卑弥呼の占い
卑弥呼は占いで遠い未来、世界が大変な危機を迎えると予測した。
未来を変えるべく卑弥呼は自分の力を未来の誰かに託すことにした。
時は流れて2024年、秋。
会社を辞め、家業を継ごうとしていた不器用な主人公、夏美
今日も散歩に行こうとするもその日は雨。
こんな日こそ体力つけないと!と外に繰り出す。
が、出会い頭に雄鹿に遭遇。
この土地では鹿の食害、個体数の増加が問題となっていた。
秋の雄鹿は気性が荒く縄張り意識が強い。
下手をすれば角で攻撃を受けて絶命の可能性すらある。
そんなときに鳥が一声さえずる。
鹿が我に返り山へ帰っていく。
あくる日、こんな日こそ散歩が一番!と外に出ると
一日の変化とは思えないほどに街が変わっていた。
いつの間にか解体されている空き家。なかったはずの電柱。
不思議に思い歩いているうちにいつの間にか道に迷ってしまう。
鳥の鳴く方角へ歩いていくと無事家に到着することができた。
小腹が空いたと柿を剥いてみようとする。
手が滑ってケガするかと思いきや全くの無事。
自分の感覚の変化に戸惑うものの成長したのだろう、と喜んだ。
目を覚ますと既に昼。
テレビをつけると季節は夏だ、という。
確かに秋というには少し暑い。
鳥の鳴く方角へ出かけると桜が咲き始めていた。
物珍しさに喜ぶ半面少々不気味さを感じ始める。
今日も早めに寝ることに。
夢枕で卑弥呼と名乗る女性が「選ばれたのだ」と語る。
何に選ばれたのか全く訳が分からぬまま目を覚ます。
外は雨。
ここのところ例年より早いペースで台風が発生していたがどの台風も直撃せずに済んでいた。
きっと晴れ女として選ばれたのだろう、気分を良くした主人公は外に出かける。
歩いているとだんだんと雨が止み始める。
川の流れは穏やかだが濁流のような音が聞こえている。
ここのところ生活リズムが狂っている。
朝の食事作りにと味噌汁を作り始めたが、今まで料理を作ったことがほぼなかった。
包丁の腕は全くダメだったが鳥の鳴くタイミングで味噌を溶くと美味しい味噌汁が作ることができた。
ふと、野鳥とコミュニケーションができていることに気付く。
卑弥呼の力を得たのだ、と歓喜した。
この日の天気は快晴。
新聞を読もうと玄関を開けると足元に猫がいた。
猫は卑弥呼の力が強すぎて今の地球には悪影響を与えることを伝える。
せっかく動物と会話できているのに、と苛立ちを覚えた。
その晩、イライラとしているせいなのか、それとも天気のせいなのか部屋がやけに暑い。
その日は結局一睡もできなかった。テレビでは日照りによる野菜不作の報道がされていた。
スマホで猫の実況動画を見ていると自分の声に合わせて猫が鳴いていることに気付く。
窓の外を眺めればこの辺りにはいないはずのヨナグニサンが飛んでいた。
卑弥呼の力はどんどん強くなっているのでは、と怖くなった。
その晩は流星群が観れるとニュースで知る。
外を眺めていると飛行機とも星とも思えない蛇行する光を見つける。
体調が悪いのだ、と見なかったことにした。
その日を境に秋だというのに春夏秋冬の花が咲き始めた。
嫌な予感がしたのであのときの猫を探しに行く。
鳥の鳴く方角へ走るとようやく猫を見つけることができた。
猫は近いうちに地球を侵略しようと目論む上位存在が来るだろう、
それまでに準備をするように、と語ると猫はまたどこかへと去ってしまった。
地球への侵略はそれから間もなく始まったようだった。
各地で隕石が落ちている、とニュースで報道されていた。
それと同時に海底深くより新種の生命体が発見され、
それらが研究施設より脱走したという。
それは猫の言っていた上位存在なるものだった。
怖くなったので流れ星に卑弥呼の力を返すよう願った。
するとふわりと体が軽くなった気がした。
テレビを観るとまたいつものように何事もないニュースが流れていた。