ、部屋に施錠を行った
部屋の中では少年が、叫び過ぎて喉が裂けたのか濁点だらけの大声でたすけて、と云う様な意味の言葉を繰り返し、拘束ベルトが壊れそうな程にベッドを揺らして暴れ続けて居る
僕は動揺しながら腕時計を視た
装置が正確に動作する場合、恐らくもう通電が始まる─────




