【第4話】:~初めての依頼~
家に帰ってパソコンを開くと、ココララからメールが来ていた。
【受注決定】
「よっしゃーーーー!!」
やっぱり、俺は出来る男、たとえ競争率高くても、1件位はすぐ決まる。
……ん?
【受注決定】、【受注決定】、【受注決定】、【受注決定】、【受注決定】。
え??6……6件……。
え?え?ちょっと、え?締め切りって、確か……。
すぐさま調べると、え??だいたい全部、4日以内!
……完全にやっちまった。でも、やるしかない!
逆に、初めての依頼が6件なんて、流石、俺じゃん?!
なんて、強がってみたりして……。
3日間の徹夜。エナジードリンクとカップ麺に支えられながら、どうにかこうにか6件の納品を終えた。
「終わったーーーー。」
もうフラフラで意識も飛びそうな中、
(やればできる俺、最高!)
なんて、初依頼を終わらせた余韻に浸っていた。
だって、俺、本物のフリーランサーになった感じしない?
でもさ、数撃ちゃ当たると思って10件申し込んだら、当たりすぎ。
俺は出来る男だから、今後は2、3件申し込めば大丈夫。余裕。余裕。
フリーランスの今後にも期待しつつ、睡魔が襲ってきた。
(流石に寝るか……。)
その時——
“ピロン”
ん?メール。ココララから……。
『修正依頼のお知らせ』
「え?修正?……俺、やらかした……?」
恐る恐るメールを開くと、向こうの都合だった。
(なんだ……ホッ……)
でも、初依頼だし、直してやるか。
それが始まりだった。
『再修正依頼』
『微調整希望』
『ちょっとだけ修正』
『あと、ほんのちょびっとだけ…』
俺の“初依頼”は、
『どこまで修正問題』という名の迷宮の入り口だった——。
その依頼をクリアした瞬間、俺は、ベッドに行く余裕も残ってなくて、そのまま机に倒れこんで熟睡していた。
(え?これ、クリアした?逆にやられてない?)
―――収支カウンター(開業5日目)ーーー
・目標:月収30万!
・受注案件:6件
・作業完了:6件
・謝礼予定:15,000円(ドーン!)
・経費:名刺印刷代、エナドリ、カップ麺など 2,730円
・実質利益:12,270円(たぶん黒字!)
→結果:俺は出来る男、見てくれ、この黒字!
こよりちゃんが、経理のやり方を教えてくれると言ってくれた。
俺は、Excelに入力してるデータを持って、カフェで待ち合わせた。
「仁くん、どう?」
「こよりちゃん、俺、帳簿の付け方なんて全然分からないから助かるよ。これ、Excelのデータ。」
開業5日であのモンスター案件も含めて、売上があった俺は、誇らしげにファイルを差し出す。
「……あれ?仁くん、これ……」
こよりちゃんが指さしたのは、売上の欄だった。
「え?どうかした?」
全く何も思い当たる節が無い。
「うん……仁くん、ココララの手数料引いてないよ?これ、何日かかったの?」
こよりちゃんは仕事の時のようにテキパキとしていた。
「え?ココララの手数料?何それ?3泊4日で仕上げたけど……」
こよりちゃんは一瞬だけ“やっちまったな”って顔をしたが、すぐに微笑んで言った。
「そっか、そうだよね。私、経理しかできないから、つい……。ちゃんと説明するね。」
──ここからが“現実”だった。
ココララでは、売上から22%の手数料が差し引かれるらしい。つまり、俺の受取額は78%。
(え?マジ……引かれ過ぎ……)
「だからね、15,000円の78%は11,700円。で、8時間×3.5日だから28時間働いたってことで……。うーん、時給417円……あっ、ごめん!つい、時給まで出しちゃった……!」
(……417円……まじかよ……)
今の最低賃金とかさ。幾らだっけ……1,000円近くなかった?半分も行かないってこと……。
もう、俺の中の“黒字感”は、とっくに消えて、絶望感でいっぱいで、こよりちゃんの話が、そこから入って来なかった。
家に帰って、靴を脱ぎ棄て、電卓を手に取り、すぐさま月収の計算をしてみた。
8時間 × 22日 × 時給417円 = 73,392円
(うん……一応フルタイム換算だし、これが月収……だよな)
でも、ここから──
国民年金:約16,500円
健康保険料:約20,000円
……引かれると?
残り:約37,000円。
(え?家賃も払えない……)
次の瞬間、俺は——
床に崩れ落ちた。
そういえば、いつも俺が出してたカフェ代。
こよりちゃん、今日は「割り勘でいいかな?」って言ってたっけ……。
(俺って、情けないのかな……)
“ピロン”
ん?LINE。こよりちゃんからだ。
『仁君。まだ開業して5日で売上出すなんて凄いよ!がんばれ♡』
……時給417円なのに?……打ちひしがれていた俺だけど、これからだよな。やらなきゃ!
『俺、これから本気出す!』
って返してみたりした。まだ、全然立ち直れない衝撃だけどさ。
To be continued…
※この作品は note 掲載作品の再投稿です(加筆修正版)。




