9話 ノウム大王国
今日で30日目…1ヶ月経った、この期間俺達は魔獣に会うことはなかった、マースのおっさんにその事を聞いたらノウム大王国のノウム兵団が討伐して回ってるって言っていた、マースのおっさんいわくハルレン村にいたバギリギも討伐されるのは時間の問題だったみたいだ…、それにしても尻が痛い…、歩かなくていいのは楽なんだけどな、ロンさんが選んだ道はここまで尻が痛くはなかった、尻が痛く感じているのは俺だけじゃないよな…だって、アン何て着ていた上着を尻に敷いてるし、グオンにいたっては立ってる、あいつ俺に「尻が痛いのか」て半笑いで煽ってたくせに痛くなったんだな、マースのおっさんはすげぇよ…まじで尻痛そうじゃないし…多分尻の皮が分厚いんだろ…知らないけど。
勇がその様に考えているとマースが声を上げる。
「勇者よ、ノウム大王国に入ったぞ、気になるなら後ろの幌を開けて見てみろ」
3人は期待に胸を躍らせ後ろの幌を開ける…。
んー…一面畑だな、何か大王国って感じはしない、もっと建物がぐわーってあると思ったんだけど。
アンが小さく話す。
「すすごい大きな…畑があるな…、さすが大王国…」
マースは大きな声で笑い話す。
「ハァハハハハ…、ここはノウム大王国の端っこだ、畑ぐらいしか見るもんはない、だがこのまま進めばお主達が想像している以上のものが見れる、楽しみにしておけ」
このおっさん…意地悪いな、知っててやっただろ、俺達が想像している以上のものが見れるまではどれぐらいかかるんだろう?、明日には着くかな。
アンがマースに質問する。
「いじわる…、マースさんあとどれぐらいでそこに着くんですか?」
マースは少し考え答える。
「大体20日ほどだ、これは早くてだ」
アンは少し残念そうな顔を浮かべ、元いた場所に戻る。
20日…長いよな、自動車でこれだから歩きだったらもっとか、大王国って言ってもエリア分けされてたりするのかな、だったら今いるとこが農業エリアかな、まぁこういうのは聞かないとわからないか。
勇はマースの居るところまで行き話しかける。
「もしかしてノウム大王国ってそこは畑あそこは家、みたいな感じで分けられたりしてるんですか」
マースは質問に答える。
「そうだ、ノウム大王国は大体円形に広がっていて、中央に国王陛下が住むノウム王城がある、その周りを囲むように多くの建物が立っている、その辺りに住むやつはある程度の地位を持った奴が多いが、持たないやつも結構いる…」
国王陛下…ラグルス王の住むノウム王城の周りに住んでる奴らは権力者?なのかな?、地位を持たない人も住んでるってことは違うか。
「マースのおっさん、ノウム王城の周りに住んでるの?、住むには結構お金かかってそうだけど?」
マースが答え話す。
「あぁ俺も一応その辺りに家を持っているがほとんど使っていない、勇者の考え通りそこに住むにはかなり金がいる…、それでその建物を囲むように小さな家々がポツポツと立ってるとこが田舎だ、で今いるとこが最果てみたいなもんだ、だがほとんどのノウム大王国の食い物はここで育っものだ、だから意外と警備が厳しい」
何ほど…てかマースのおっさん、酒のんでなかったらまともだよな、マースのおっさんは中央付近に一応住んでるのか…、って事はマースのおっさん金持ちだな…自動車持ってるし。
20日ほどかけて勇達は遂に城下町に到着した、道中マースの別荘にいくつか泊まり、いつもより快適な旅だった。
やべぇ…建物が高い、大体4階ぐらいはありそうだ、それに人の数がすごい、とてもお腹を空かせるいい匂いもする、てか自動車専用の道もあるとか発展し過ぎだろこの町。
3人は見慣れない町を見渡していると、マースが話しかける。
「勇者よ、お主はノウム王城に行くのだろ、すまないがそこまで乗せていくことはできない、俺は貴族たちが住むことに入れないんだ、色々やらかしてな、だからすまないが自力で向かってくれ」
俺はマースのおっさんに礼を言い、マースのおっさんはギリギリの所まで乗せていってくれた、ただ近くにいた兵団の人がマースのおっさんをすごい顔で睨んでいたのはびっくりした。
勇達はマースに礼を言い、ノウム王城に向かった、アンとグオンは宿を探すと言い、勇は二人と分かれた、ノウム王城は他の建物よりも高い所に建っておりとても大きい、ノウム王城の周りは壁で囲まれており、ノウム王城の全体像は見えない、貴族たちが住む所はあまり人がおらずスムーズに進める、ノウム王城の入口と思われる大きな門がある場所につき、勇が中に入ろうとすると、大きな声で入ることを止められる。
「お前!!、何を入ろうとしている」
