エピソード43 唯一無二の・・・
さくらんぼ大学の修学旅行の帰路で海で遭難したチンパオは1人、魔法の島に漂着し、森を散策すると少年ハヌマッチと出会う。ハヌマッチは言う。「君とここで出会うのは運命だったのかもしれない。この出会い、まさに・・・トレビア〜ン」それに共鳴するかのようにチンパオも「お前はまさか俺の宿命の親友、ハヌマッチ・ハヌマーン・マスラオなのか?」「違う、僕は永遠の17歳、人呼んでビューティーハヌマッチさ」「人違いでした・・・先に進みます」
やたら付き纏ってくるハヌマッチをうざいと思いながらもチンパオは、島の奥へと足を踏み入れる。
チンパオはそういう人です。
つづく・・・
アルバ操るディ・ソードにロンズバットのシルバリーが突進しながら手の甲に仕込まれた小太刀を射出し、走りながらそれを手に取り切り掛かる。
それをディ・ソードはチェンソーブレードの回転を止め刃先で寸分違わぬ正確さで受け止める。
「聞いたことあるぜ。カウンターのソードコレクターのロンズバットってお前だろ? この前俺のヴェガごと自爆しようとした戦艦にお前乗ってたろ? 内戦でお前だけは逃すよう通信してるAIがそっちの無人機にいたのを覚えてる。聞いたことない名前だから本当ならヴェガでやりたいところだが、今実力を見てやる‼︎」
「私も此方の要注意人物の筆頭に挙げられる王都の戦力の貴方はいつか潰しておきたいと思っていました。想像ではもっと殺伐とした戦場で顔を合わせると思っていましたが・・・」
「潰してみろよ・・・」
小太刀を上に押し退け、残像を残す速さでディ・ソードの肘を曲げ、上に突き出しながら半身をシルバリーの懐に踏み込ませ、そこから斜め上方へと躯体を伸ばし、コックピットのある胸部へ肩を突き込む。
「かっ・・・」
生身の体に一番近い部分にベクトルを受けて口から唾を吐くロンズバットだが、そこへさらにディ・ソードの肩の次は肘、重ねてチェンソーブレードの柄が、さらに浮き上がったところに回し蹴りが当てられシルバリーが後方へ弾き飛ぶ。
その攻撃は正確に重い。
シルバリーは同じくらいの背丈の建物の外壁を崩すように倒れ掛かる。
「・・・やはり、グランドマスタークラスのパイロットはままならないか・・・」
恨めしく呻くロンズバットに向かい、跳び回し蹴りの予備動作を終えたディ・ソードがスラスターを吹きながらゆっくり着地しチェンソーブレードを差し出す。
そしてアルバは揚々と言う。
「戦争に比べたら遊びみたいなVSAの決闘の階級なんて何の意味も無いんだよ。要は実際に強いかが肝心だ。俺の師匠は俺と同じグランドマスタークラスだが俺より遥かに強かった。上には上がいるとは言うが、よく考えたら最上級から上なんて上限が無いってことだ、つまり、俺より上はまだまだいるってことかもな。それでも自惚だとは思うが俺は少なくとも弱くはない。だから、どんな状況でも紙一重ってとこまでなら死は回避できる自信はある。まだおまえの本気をまったく見ちゃいねえが程度は見えたぜ・・・ほれ、全くのノーガードから攻めさせてやるから全力で掛かって来い・・・」
「出会って5分も経っていないのに随分と舐められたものだ・・・」
銀甲冑の奥の双眸が白く光らせ、シルバリーは・・・ロンズバット・ファイはゆっくりと立ち上がり、機体中の全関節から蒸気を吐き出すと、徐に左右の肩と背中と肘、膝の突起部分を外し組み始める。
背中の突起二つは柄に、肩の二つは鍔に、肘の突起は刀身に、膝の二つは先端に、全てを接続するとシルバリーの上半身より長い刀身に十字の溝のある大剣に組み上がった。
「へえ、そいつがお前の秘密兵器か・・・・・・」
「・・・・・・組むのに時間が掛かるし、そもそも出すまでもなく戦闘が終わることが多いので使うことは滅多に無いが、貴方が相手なら使うしかない・・・それに強者を相手に全力を出さないほど騎士道に外れたことはしない性分なので・・・・・・」
シルバリーの出力を持ってしても、振るうと少しバランスを崩しそうな重量の大剣を、まるで海釣りのロングキャストの構えのように振り被る。
ディ・ソードも片方のチェンソーブレードを地面に刺し、一本のチェンソーブレードをまっすぐに中段に構える。
先程までうるさかったリュウ・ランランまでもが、その肌に鋭利なカミソリを当てられたようなひりつく空気に黙りざるを得ない。
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一瞬に感じる永遠の刹那、シルバリーが動く。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ・・・・・・・・・・‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
雄々しく叫びながら全出力を持って間合いを詰め一撃に賭けるロンズバットのシルバリーがその空間の一切のものを両断する一撃をアルバのディ・ソードに放つ。
その触れれば何もかも削ぎ落としそうな刀身をディ・ソードの持つチェンソーブレードの先端が・・・・・・・・・ツンッ・・・・・・・・・・僅かに上半身を前傾させるのみの動きで静止させる。
ディ・ソードの動きはまるで水面に波を起こさせない微細な重心移動だけだった。
ロンズバットの渾身の一撃を、大剣の四分の一も無い細さのチェンソーブレードのただの先端の一点で受け止めたのだ。
「・・・・・・・・くっ・・・・・・・」
ロンズバットがいくらそのまま力押しで振り抜こうと動いてもディ・ソードはびくともしない。
「ものには正確な使い方がある。お前の攻撃の向きに正確に機体と武器を真っ直ぐに動かす、そうすればその大剣の幅より長いこの細い刀の方が強度はある。ただそれを出来るか出来ないかは使い手の技量にある、それだけだ・・・・・・無防備な俺にただ重いだけの一撃で応えようとしたお前の思考は凡人だ・・・・・・」
ディ・ソードの両脇の拡散レールガンが前方に向き放射される。
その放射場に放たれる砲弾はシルバリーの強固な装甲に大きな抉り傷を与えながら、反動でディ・ソードはフィギュアスケートのスピンの様に横に何回転もする。
「あれ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?」
アルバ回った( ・∇・)




