君を失ったあの日 二日目の不思議
聞こえるのは雨音、遠くから聞こえるのは近づいて来るサイレン。
目の前には横たわる君。
抱きしめているのに君はどんどん冷たくなっていく…
呼び掛けても返事は返ってこない…
どうして?なぜ?
色んな感情が胸の中で騒ぐがどれも答えに辿り着かない。
君の顔を見ようにも車の光りに照らされてよく見えない。
僕の服はどんどん赤く染まる…
それでも君を温めたくて抱き締める。
お願いだ…目を開けてと、何度も口にする。
しかし返事は返ってこない。
どんなに願っても返事は返ってこない。
目の前がボヤける…それは涙なのか雨なのか…もうわからない。
白い服の人が僕と彼女を引き離す。
やめて!引き離さないで!
冷静になればそれが救急隊の人とわかるのに今の僕にはわからない。
そこからは殆ど記憶にない。
気がついたら部屋の中で顔に布を掛けられた君が横たわっていた。
ねぇ?起きて…また君の笑顔を見せて…呼び掛けても部屋に木霊すだけだった。
その時に僕は自覚してしまった⋯失ったと。
大切な彼女を…涙が溢れてきた…しかし声は出ない…ただただ涙が零れるだけだった。
それから彼女のご両親が駆け付けた…泣いていた…
ごめんなさい…一緒に居たのに守れませんでした…
罵倒されるのを覚悟していた。でも、返って来たのは…辛かったね?一緒に居てくれたのね。さみしくなかった?そんな優しい言葉だった。
また涙が溢れてきた。
一緒に部屋を出たけどどうやって帰ったかは覚えてない。
帰ると部屋は真っ暗。君が居た温もりが消えたのをまた無理矢理認識させられる。
濡れていても構わなかった…今はただ座りたい。
外から聞こえて来るのは雨音…規則正しく音が響くいつもの雨…でも、僕のいつもではない。
僕はただ膝を抱えて丸くなっていた。
どのくらいそうしていただろう…塞ぎこんでいたのか、眠ってしまっていたのか…
するとインターホンがなった。
けど出る気にはなれなかった…けど、何故か出なきゃいけないとも思ったのでドアを開けると彼女のご両親が立っていた。
どうして?食事?何も食べてないんでしょ?なんでそんなに心配してくれるんですか?僕のせいなのに…え?僕のせい…じゃない?違う!僕が彼女の隣を歩いていたら僕が代わりに!と、言ったところで彼女のお父さんに怒られた。
そんな事を言ったらあの娘が悲しむ。だからこそ君はあの娘の分まで頑張ってほしい。私達は無理かもしれない?そんな!え?僕に未来がまだある?でも!彼女の居ない未来なんて!
え?頼むから未来が無くなったのを彼女のせいにしないでほしい?
僕はいつの間にか彼女のせいにしようとしていたらしい…
ごめんなさい…え?ゆっくり休みなさい?でも!今の僕を彼女が見たら悲しむ?どうして?わからない…でも、彼女のお母さんにそう言われ休む事にした。
シャワーを浴びる…何もかも洗い流すように…でも、心の空白だけは流せない。
着替えると差し入れを食べてベッドで横になる…
ベッドが広く感じる…
いつかは消えてしまう彼女の匂いに包まれて僕は眠った。
どのくらい寝ていたのか…スマホを確認すると日付がが変わり翌日、彼女が居ない二日目の朝になっていた。
通知には事故の事を知った友人達から連絡が沢山来ていた。その中にありえないメッセージがあった…彼女からの。
イタズラ?嫌がらせ?どっちかと思ったが確かに彼女のアカウントからだった。
震える指でメッセージを開くとそこには『大好きだよ』と打ち込まれていた。
いつ?送信ミス?原因はわからない。でも、確かに彼女の気持ちが届いた。同じ気持ちだったんだと。でも、何故今のタイミング?確かに彼女スマホは壊れていたし、彼女はスマホを弄っていなかった。
何度考えてもわからない…けど、彼女の想いは消えなかったと思えた。




