【第2話】:~販売促進課、そして……デスク争奪戦~
「総務部から異動になった、寺優仁です。よろしくお願いします。」
今日から、販売促進課。
噂では聞いている。ちょっとクセが強めな課だと。
でも、俺はやる。いや、出来ちゃう男。
……課長にはなれなかったけど……。
「あ、寺崎君、君には、猫田さんと今井君と三人で、あそこのデスクを使ってもらおうかな?それでいいかな、猫田さん?」
…あ、寺“優”ですけどね。ってか、異動初日から名前間違い……この部長、クセ強疑惑あるぞ。
この課……噂通り?
「あ、別に、いいでーっす。」
え、猫田さん独特??……クセ強はこっち??
しかも……え??え??あそこのデスクって……。
「あの、猫田さん、デスク2個しかないみたいなんですけど……。僕たち3人じゃないですか?」
恐る恐る聞いてみた……。クセ強怖いんだけど……。
「あ、寺優君て細かいこと気にする派?」
え?え?それどういう意味?それ、俺が正しくないですか?……もしかして、この課では“普通”が異端??
そんな雰囲気漂ってる。
「今井く~ん。寺君にさ、色々この課のこと説明してあげてぇ~。私はちょっと……。」
あ……。猫田さん、私はちょっと……のあと、俺分かっちゃった。“面倒くさいから”だよね……。
「はいは~い。あ、寺優君。僕、今井。」
なんか物腰の柔らかそうな人。……というか、軽すぎない?このひとも“アレ”だよね……。
「あの、デスク2個で3人てどういう……。」
「あ、それ?それね、前任者も気にしてた~w」
……え?気にしない人いる??猫田さん、と今井さんだけじゃない?あと部長も……。
「この課って、僕も入れて4人なんですか?」
少しの希望を持ちたくて聞いてみた。
「え?4人だけど?」
……ですよね。
今井さんは一見優しく色々説明してくれた。
……色々カオスなことだけは分かった。
机は使いたい人が使う?どういうこと??とか、今時ペーパーレスじゃないとか?皆がクセ強とかさ……。いい所がない感じ?
“ピロン♪”
もはや職場が“異次元”すぎて、俺の唯一の現実はこのLINE通知だけだった……。天使からの救い、来た!
『仁君、販売促進課はどうかな?初日だから、張り切りすぎないでね。仁君、なんでも出来ちゃう人だから心配だよ♡』
こよりちゃーん!!
そう、俺は出来る男。……ここでは分からないけど……。
たとえ、デスク、3人に2個でもさ。やるよ。俺、やる!……きっと。
それからは、通勤時間を1時間程早める日々。
いや、非常に不本意だけどさ、デスクは譲れないよね?
デスクの取り合い……じゃなかった、譲り合いってさ、俺、無理。
前任者も出社が早かったって、今井さんが言ってたけどさ、普通そうなるよね?
だから、早起きして、皆が出社してくる前に、何食わぬ顔でデスク取るっていう、ナチュラルな出来る男な訳、俺。
でも、そのやる気もどんどん削られていった……。
だって、営業事務なのに、誰も電話を取らない──もはや着信音が鳴り続けることすら“風景”になってた。
営業との仲も最悪。
営業の人の気持ちが痛いほどわかる。
でも……。
「あの、猫田さん……電話取った方が……僕も取りますけど……その……僕が電話に出てる間も……電話鳴ってるじゃないですか?だから……その時だけでも……取ってもらえれば……。」
めちゃくちゃ勇気を出して言ってみたんだよ……。そしたら、あの人……。怖いこと言ってきた。
「え?寺君さ、電話って取ったら勝ち?」
え?もう、ここカオス???……今井さんも無関心だし……。
猫田さんは続けた……。
「私はね、寺君。電話を取りたくないわけじゃないの。電話に出たら負けだと思ってるの。そのくらいプライド持ってやってるの!!」
……え?ナニ言ってるのこの人……プライドとか言った……?
ーーーあれから俺はここでは何も出来ないんだ!って悟ったんだ。
そして、遂に限界が来た……。
本屋で、一冊の本を読んだ時、”これだ”!!
と思った。
家に帰ると、ベッドに倒れ込み、残りの力で、その本を一気に読んだ。
え?本のタイトル?『君にも出来るフリーランス』
そのページには、こう書いてあった。
“組織に合わない人こそ、自分で働く才能がある。”
もう、自分のことだと思ったよ。
俺はスマホを掴んで、こよりちゃんに即LINE。
迷いもあるけど、こよりちゃんなら、なんて言うかな?
To be continued…
※この作品は note 掲載作品の再投稿です(加筆修正版)。




