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エピソード53 プラネテスジョーカー 下

「チンパオ? やっと本編に進行らしき進行が!」

「ハヌマッチ? 俺らあんまり本編関係ない」

『あのピノキオ艦長なら楽勝だと思ってたらめたんこにやられそうになってる! タステランとかいうパーそうな奴の変な槍持ったVSAが艦長のディ・ソードをボッコボッコにしてるし! あのハリスとかいう白髪もいきなり現れたはいいけど飛び出してったっきり何やってるかわかんないし! 沙耶! 艦長を助けてしー!』

 普段の天真爛漫そうなラシー・セルシーが焦りと不安の入り混じった口調で助けを求めている。

『沙耶お嬢様! 7大傑士のタステラン・ガモウという人物が操る、引力のような力を宿した槍と瞬間移動らしき能力を使う篤国のネットワークによると名称ミストルティンというVSAと戦闘中ですが劣勢に陥っています! 先程、あのハリス・ウォードンが艦に来ましたが砲門をレゾナンスの外に向けるよう指示を残し、艦から立ち去りました! 何かしらの手立てを考えている様子でしたが詳しいことは分かりません! レゾナンスの増援が来てもミストルティンとやらに太刀打ち出来るかは正直絶望的です!」

 おそらくメイルストローム号でラシーの隣にいるルナ・コートリアムがラシーの言葉を正確に言い直す。

 篤国沙耶は天井に視線を這わせながらイヤホン型通信機のスイッチを押すと、

「ルナさんありがとう。ラシーお姉ちゃんは意外とこういう事態に弱いんですね。逆だと思っていました」

 冷静な返事を返す。

 彼女が今までどのような死戦を経験してきたのかは定かではないが、地上で確実に幾人もの人間の生命が危機に晒されている状況で焦るより寧ろ、心に波紋の一切無いかのような落ち着き振りである。

『ウチは弱くないし! 沙耶! 地下には何か使えそうな物は無いのか?』

「地下研究所はVSAの開発も行っていたのでここに使えそうな機体がいくつかあると思います。探してみますが、手負いとはいえあのアルバ艦長を圧倒している敵相手に助太刀出来るかはネガティブな言葉しか言えません」

『それはおかしいし! S.A.V.E.Sのアーカイブを探すとレゾナンスには時折りヴェガに近い性能の機体の試験データが見つかるんだし!』

「それは本当ですか?」

 沙耶は斜め下を見ながら耳に意識を集中させる。

『情報識別コードから判断すると地下研究所の端末に保存されてから篤国のネットワークに移された情報ですね。沙耶お嬢様? ヴェガに匹敵する機体を作る事が出来る人間がレゾナンスと言えど簡単にいるでしょうか? いるとしたら一番可能性の高い人物は…』

 ルナの言葉から沙耶も思い当たった様に、

「ええ、一人だけいますね。もし彼が作るのであれば、ヴェガを超えるVSAかもしれません。本人に聞いてみます」

『本人ってどういう事だし? あの博士は失踪中でそれがそこにいるならウチらはこんな苦労は…』

「それが丁度今私達の目の前に現れたんですよ」

『ちょっと待ってお嬢様! ウーディー博士はレゾナンスを出るところを空港のIDチェックで確認されて以来レゾナンスには戻っていません! 博士とはいえ樹状構築された篤国のネットワークを誤魔化すのは不可能です!」

「疑うならイヤホンのカメラをオンにしますので、画面で確認して下さい。但し限りなく本人に近い人物というのが実際のところですが、私達の話は聞いていましたね? 博士…」


『ホッホッホッ…ワシはウーディー・ロアであってそうではないからな。正確に言うとある時点でのウーディー・ロアの欠片じゃな』

「おじいちゃん! ホログラムになってレゾナンスに残ってくれてたんだね!」

 再会の感動の余り抱き着こうとして空振り鼻を打ったケビンは嬉々とした眼でその虚像を見つめる。

『ワシがお前に何も残さず居なくなると思うか? 最も信頼できるお前を放っていなくなりはせんよ。今はゆっくり話している場合ではなさそうだから後にするが、ワシにも立て込んだ事情ってやつがあるのよ』

「マジでホログラムなのか爺さん。街で見るのより実態があるように見えるぜ」

 都原カイトが博士に触れようとしてもスカスカと通り抜けてしまう。

『ホッホッホッ…』

「おじいさんってこの地下研究所の別の場所にいてホログラムに声を当ててるとかじゃないの?」

 ドルチェがローキックを放っても空を切り隣のリッジスに当たる。

「イテテテ…バラカイに姐さんも地上がヤバそうなのに会話遮るのはやめようよ? 俺、方向感覚は良いからさ? 地下に降りる前から位置を把握してたんだけど、この上って多分俺たちの学生寮が近いはず。それにこの上からの震動の向きからするとこのほぼ真上でバトってるよ? マズイって寮にはまだ買ったばかりのゲーム機が…」

「ゲーム機の危機とか言ってる場合では無いですわ! あなた達達観し過ぎですわ! ケビンちゃんのおかげでそのホログラムに辿り着いたので私達の目的は達成しそうですけどカウンターが7大傑士の一人を送り込んで来たってことはこのコロニー壊滅しますわよ!?」

 呆れたように訴えるシェリー。

「同感だな。ラシーはともかくルナが戦況を読み間違えるとは思えん。私とシェリーが機体を取りに艦に戻る時間も無さそうだ。ならヴェガに匹敵する機体とやらを探した方が勝ちの目はある。博士、何か知りませんか?」

 サイモンが博士(仮)に問いかけると、

『うん? それならここにあるが? 全員そのまま動かないでくれ』

 ガゴンッ!と先程プロジェクターの映像を投影した壁が地響きを立てながら横に開くと、その奥に蹲る一体のVSAがスライドする床に乗って現れる。

 緩やかにM字を描く頭部に肩や肘、膝が妙に突き出た躯体。

 何よりカラーリングが奇妙だった。

 右が黒ければ左が白く、左が黒ければ右が白い塗り分けがされている。

「見たことの無いデザインのVSAだ。似た機体も僕の知る限り無いな。これはおじいちゃんが作ったの?」

 電影の博士は嬉しそうにニヤリと笑うと、

『ヴェガというのはハリスの奴めが作った物だと思うが、コイツはワシが1から100まで作ったオリジナルの機体じゃな。名前はプラネテスジョーカー。ケビンや都原カイトくん、ドルチェ・ド・レーチェスくん、リッジス・クウ・エンハムくん、そしてハリス・ウォードンの5人がINOという補助AIを作るのを予測してワシが開発したANSERシステムを持つ万物の事象を書き換える機体じゃ。コイツの前ではほとんどの物理現象は無に等しい』

 

 


やっと登場した主人公機です。いきなり性能をフルに出すと物語の半分のVSA戦は起承転結が無くなるので徐々に本領発揮させようかと思います(´∀`)

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