7話 不穏の種
今俺は穏やかな波にゆられている…、本当に嬉しい…、船に乗ってたか大体10日ほどたった…だがこれほど穏やかな波は初めてだな、この船の船長いわく波が穏やかな時は年に3度ほどだそうだ、そして驚いた事にイー港からオー港町の航路の波は他の大陸間の波より穏やかだそうだ…それって普通にやばいよな…。
勇が甲板に立ち穏やかな海を眺めていると、男性に話しかけられる。
「この世界の海はなぜこんなにも、波が荒れてるんでしょうかね?、貴方はどう思います?」
ん?誰だこの人…何か怪しいな…、まぁ確かに何で波が荒れてるのかは気になるな?、魔力が影響してたりするのかな?。
「さぁ俺にはやっぱりだけど、確かに何でこんなに荒れてるんでしょうかね、俺のいた世界では波が荒れてたとしても、今の波ぐらいな気がするし、元いた世界では魔力がなかったから、もしかしたら魔力が影響してこんなに波が…ん?」
何だこいつ…、俺を探ってるような感じがするし、何より何でこいつは「この世界」って言ったんだ?。
男性は少し笑い話す。
「なるほど君が元いた世界にも、海があり波が穏やかだったと、ふむふむ…しかも魔力がないと、実に面白い…ユウ シンドウ殿」
こいつ何で俺の名前知ってるんだよ?!、取り敢えず今はこいつから距離を取って。
勇は少し男性から距離を取り、男性に対する警戒を高める、男性は両手を軽く上げ、戦う意志がないことを伝え、続けて話す。
「すまないつい君の名前を言ってしまった、シンドウ殿、君の名前はノウム大王国の国王から聞いていてね、いや正確には見たってのが正しいか…、まぁそんなことはどうでもいい」
まじで何だよこいつ…、ノウム大王国の国王?…、国王から見た?、どういう事だ、取り敢えずこいつは戦う意志はない、だったらこいつが何者かこいつ自身に聞くのが早そうだ、答えてくれるかは知らないけど。
「国王から見たってどう言う事だよ、あと俺のこと知ってたとしても知らなかったとしても、普通自己紹介はしないもんなの?」
男性は少し笑い答える。
「あぁすまない、僕の悪いとこが出てしまった…、改めて自己紹介を、僕はミリアス ホルテイン、呼び名はミリアスと呼んでくれ、もっと親しく呼びたいならミリーとでも、ノウムで便利屋まがいの探偵をしている、君の「国王から見たって」質問だが、君を召喚することに成功したことを、イデア国の長王がノウム大王国の国王に手紙を送っていて、その手紙を僕も見せてもらったんだ、だから僕は君を知ってる」
ミリアス ホルテイン…何かどっかで見たような…思い出せないな、見た目はめちゃくちゃ怪しいけど、別に悪いやつじゃないのか?。
「ミリアス…さん?は、なぜ俺に話しかけたんですか、手紙を見たからって俺が転移者ってわかんなくないですか」
ミリアスは答える。
「僕はもともと君が転移者であることはわからなかったよ、だけどこの船に転移者が乗っていることは知っていた、だから僕ははじめに探るような言葉を使った、それに僕は今この船の船長に依頼を受けていてね、波が穏やかな内に乗客に話しまわってたんだ」
なるほど…ミリアスさんは俺が転移者であることはわかってなかったのか、まぁ別に隠すようなことでもないような気がするけど…、そうだ何でミリアスさんは俺がこの船に乗っていることがわかったんだ?、あと船長から依頼を受けてるってのが気になるな。
「あの何で俺がこの船に乗ってることを知ってたんですか、あと知ってたとしても何で俺を探してたんですか…、もしかして船長の依頼に関わってるとか」
ミリアスは質問に答える。
「君がこの船に乗っていることを知っていたのは、船長から乗客の名簿を見せてもらったからだ、君の名前はニチホンの人の名前みたいな感じだからすぐわかった、あと君を探してたのはただ単に僕が気になったからだ、この世界とは違う別の世界から来た、これほど興味を惹かれるのは他にないと思うけど、それと船長からの依頼だけどただのもの探しだ、指輪を落としたとかで探す依頼を受け持って探してはいるけど…、まぁ見つからないもんだ」