大きな声を出した男性が、急いで近づいて来て、続けて話す。
「お前、旅の者か…ここは無断で入ってはならない場所だ、もしや誰かから招待状を貰っているのか?」
招待状?…あぁそうだ多分ロンさんから受け取った手紙の事だな、入るのに必要って言ってたような。
「はい、持ってます、これ」
そう言い、勇は背負っているバックから手紙を取り出し、門番に渡す。
「イデア国の紋章…、すまないが時間をくれ、これが本物か奥で確かめされてもらう、お前もついて来い」
勇は了承して門番についていく、休憩室のような場所につき、偉そうな人が渡した手紙を観察して、手紙を開き読み始め、読み終えると頷き話す。
「まさかユウ様とは、すいませんが国王陛下は多忙なお方で、すぐには面会することはできません、なのでこちらで宿を用意するのでそこでお待ち下さい」
勇は了承して、用意された宿に向かった。
「ここを自由に使ってたください、国王陛下の予定が空き次第、アキヘス卿がここに迎えに来ますので、よろしくお願いいたします、では失礼します」
国王に会えないもんなんだな、もっと気軽に会えそうな感じがしてたんだけど…、まぁこんなもんか、にしてもこの部屋広いな、それにめちゃくちゃ綺麗にされてるし、アンとグオンとは違う所に泊まる事になりそうだな…、俺もそっちに行きたいな…ここなんか落ち着かないし。
次の日になり一人の兵士が勇の部屋に訪れた、その兵士は国王にいつ会えるかの報告だった、そして48日が経ち勇は町を歩いていた。
いや…会えないもんだな、50日後は流石にかかり過ぎだと思うんだけど…、多忙過ぎない王様って、まぁこうして町を歩けるのは良いよな、んーそれにしてもアンがくれたフォークのお返しのスプーンを探してるんだけどいいのがないもんだな、お金は手伝いである程度稼いだけど…。
勇がスプーンを探しながら歩いていると、本屋の店主が子供たちに本を読み聞かせている横を通る、本の内容を聞き勇は足を止める。
「こうして勇者は、凶悪な魔物を退治して、村に平穏が訪れました、勇者の物語は今もどこかで紡いでるのでしょう」
…勇者、いや違うよな、俺のわけないよな、勇者って言ってもいっぱいいるよな…知らないけど…、よしスプーンを探そう。
勇がその場を立ち去ろうとした時、少女に話しかけられる。
「どうして足を止めて、本の内容を聞いてたんですか?、もしかしてこの本の内容が気に入りましたか」
何だこの少女…、みすぼらしい格好をしているけど、中に着ている服めちゃくちゃ高そうだな…、てか勇者と呼ばれたことがあるから立ち止まった、何て言いたくないな。
「まぁ少し気になってね、君はあの本屋の娘さん?、勇者って呼び名は珍しくないのかなって」
少女はにんまりと笑い答える。
「いえ本屋の娘ではありません、この本がとても好きで、同じ作者の本を買いに来たんです、勇者と言う呼び名はこの作品で初めてだと思いますよ」
なるほど…、けど何で俺に話しかけて来たんだ?、もしかして俺がこの店で働いているように見えたか…いや違うな。
勇が少し考えていると少女は続けて話す。
「この本に出てくる、主人公はあなたと似ていまして、つい話しかけてしまいました」
嫌な予感…、まぁ創作の物語だろうし、ないよな…な。
勇が「1つ聞いて言い?」と言い、少女コクリと頷く。
「その本に出てくる、主人公の名前を教えてくれない」
少女は「ユウ シンドウ」と答える。
…俺じゃねぇか、マースのおっさんやりやがったな、何で俺の名前そのまま何だよ、次におっさんにあったら問いただすか…。
少女が勇の顔を見つめ話す。
「名前を伺ってもいいですか、私の名前はミリと言います」
この子…確信してるな、名前か言ったら一発アウトだな、偽名だ…偽名を言うんだ勇…。
「お俺の名前は…ユウスいや…ユリスだよ」
少女は再びにんまりと笑い話す。
「そうですか…ユリスさんですか、ではお別れのハグをしてもいいですか?」
ふぅ、騙せたな危なかった、別に俺が勇者ってバレてもいい気がするけど、なんか嫌だしな、てかお別れのハグか…この国じゃ普通なのかな?。
勇がハグをすると少女は勇の耳もとで小さく「騙されませんよ、勇者様」と言い足早にその場を去っていった。
あの少女やばいな…、てか周りが俺のことをめっちゃ見てるような、何か勇者って単語がめちゃくちゃ聞こえるような、よし全力でこの場を離れよう。
勇は本屋の店主に謝り、凄まじい速度でその場を離れた。
ふぅ…結構遠くまで来たな、本屋の前に人集めんなよって顔してたな…。
勇が歩いていると、男に話しかけられる。
「よぉ兄ちゃん、何か悩んだ顔してるな、女関係じゃないか?」
