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エピソード0.5 レゾナンス

西暦3054年、学園コロニー『レゾナンス』発着港門前。


「ハロー、ハロー、こちらメイルストローム号。着艦許可を申請します。IDの確認…OK」

肩まである銀髪に眼鏡の大人びた女性オペレーターがそう言うと、横に座った黒髪縦ロールの童顔の女子オペレーターが続ける。

「ぶっちゃけこんにちはー‼︎ ハッチオープンプリーズ‼︎」

『OK…こちらレゾナンス、IDアクティブを確認しました。着艦を認めます』

電子音声が告げると、メイルストローム号の艦橋の雰囲気は和らいだ。

艦橋は、艦長席を囲むように、操舵席を挟み前方四つ、左右に二つずつの計八つのオペレーター席で囲まれていて、艦長席の横からリフトが斜め上に伸びていて、その先に火器管制用のコンソールが二つ。

艦橋の窓の外には視界に入りきらないほどの建造物。

建造物の周りには蟹のような四足歩行のロボットが這っている。

その門がゆっくりと確実に開いて行き、開き切ると、

「いつ見ても清掃が行き届いているようだな…」

艦長席に座った若干筋肉質だが細身の男、アルバ・デルキランがそう言って顎の先が隠れる程度の髭を撫でる。

「まあ、伝統深い…とは言いますが、王都のコロニーの中では新しい方ですからねー」

と、艦長席の後ろから深緑にも見える長い黒髪を、金の龍の刺繍のされたリボンで頭の左右の両端で結った少女が落ち着いた声で言う。17歳といったところだろう、しかし立ち居振舞いには余裕のようなものが感じられる少女だ。

学園コロニー『レゾナンス』は無数の教育機関の集合体のスペースコロニーである。人口は四百万を超え、そのほとんどが十代の若者である。多数の多国籍企業が莫大な出資をし建造された学問の都。意欲的な学生たちが多く住むこのコロニーでは、学生の自主性に任せた、様々な実験や開発が行われ、このコロニーから生み出された技術は数えきれない。円盤状の大地を半球面状の流体ガラスで覆い、その周りを太陽光発電用のソーラーパネルが開いた花弁のように囲み、見下ろすように眺めるとまるで巨大なひまわりのようなスペースコロニーである。

メイルストローム号は現在、その学問の推に立ち入ろうとしている。

「操舵システムをオートモードに設定、港の中で反転し着艦しますので、少し揺れます」

長めの金髪をオールバックにした白人の操舵手が告げる。

「艦長さんにとってここは面白いって王都を出る時言っていましたがどうゆう理由でです?」

少女が問うと、アルバは下品に笑い、答える。

「俺は上品なガキは嫌いでね。生意気なクソガキが好きなんで。ここには割とそういうのがいるんですよ」

「じゃあ、私は嫌いなんですね?」

少女は少し意地悪そうな笑みを浮かべる。

「お嬢様に、嫌い、なんて言ったら俺の首が飛びますよ?」

アルバは手のひらを広げ両腕を前に伸ばして軽く横に振る。

「へえ、そうなんです? あの一騎当千の紅獅子とまで言われる艦長さんが、私の機嫌次第で死んじゃうんですね?」

と、少女は口に手のひらを当てて、プププと笑う。

「そんな物騒なことを言うお嬢様が上品でしょうか?」

そうアルバがとぼけるように言うと、

「確かに」

少女は頷くと額を手で軽く二度叩く。

「それはそれとして、アレは本当にここにあるんでしょうか?」

「ここに何も無い、という理由がまず無い」

キッパリと言うアルバに少女は感嘆の声を上げると、

「そうですね、あの方が人生の大半を過ごした場所ですもんね…それで〜、任務開始まで私は自由時間でしたよね?」

彼女は少し背伸びをすると、ニコリと笑みを作る。

メイルストローム号は薄暗い空間に入っていく。

「慣れない長旅お疲れでしょう? 少しレゾナンスを歩いてみますか?」

「是非是非‼︎」

「沙耶お嬢様も遊びたい盛りですな」

「そういう事です‼︎」

年相応の少女の様に両手を上げて身体をくるりと翻す。

「お嬢様、艦が反転します。掴まって」

背中の後ろで手を組んで少し前屈みをする少女の前に、アルバは片手を差し出して制すと、自分が座る艦長席の背もたれの横についた手すりを指差す。

少女はそれを掴みながら、

「意外と紳士さん?」

「散々、叩き込まれましたからね」

ガハハッとアルバが笑うと、銀髪眼鏡のオペレーターが回転式の席をこちらに向けて言う。

「港が開きますよ」

続けて操舵手が、

「反転します」

それと同時に、艦全体が横へのベクトルに揺れる。

「反転しました。このまま着艦します」

着艦は間も無く終わる。後ろへのベクトルを感じたまま沙耶…篤国沙耶は一人呟く。

「かっこいい男の子…いますかね?」

「何か言いました?」

「いいえー」

満面の笑みで少女は否定する。

ゴウンッという音と共にメイルストローム号は重心を得たように安定する。どうやら着艦したようだ。

少女はそっとレゾナンスと接続したスピーカーに耳を傾ける。

スピーカーから流れる電子音声は盛大に、

『ようこそ‼︎ レゾナンスへ‼︎』

さっさと、主人公の登場‼︎ と行きたいですが、大事な場面ですので回り道‼︎ 物語はこの学園コロニー『レゾナンス』から始まります。 お嬢様こと篤国沙耶については物語の進行に合わせて進めさせていただきます。焦らしプレイな回でした。それではこの辺で。ここまで読んで次読まないなんて意地悪やめてくださいね。

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― 新着の感想 ―
[一言] この大事な場面が後にどう関係するのかワクワクするのと…まさかのアルバ…w今回も凄く興味深い話でした!♡
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