エピソード4 INO
INOの発動により都原のフェンサーが敵フェンサーの胴に反撃の一撃を見舞い、装甲には深く鋭い傷跡が残っていた。
都原の操るフェンサーの動きには大きな変化が生まれていた。
ケビンとハリスの手が加えられたハードモードのCPUが操作する敵フェンサーに一度は窮地に陥れられたが、今はもう決闘の主導権は都原にあった。
都原のフェンサーが敵フェンサーの攻撃を見切ったように、スルスルと避け始めたのだ。
INOのお陰だ。
INOの補助には都原自身も違和感を感じていた。
何故なら都原が動こうとする時には、既に機体は先回りして動き始めているのだ。
しかし、違和感があるのに違和感がない、矛盾しているがそういう表現をするしかなかった。
INOの補助があるだけで敵フェンサーの攻撃が繰り出される時には、もう避け始めていて、一瞬前にいた場所を攻撃が空を切って通過する。
都原の順応性も相当なものだった。
慣れてくると、張り詰めた一瞬の攻防が余裕に感じられる。
その不思議な感覚に都原は異常な興奮を覚える。
彼が一度深呼吸をすると、レモングラスの匂いが落ち着きを与える。
セーフティパフューム、ケビンがこの違和感による興奮状態を和らげるために提案した、嗅覚によるリラクゼーションを得る為の装置。操縦用アーマーのゴーグルには数種類のハーブの匂いを選択し醸す工夫がしてある。
これも正しかったと言える。
INOとセーフティパフュームが都原を擬似的なゾーン状態に突入させている。
Intelligence,Nature, Ownership
略して『INO』
INOに適応した今や、敵の変則的な攻撃は都原には通じない。
「見える…」
脚に斜めに切り下げる攻撃と見せかけて突然軌道を斜め上に変えV字を描く敵の攻撃を、都原は軽く身を翻し避け、そのベクトルを利用し最小の動きで敵フェンサーの左腕を切り落とす。
それでも間を開けずに、残った右腕に刀を握った敵機が、今度は都原をわざと避けさせるような大振りの一閃を放ち、案の定それを跳躍して避けたこちらに蹴りを喰らわそうとするが、その瞬間にはINOの補助で動いた脚が先に敵フェンサーの頭部にめり込む。
一瞬たじろいだ時には右腕も一歩踏み込んだ都原の正確な斬撃で失った。
最早、反撃の手段がタックルしか無いと判断するや、後方に跳躍し間合いを取って、こちらに向かって走り出す敵フェンサー。 それを都原のフェンサーが背中と脚のスラスターを使い、体勢を低くし横滑りしながら避けつつ、
「終わりだ…」
トドメの水面斬りで両脚をまとめて切り裂いた。
そして四肢を失った敵フェンサーはそれを最後に沈黙した。
INOを使う感覚を味わってみたいですね。なんか実際体験したら酔いそうですが(⌒-⌒; )