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エピソード1 ソーディス

「第三次世界大戦時、新興国エデンが世界中に発射したウイルス兵器弾頭により、一夜にして地球には生物が住むことができなくなったわけだが、我々の先祖、つまり宇宙移民がこの学園コロニーのような生活の地盤を作った事により、地球こそ失ったが、人類は今のような繁栄を果たした。そもそもの発端のエデンはその後、カウンターと名を変え、反宇宙政府組織を作り、我々宇宙政府所属のコロニーとは別の生活圏を築いている。宇宙政府のまたの名を王都と言い、本校は王都直属の養成所というわけだ」

タッチパネル式の大きなディスプレイの前で、眼鏡が似合うブラウンの長髪の女教師は淡々と語る。白いワイシャツにタイトスカートが艶やかで、どことなく狐を思わせる鋭い顔つきの美女である。

「宇宙政府の本部は王都コロニー『グラムライズ』にあり、各国の代表が多く住むのもそこだ。『グラムライズ』の防衛力は半端なものじゃない、何層にも展開されたビーム障壁は、あのラグナでも擦り傷程度しかつけられんぞ」

日光が差し込む教室、学園コロニーレゾナンスのVSA操縦士養成学校ソーディスの教室である。丘陵地帯に建造されたレゾナンスの教室から窓の外を見ると、幼稚園から大学までの教育機関に住人の生活を支える市街地まで見渡せる。レゾナンスの天蓋である流体ガラスには空を再現するための映像が映し出され、まるで本当の地球にいるように感じる。レゾナンスを囲むソーラーパネルは宇宙標準時が18時になると天蓋をピッタリ包む様に閉じ、現在太陽に向かって開いてる面の裏のソーラーパネルに発電は切り替わる。その際、レゾナンスの内部は夜となり、レゾナンスの街は一斉にライトアップされ、その光景を丘陵地帯に建てられたソーディスから見ると、絶景である。

20名の生徒は各々席に着いてノートパソコンを開いて講義を聞いている。

「さて、ここで質問。我々VSA操縦士養成学校ソーディスの使命とはなんでしょう? 都原、答えてみろ」

教鞭をビシッと向けられた、窓際最後尾の席に座る少年はボリボリと頭を掻いて立ち上がる。黒髪黒眼の、純和風の少年、都原カイトである。なんとなく脱力したような印象を受ける表情が特徴といえば特徴だ。

生徒たちは都原に視線を向ける。

都原は一度深呼吸をすると、

「地球を失ったことで戦争の愚かさを知った宇宙政府の発案により、国家間の争いはVSAによる各国代表の操縦士による決闘で解決する制度が可決されたため、養成学校で教育と訓練を施された若者の需要が高まり、ソーディスはその名門であり、日々より優秀な人材を育てること、です」

都原カイトが流暢に答えると、女教師ロザンナ・ホーキンスは教鞭を片手に持ったまま拍手する。

「良い答えだ。ちなみにみんなは知ってると思うが、VSA

とはVersuSArmバーサスアームの略だ。対戦兵器って訳だな。もうすぐお前らは仮免許試験だが、VSAの操縦は割と簡単だ。難しいのはVSAの構造や原理を覚える筆記試験だろう。お前たちなら合格できると信じている。都原、座っていいぞ」

都原はホッと息を吐くと腰を下ろす。

すると隣の席から都原の肘を指で突く少女。

「さすが普通の優等生」

赤毛の髪を後ろで縛った白人の少女である。

「お前も大概だけどな、ドルチェさん」

都原が返すと少女、ドルチェ・ド・レーチェスはニシシと笑う。どことなく猫を思わせる表情は彼女の楽天的な性格を表しているのだろう。

「まあ? 誰かさん達と連んでるわけだし? それなりにはなるってもんじゃない?」

と、誰に向けてるのかわかり過ぎる、わざとらしい口調で少女は肩をすくめながら言う。

「もしかして、その達って俺のことも入るの?」

都原の前の席の、日焼けした褐色の肌に金髪碧眼のどこか垢抜けた少年が都原の机に片肘ついて振り向いて話に参加する。

リッジス・クウ・エンハム、彼の名だ。常に笑っている所為だろうか、彼の口角は常に上がっていて話しやすい少年だと都原は思う。

「ん〜、あんたは別」

「ガクッ」

「達っていうか、俺たちアイツの恩恵受けてるだけじゃん」都原はそう言って苦笑いする。

「ケビンくんにはお世話になってるからね〜」

ドルチェはどこか自慢げな表情をする。

「さすが発明王の孫ってね‼︎」

「そこの3人うるさい‼︎ エンハム、教科書87ページの問一、答えてみろ」

「3です」

「数学でも択一問題でもないんだよ‼︎ 適当に答えるな‼︎」

「ゴホッ‼︎」

ロザンナのタッチペン手裏剣がリッジスの額に直撃する。 

「先生、俺のこと大好きなのはわかりますが、イチャイチャしたいなら、放課後にお願いしますよ〜」

ヒリヒリするおでこを摩りながら、リッジスが言うと、

「「ブハッ‼︎」」

と、教室の生徒全員が笑い出す。

それに対しロザンナは、

「ふむ、では放課後に生徒指導室に来い。私も性欲を持て余していたところだ。課外授業扱いで相手して貰おう、覚悟して来い」

ロザンナは鉄のような表情を一切崩さずに言う。

「へ?」

教室中の生徒ががリッジスとロザンナを交互に凝視する。

ロザンナは小さくため息を吐くと、

「お前ら、冗談に決まっているだろう? まあ? お前達もそういう歳だし? 生徒間で卑猥なことが起こっていても不自然ではないが? ひとつ注意しておくがソーディスでは過度の不純異性交遊は退学もんだからな? 精々キスくらいに留めておけよ?」

各々ががっかりしたようにも安心したようにもため息を吐く。

どこか拗ねたように言うロザンナに、都原は頬杖つきながら聞く。

「また…振られたんですか?」

「お前ぶっ殺すからな‼︎」

途端に、涙目になった鉄の女が数学の授業に使うタッチコンパスを振りかぶった。

なんだろね〜。僕がこういう授業好きだって思う授業にしました。最後にロザンナ先生が投げようとしたコンパスってまるでブーメランじゃないか‼︎ 僕の深層心理にはブーメランがあるわけですね。VSAやソーディスについての説明はこのエピソードでは足りないと思いますので、追々詳しく説明しようと思います。読んでいただいている方々には、最後まで読んでいただけるように次の投稿も精一杯書きますので、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後のやり取りで少し笑ってしまいましたw ここからどうなるのか楽しみにしています♥
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