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エピソード32 オフェンス

 そもそもカウンターとはなんなのか? という疑問がまずあるだろう。

 全てを語るには長過ぎるのだが、現段階で語るには早いことを除いて説明するならば、彼らは世界を、人類を、新たなフェイズに移行する為に決起した者達、新興国『エデン』の末裔と現段階では言っておこう。

 大きな改革には争いは付きものである。そして彼らが起こそうとしたそれは余りにも巨大で突飛だったのだろう。エデンの創造主の出現から1000年以上経った今でもその目的は不明瞭で不透明、世界が何故始まったのかわからない争いは世界を二つに分ち、互いに腫れ物を触るようにそっと様子を探り合う現在。そもそも王都とカウンターのどちらの事情も正確に知っているものはいるのだろうか? それを恐らく知っている可能性が高いのは、カウンターで大きな権力を握った者なのだろう。しかし、対話もできない拮抗状態の今、その人物を知る由もない。


「レゾナンスのセキュリティーってのはいくつものサーバーを端から順に侵入して落としていく必要がある。端っこは割と簡単に落とせるが、真ん中に行くほどガードが硬い。まるでタワーディフェンスゲームの手のかかる感じだな」

 真っ白な光で満たされた大きな筐体の並べられた部屋の一つの端子にテッツは端末を接続しキーボードを叩いていた。

 地下研究所に篤国沙耶と他一名と共に落ち、歪みの力で拘束を解いて、即、彼の頭に目的達成への道筋が浮かんだ。それはこの膨大な施設の主導権を握ってしまうことだった。

 その発想に至ったのは篤国沙耶とその連れ達が思いの外強敵だったからだ。

 正直、真っ向勝負でも負けないつもりであったが、篤国沙耶がPWを使用したことで考えが変わった。彼女が見せた弁慶は彼女の戦闘スタイルに実に合ったPWだった。あの少女は以前から判断力に優れ、武器や人に頼ることが上手い、それが弁慶を装備することで単体で発揮できてしまう。そして、地下研究所に落下する際も意識を彼女は保っていた。その精神力・・・。

 これは厄介だ。

 何度も対峙したことのあるサイモンやシェリーの対処法はいくつも持っている。しかし、あの少女は良くない、そしてはっきりと姿は見えなかったが彼に横からトドメの一撃を与えたもう1人の少女、あの一撃は彼の知っているPWによる攻撃の中でもトップクラスの威力だった。

 彼の空間を歪ませる力で作った空間の盾がなければ絶命していたかもしれない。

 テッツ・コット・ミロットはカウンターの工作員である。

 地球共鳴者である彼は知力も体力にも長けているというプライドがあった。

 それは恐らく彼の生まれがカウンターの大きな歯車である血筋に生まれたからだろう。

 カウンターの人間は遺伝子操作により強化されたものがほとんどだ。そして、彼はその中でも選りすぐりの血と肉を与えられている。

 幼少から高度な数学のセンスを発揮し、体術も屈強な大人に引けを取らなかった。

 加えて、応用の効く地球共鳴の能力を持って生まれたのだから誇りを持つしかない。

 だからと言って相手の力量を過小評価して敗北するほど彼は愚かではない。

「アーカムの補助があればこの程度のセキュリティーは簡単に崩せる。1人であいつらに勝つには一手先を読む必要がある。ならやることは決まっている…」

 アーカムは彼の作った補助システムである。本体はレゾナンスの外にあるカウンターの母艦にあるが、かなり距離のあるここで使用してもお釣りのくる通信速度だった。そして、今は語らないがこれはアーカムの機能のほんの一部に過ぎない。端末に映る情報を瞬時に理解し隙間を見つけ入り込み、正確に書き換える。

 その繰り返しで彼はものの数十分で地下研究所のシステムを掌握した。

「こちらもこの施設を丸ごとを使うまでだ。上でロンズバットが暴れているうちにケリをつける」

 そう言って彼は端末と筐体の接続を解き、カツカツとブーツを鳴らし部屋を出て行く。

「恐らくあのお嬢様とは賢者のジジイのとこで決着をつけることになりそうだ」


中々SFっぽくなって来ましたか?(^◇^;)

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