【第15話】:~俺にとっての成功、そして……~
こよりちゃんが帰ったあとの静かな部屋の中で、俺は考えていた……。
こよりちゃんも言った“成功”の事を……。
そして……、俺は机の下から二番目の引き出しに眠った、履歴書を取り出した。
これは……俺が、会社を辞めた直後に書いた、就職用の履歴書だった。
まだフリーランスを始める前。
正直、あの時、迷っていたんだ。
フリーランスになるなんて、無理だろうって。
でも、君は言ってくれたよね?『仁君ならやりそう♡』って。
だから、やってみようと思ったんだよ。
”大成功”したら君と……なんて思ってさ。
俺にとっての成功……。
……それは……。
俺は、静かに履歴書を書き始めた。
涙が溢れた。
何も出来なかった……。
フリーランサーで成功したかった……。
でも……。
成功とは……。
その問いの答えを俺はようやく見つけたんだ。
「初めまして、寺優仁です。フリーランスを1年程やっていました。何でも、頑張りますので、今日からよろしくお願いします。」
俺はフリーランスを卒業し、新しい会社が決まり、会社員として働く道を“選んだ”。
33歳になっていた。
こよりちゃんは俺が会社員を選んだことを、最初は驚いていたけど、今は応援してくれている。
(あーーー!まだ、金が足りない。)
やっぱり、今年はまだ無理か……。
フリーランスを始める前は100万位溜まってたのに、今はもうほとんどない。
しばらくして、俺は新人教育係に抜擢された。
そうするとさ、昔の俺みたいな奴もいてさ、懐かしくて笑った。
「先輩、今、俺の事笑いませんでした?俺、なんでも出来るんで……。」
あはは。その後のセリフは分かってる……“俺は出来る男”……だろ?
あの時の俺は、全然出来る奴なんかじゃなかった。
そのことに気づくのに大分掛かってしまったけど……。
今はスキルも大分上がって、少しだけ“本当”の自信もついた。
……だから、君に会いたい。……伝えたい。
(……よし、貯まった……)
俺は、君に似合う可愛い写真を見つけて、ずっと貯めていた。
そして……今日……君に……
「仁君♡スーツ姿、久しぶりだね♡」
こよりちゃんは俺のドキドキも知らずに、無邪気に俺の袖をそっと掴んだ。
「こよりちゃん。……俺……。」
「ん?」
「俺にとっての成功は、君と一緒にずっと、一生生きて行くことです。
大成功じゃなかったけど、俺、頑張って昇進するから、君を一生守るから、
俺と結婚して下さい。」
こよりちゃんは一瞬ビックリして手を放し、でも、嬉しそうに俺に手を差し出して、
「よろしくお願いします。」
って言って笑った。その笑顔が最高に眩しかった。
これって、俺、大成功じゃない?
いや……これが、俺の“スタート”。
“大成功”に向けての!
フリーランスだった1年とこの半年。すごく濃い時間だったな。
遠回りしたようで、何も“無駄”なんてなかった。
悔しいことも、失敗も、全部必要だった。
今も、そして、これからも、俺はきっと、不器用なままだけど、それでも、大事なものだけは、ちゃんと守りたい。
『君と一緒に生きる』って、決めたから。
スーツの袖を軽く引っ張る君の手は小さいのに、俺にとっては、凄く大きく感じる。そして、凄く温かい。
これからも、きっといろんなことがあると思う。
でもさ、俺、今、めちゃくちゃ幸せだよ。
ねぇ、こよりちゃん。
「……俺、絶対に、幸せにするからな。」
君が笑ってくれる限り、俺は、何度でもやり直せる気がするんだ。
そして、何度でも……、君を守りたいと思える。ずっと……。
To be continued…
※この作品は note 掲載作品の再投稿です(加筆修正版)。




