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エピソード48 プログラム

 ジークアクスの豪華版パンフレットと第二弾入場者特典を眺めながら、チンパオは執拗にマチュを眺める。

「ふぅぅぅぅっ、マチュゥマチュゥマチュマチュマチュマチュマチュマチュゥゥゥッ、ん〜まっ!ん〜まっ!」

 ハヌマッチがマチュのアクリルスタンドを徐に取り出し、チンパオの視界にゆっくりと侵入させる。

「っ!マチュッ!」

 アクリルスタンドをハヌマッチから奪い取るようにチンパオは鷲掴みに手に取り抱き抱える。

「ん〜っまっ!ん〜っまっ!マッチュマチュ!チュマッチュマッ!チュッチュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」

 マチュのアクスタに吸い付くように接吻するチンパオを温かい目で見守りながらハヌマッチは、満天の星空に目を移す。

 空に輝く星々は水に浮かべた水晶のかけらのようにチラチラと瞬き、美しく、目の前にいるマチュしか見えていない血走った眼のチンパオがハヌマッチにはとても…

「きめぇ…」


「時間の無駄だったようだ。ここからは殺しに行く・・・」

 テッツは十手を手に、脚は肩幅に開きゆらゆらと膝から上を揺らす。

 ゆっくりとした所作だが、まるで全身の筋繊維と関節の全てを確かめる様な集中力を見て取れる。

今までの攻防はほんのストレッチ感覚だったんだ、という少し嘲た笑みを浮かべている。

 それを威圧され引き攣った顔を都原達は浮かべずにはいられなかったが、しかし…

「なんで…二回言ったの?」

 前々々回のラストに続けてもう一度同じセリフを言ったテッツに、突っ込まずにはいられないドルチェが辛うじて呟く。

「見てる人が少し間が開いたからを忘れてるかもしれないからだ〜」

 ルーティンなのだろう。言い返しながらもテッツの舞いは続く。

「見てる…人?」

 都原カイトは問う。

「見えないけど目の前にいるんだよ。気にするな〜」

舞いを終えるとテッツは、突如として駆け出した。

 異様に前のめりで顎が地面に着いてしまいそうだが、それが逆に次の動きを予測し辛くしている。

 都原は龍鱗の剣を振り、テッツに向け空間の裂け目を放つが、それをテッツの空間の拡大と縮小が逸らし、当たる気配が無い。

 対応できぬ間に都原の構えた剣の下に潜り込んだテッツは一気に上半身を起こすのと同時に低い姿勢で脚に溜めた力を上方に向け開放、十手を剣の刀身の中程と都原の右肘に向け跳び上がり、打たれた部分への衝撃で都原は万歳状態で上半身が無防備になる。

 そこへ未だ空中に滞空したままテッツは十手の先端を都原に向けて、眼をクワッと見開く。

 捻れた空間の弾丸が十手を照準のようにして正確に飛ぶ。

 直後、都原カイトの腹部に激痛が走る。

「ぐあがぁぁぁぁぁっっっ…!」

 テッツはそのまま空中で後ろに回転し着地する。

「カイト!」

「都原くん!」

 都原へ叫ぶドルチェとケビンにもテッツは十手を向け空間の弾丸を放つ。

「ふんっ!」

 その間にサイモンが入り、光剣を素早く振り見えない弾丸を掻き消す。同時にベルトにカラビナで括った小さな手榴弾をテッツへ投げる。

 効果範囲1メートルの爆発が起きる。 

 テッツは後方に走り回避する。

 小さな爆発だが慣れないと数秒聴覚を失いそうな爆音だ。

「大丈夫か!? 都原少年!」

 大きな身体で都原とドルチェ、ケビンを護るように立つサイモン。

「はぁ…はぁ…くぅっ…っ…」

 ドルチェが都原の肩を支え、その腹部を見る。

「カイト!? 何!? その傷の形!」

「まるで鉄の巻き貝で抉ったみたいだ…」

 ケビンが一度傷口を触ろうとして、途中で手を止める。

 よく見ると心臓よりやや下の肋骨が少し見えるほど深い傷だった。

「カイトさん!今治癒を!」

「お嬢様は動くな。治癒能力発動したらそいつの傷口の中で支配下の空間を歯車みたいに回してやる」

「やはり、その十手…地上で使っていた十手ではなく、PWだな?」

 サイモンの質問にテッツは猫の二足立ちのようにしゃがみ、ヘヘッと笑う。

「見た目は同じだけどなぁ、一度使った空間は遠隔で再利用出来るみたいだ。ナノマシンの注射器とデバイスはこの地下研究所にはゴロゴロあった。この施設、割と学生さんのコロニーにあるにしては残酷なことしてるのかもな、PWなんて人体実験の産物だろうて。普通地球共鳴能力ホルダーはナノマシンとの相性が悪く、俺が適応出来るかは正直賭けだったがそこに成功例がいるだろう?」

 ヒョイと十手を篤国沙耶に向けるが、沙耶が弁慶から上半身を囲むように盾を展開しているので無駄に攻撃するのはやめたようだ。

「それにしても便利だなぁ? 最初はただ地球共鳴を使いやすい十手に形を変えただけだと思ったが…頭でナノマシンにプログラミング言語を使って書き直すイメージをすれば…」

 十手をサイモンに向けると、

「意外と思ったことはなんでも出来る…」

「…?」

 眉間に皺を寄せるだけのサイモンの肩が次の瞬間、爆ぜる。

「!」

 辺り一面に血が花弁のように広がる。

「お嬢様は動くなよ? やろうと思えば首も飛ばせる。空間操作能力に性質変化も付与できるようだ。更に…」

肩の傷から溢れる血を手で押さえるサイモンに…

「空間内の物質も操れる…」

 トプンッとサイモンの頭部を包むように水の玉が現れる。

「あなた!空気中の水分を一点に集めたんですか!?」

 沙耶が身構えながら激昂する。

「その水玉は飲み干すかしないと頭から離れないぜ。まあ、飲むより早く窒息死するだろうが…PWってもんは所詮はナノマシンを使ったデバイス操作だ。プログラミングの知識があれば人間の脳の許容範囲内なら大体はデバイスに出力出来るだろ?」

 何食わぬ顔で言ってはいるが、イメージを脳波にしてプログラミングを行う、普通のPWの使い方ではない。

「プログラミング…」

 痛みに耐える都原の脳内で、カリカリと音がする感覚が、目覚めた。

 



 


もういい加減テッツ倒してくれよ!って聞こえますが、もうちょい!もうちょいで何かあるから!お便りは感想にお願いしますm(_ _)m

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