エピソード27 嵐の前の静けさ
都原カイトと篤国沙耶が警備ロボことストローヘッドに追われる身となり連戦を繰り広げている頃、ドルチェ達6人組一行を乗せたエレベーターは地下研究所に到着した。のだが・・・
「あのさ〜? これってエレベーターじゃなくない…?」
「それな…」
「でも見た目がエレベーターだから多分エレベーターだと私は思う…」
「ケビンちゃ〜ん? 大丈夫〜?」
「う〜…」
「ドルチェちゃんに乗られてる…」
もう完全に安全装置のないフリーフォールで落ちて来たように組んず解れつの状態の6人はかろうじて怪我も無い様子。
「先生、あんたほんとブレないわね…」
「女性に乗っかられるのは正直ご褒美だけど、流石にほぼ全員は重いからとりあえずみんな僕から降りてくれる?」
五体で全員の下敷きになり、誰のとは言わないが右腕と左脚の柔らかい感触にハリスは若干ニヤける。
それと同時に、自動で開いたのかはたまた落下の衝撃で開いたのか、エレベーターのドアがチンッと開く。
「今は黙っとくけどそのうちお金もらうわよ?」
「私達は高いですわよ? ねえ〜ケビンちゃ〜ん…」
「きゅ〜…」
目を回したケビンを抱えたシェリーと口を押さえ吐き気を我慢するドルチェを先頭に次々と、ハリスの上から全員降り地下研究所に脚を一歩踏み入れる。
「…何となくセーフティーおかしそうだから咄嗟に守りに下に入っただけなのに…」
「それにしても素っ気ないのね〜、豪華な作りの扉とかがまず目の前に出てくると思ってたんだけどね〜」
6人の前には全員が横に並んでもまだ余裕のある幅のただ壁も床も天井も真っ白な廊下が続いている。
「一応正門は結構ゴージャスな入口になってるけど、今回は目的地に近い入り口を選んだ感じかな? シェリーちゃん?」
「ええ、と言っても博士の研究室まで少し歩きますが」
シェリーはケビンを両手で持ち上げ軽く揺さぶり意識の有無を確認するが、
「う〜おちる〜…」
意識は薄い様子。
「ここって地下研究所の位置的にはどの辺なの? バラカイと沙耶ちゃんも探さないとだし?」
「ああ、地図の記憶は沙耶お嬢様が1番鮮明に覚えていたんだが、私とシェリーは鍵を守ることを優先するよう上から申し付かっていたのでな、暫し待ってくれ…」
サイモンが端末を取り出しタッチパネルを操作し始める。
「サイモン? この雰囲気、あれを思い出さない?」
「ああ、似ているな」
端末の操作をしながらサイモンがシェリーに同意する。
「何の話?」
リッジスが不思議そうにサイモンを見る。
「いや、王都にはブルーベリーパイの日という催事があるんだが…そこであった他愛もないことだ、知らなくていい」
と、言ってサイモンは端末の操作に集中する。
「ああ‼︎ あれね? ウジワラ軍団の話ね?」
「ハリスはその時王都には居なかったでしょう?」
シェリーがケビンをぬいぐるみのように抱えてハリスを見る。
「まあ、S.A.V.E.Sでは有名な話じゃない?」
ハリスが斜め上の虚空を眺めて思い出すように言う。
「先生その話なんなの⁉︎」
ドルチェがもどかしそうに訊くが…
「まぁ、王都っていうかいろんな場所に現れる奴らなんだけど、飲み物を震えた手で飲みながら地面をのたうち回ってアアーーーーーーーーッ‼︎ なんでだよぉーーっ!!!て叫ぶ連中がいるんだよ。通称ウジワラ軍団、それだけ」
と言って肩をすくめて説明を終了するハリス。
「何それ? 全然話がわからないわ?」
「本当にそれだけなんだよ」
「ええー」
「わかったぞ」
不満気なドルチェとリッジスを遮る様にサイモンは端末から得た情報を語り出す。
「ここをAポイントとするとCで左、Fで右、Gで右、あとは突き当たりをジグザグに行けばいい様だ。ざっと4キロと言ったところだ。沙耶お嬢様の反応も端末に表示されているが、進行方向的にこの道すがらに会える可能性が高い。流石お嬢様だ、感覚的に脳内の地図で見当をつけているようだ」
「全然わかんない…」
「わかんないわかんない」
語彙力の無い言葉を繰り返すだけのついさっきまで一般学生2名。
「まあ、さっさと行っちゃいましょ、大体イメージできたから僕に着いて来て」
白衣のポケットに両手を入れて飄々と先頭を歩き出すハリスだった。
今回は少し退屈な話かもしれませんが、キャラ達が打ち解けあい始めている場面を切り抜きました。好みが分かれそうですが、読んでいただいた読者様に感謝でいっぱいですm(_ _)m




