7『帰郷と知らなかった記憶』
久しぶりに帰ってきた街を見るといつもほっとする。
街の人の表情、景色、にぎやかな声や屋台の香ばしい匂い、
どれもが愛おしくなる。
シークとセシルさん達と屋敷に帰ってきた。
セシルさんが母と親しげに話していた。
「セシルさん?母とお知り合いでしたか?」
「何を言ってるんですか!同じ街出身であなたを
助けてくれたのはセシルさんよ」
初耳である。ポカンとしているとセシルさんが声をかけてくれた。
「ロゼさんはまだ小さかったですし、話辛くお話しできていませんでした。その件で2人きりでお話しさせてください」
「はい、構いませんよ!」
コレはまだ私が幼く弱かったのです。
ユニークモンスターのウルフが現れ、私は騎士見習いでした。戦闘には参加せず、避難の誘導を行なっていました。
領主さまからあなたの事を頼まれました。守ってくれと。
しかし避難が落ち着いてからロゼ様は戦闘の方角へ
走っていくが見えたと聞き、走りました。
父上を抱きしめて、ウルフと見つめ合うロゼ様の後ろ姿が見えました。ウルフの恐ろしさから私は隠れてしまい。
守るどころか、怯える自分が悔しくて泣きました。
気づけば、ウルフは居なくなり、倒れている姿が見えたので
抱えて街に帰ったのです。街の皆さんは知りません。
私はあの時この小さな子供に守られたに違いないと。
強くなる決意をしました。
「コレがロゼさんが知らない部分です。貴方を守りたい。」
「ありがとうございます。悔しくて、無力だと、思ったのは俺だけではなかった。少し救われました。」
「いえ!私は何もできませんでしたので!」
「故郷に帰ってきて、力になってくれる。それだけでありがとう。セシルさん。」
「はい!」
突然扉の外からシークの泣き声が聞こえ、入ってきた。
「うぇえーん!2人ともお辛かったんですね!」
セシルさんと俺はシークに抱きしめられた。
「お前!聞いてたのか!」
「いやだって!2人きりになるって聞いたから!」
セシルさんが笑い出す。
「あははは」
「セシルさんなんで笑うんですかー!」
シークが不服そうに呟く。
「シークさん、可愛らしいなって!」