女関係…ではないよな、悩んではいるけど、ここの店は指輪を中心に売ってるのか。
「いや、悩んではいるけど、女関係じゃないよ」
男は興味なさそうに言葉を返す。
「そうかい、まぁどうだい1つ買っていってくれよ、安くするぜ」
指輪は別に欲しくはないけど…、ん!この指輪アンに似合いそうな、フォークのお礼はスプーンにするつもりだけど、色々お世話になってるしな。
「その左の方にある、指輪欲しんだけどいくらぐらい?」
男はこれかっと指を指して勇は頷く、男は勇の質問に答える。
「まぁ大体60ぐらいだな、最近は売れ行きもいいからな、50でもいいぞ」
まじでこれは買いでしょ、グオンにも何か買ってやるか、グオンはこういうのいらないと思うし…食いもんでいいか、ノウムの食べ物は美味しいからな。
勇は男に指定されたお金を渡し、指輪を受け取った、
アンとグオンが泊まっている、宿に向う道中で勇は食べ物をいくつか購入して行った。
結構階段辛いな、えーとここかな、なんだろう…緊張するな、ただアンに指輪を渡すだけなんだけど、この緊張感は命をかける戦いぐらいあるような…、勇気を出せ俺…行くぞ。
勇は2回ドアを軽く叩く、すぐさまアンの声が聞こえ、ドアが開く。
いやアン、ちょっと不用心すぎない、普通にドア開けたよ。
「ユウどうしたの、もしかして寂しくなって来ちゃったの、立ち話も何だから入って」
勇は「あぁ」と言って部屋に入り、椅子に座る、アンはベッドに座り話す。
「その膝の上に置いてある袋…、食べ物でしょ、ここの国は食べ物が美味しいから好きだな、まぁ高いけど…」
やばいな…、全然言葉がまとまらない…、アンが目の前にいることによってさらに緊張感が強くなった。
アンは少し心配そうに話しかける。
「大丈夫…、何か苦しそうだけど、もしかしてどこか痛くなったから私のとこまできたの…、それなら早く見ないと」
アンが少し立ち上がり、勇の方に近づこうとした瞬間、勇が「アン」と言い、アンは「はい」と驚いた様に言い、座っていた場所に座り直す、そして勇が話す。
「ごめんアン、ちょっと緊張しちゃって…、アンに渡したいものがあって、傷とか結構治して貰ったお礼」
そう言い勇は隠していた指輪をアンに渡す、アンはそれを受け取り、嬉しそうに「ありがとう」と言う。
ふぅ…喜んでくれて良かった、アンの指のサイズはわからないし、サイズ指定とかはなかったけど、取り敢えず指にピッタリはまるか見て、はまらなかったら首にかけれるように買った、紐を渡そう。
アンは「はめてみるね」といい、人差し指から順番にはめていき、何と薬指にピッタリとはまる、アンは嬉しそうに勇に見せる。
…左手の…薬指…、まぁ…この世界には確かそう言うのはなかったはず、なんだろうなこの気持ち…何か騙してるようで心が痛いような。
このあとグオンがアンの部屋に訪れ、3人は仲良く食事を堪能した、勇は部屋に戻り、翌日に備え早めに就寝した、翌日になり勇は迎えを待つ。
アキヘスって人が迎えにくるんだよな、その人一人だけなのかな、大勢ってわけもないよな…、今日来るってわかっていても、いつ頃に来るかわからないのは何か…ソワソワするな、そう言えば昨日からこの国にいる人が多くなった気がするんだよな、まぁもともと多いけどな、北大広場辺りに大きな模型みたいなものを作ってたけど、何か関係があったりして。
勇はソワソワしながら迎えを待ち、昼ご飯を食べようと考えていると、トントンっと音がなり、ドアの方から男性の声が聞こえる。
「ユウ様、迎えに来ました」
勇は返事を返し、ドアに向かいドアを開ける、ドア前には勇よりもデカくガタイのいい男性が立っていた。
「どうもアキヘスさんですよね、よろしくお願いします」
勇がその様に言うと、男性は頷き話す。
「かの英雄を案内できるのは光栄です、何か用事がなければ今すぐ城に向かいたいのですが、よろしいですか?」
英雄…、んー恥ずかしいな、用事はないよな、それと何か忘れ物もないな…、よし行こう国王の所に。
勇はアキヘスに用事はないことを伝え、アキヘスに案内され、国王のいる部屋に到着した、到着するとアキヘスは入口の横に立ち、勇に入るように言う、勇は緊張しながら部屋に入った、中は広く綺麗で高そうな家具がいくつもあった、部屋の真ん中にソファーが置いてあり、そのソファーに男性が座っていた、勇が部屋に入るとその男性が勇の方を向き話す。
「君はユウ シンドウだね、どうぞ遠慮なく座ってくれ、君と多くを話したい」
勇は頷き、男性の向かいにあるソファーに座る。
この人が国王…ラルグス王、何か思ってたより普通の人…、めちゃくちゃ何か飲んでるしくつろいでるし…、ほんとに王様か?。