【第16話】:~こよりサイド……~
ちょっと懐かしい話なんだけど……私、最初は、仁君のこと、“寺優さん”って呼んでたんだ。
全然年上だし……。
~入社1年目~
「菊池さ~ん。頼まれてた消しゴム届いたよ。」
「あ、寺優さん。いつもありがとうございます。」
そんな関係だったんだ……。
周りにも、“菊池さん"って呼ばれてた。特に仲がいい人も居なかったし、お弁当も屋上で一人で食べてた。
それでいいと思ってた。それがずっと私の日常だったから……。
そしたらさ、仁君、屋上に来て、
「菊池さんも?」
「え?」
「菊池さんも、屋上好きなの?」
って。そうじゃなかった。屋上より、一人が好き。……そんなフリをしていた。
「俺も、たまに息抜きに屋上で食べようかな。お昼?」
ーーーそれから……ーーー
仁君。こよりちゃん。って呼び合うようになっていて……
気が付いたら、周りにも“こよりちゃん”って呼ばれてて……。
いつの間にか輪の中にいたんだ。
仁君はそういう人。きっと、あの屋上に来たのも、偶然なんかじゃなかったんだと思う。
「こよりちゃ~ん、準備出来たよ!お待たせ。」
タキシード姿の仁君は、いつもよりずっとカッコ良くて。眩しくて。
今日は、二人で、結婚式場で、衣装を選んでいる。
「どうかな?ちょっと派手目じゃない?」
彼は、はにかんで、少し笑った。
「えー。めちゃ似合ってるよ♡」
「え?じゃあ、これにしちゃおうか?」
私に合わせてくれる、こういうところが、彼らしくて……好き。
「うふふ。」
「こよりちゃん、どうしたの?いつもより凄く嬉しそうだよ。」
(あー。私、今、幸せ。)
私にとってもこれが“大成功”だって、気づいてる……ずっと……。
To be continued…
※この作品は note 掲載作品の再投稿です(加筆修正版)。