その様に話していると遠くから一人の女性がミリアスに話しかける。
「ミリー指輪ありましたかー?、一度船長さんが話しをしたいそうですよ」
その言葉を聞いたミリアスは「あぁ今行くよ」っと言い、勇に話す。
「こうして君に会えて良かった、では縁があればまたどこかで会おう…あぁそうだラルグスも君に会うのを楽しみにしていた、じゃあ今度こそまたどこかで」
勇も続けてミリアスにお別れを言い、ミリアスは女性の方に歩いていき、二人は船の中に入って行った。
最後に言った人の名前…誰だろうか、聞き覚えはあるけど思い出せないな、後でロンさんにでも聞いてみよう。
そうして勇は20日ほど波にゆられ、遂にケントルム大陸に上陸した。
はぁ〜疲れた…揺れない地面に立っているはずなのに、揺れている感じがする、3人共痩せこけて見えるし…、グオンはまた吐いてるよ…、そうだまさかラルグスって人が大王国の国王だとは思わなかった、ミリアスさんはラルグス王とは親身っぽい感じだったよな…、まぁ今はふかふかなベッドで寝たい…。
4人は3日ほどオー港町に宿泊した、そして次の目的地であるハルレン村を目指す。
今俺は…現代文明とは程遠いこの世界で自動車に乗っている…、見た目は自動車というより馬車に近い気がするし…乗り心地は終わってる、それにあんまり早くないし、道がちゃんと整備されてないと走らないけど、動力を使い確かに動いている、俺がこの世界に来て言葉を学んでいる時に自動車に関する言葉があることに一番驚いた、まぁ確かに魔獣は手懐ける事はできないから、魔力を使った自動車を発明したんだと思う、この自動車を発明したのはアンがいつぞやに言っていた、魔術学院の生徒が発明したそうだ…、けどこの自動車を再現することはかなり難しく、高価なもんとか…乗れて良かった。
勇達はしばらくゆられていると、雨が降ってくる。
雨だ…聞いてた通り突然降ってきたな、ロンさんがケントルム大陸は雨の大陸とか言ってたけど、こんなふうに突然雨が降って来るなら確かにそうだよな、てか歩きじゃなくて良かった。
4人は20日ほどかけてハルレン村に到着した、道中魔獣などはおらず安全で快適な道だった。
ここがハルレン村か思ってたより大きい村だな、けど…何か暗い雰囲気だな、村の人達も暗い顔してるし、何かに怯えてるような感じがする…、まぁ気のせいだよな。
勇がその様に考えているとロンが3人に話す。
「取り敢えず無事についたね、じぁ私は買い出しとこの辺の情報収集をしてくるよ、3人は宿を頼むよ、それと集合場所は今いるここにするよ」
3人は返事をして、ロンと分かれる、3人は宿を探してしばらく歩いていると、グオンが勇に静かに話す。
「おいシンドウ…、この村何か変じゃないか、そう若い奴らが少ない」
確かに言われてみれば少ないような、けど家の中に入ってるだけじゃないかな、若い人が少ないって言っても…人が全然外にいないし。
「確かに若者が少ないと思うけど、家の中にいるだけかもしれないし、他に何か理由があるのかも?」
グオンは勇の返しに不満そうに言葉を返し、勇とグオンが少し言い合いをしていると、女性がアンに話しかける。
「あの…あなた達は旅のお方ですよね、泊まるところに困っていませんか?」
アンが答える。
「そうです困ってます、お姉さんもしかして泊まれる場所を教えてくれるんですか?」
女性はアンの言葉を聞き嬉しそうに言葉を返す。
「あぁ良かった…、泊まれる場所を用意できます、この村は宿がないんです、だからあなた達さえ良かったら、私の家で泊まっていってください…」
アンが女性と話しているとそれに気づいた、グオンが会話に割り込んでくる。
「待て…今宿がないといったな、お前の家などには泊まる気はない」
それを聞いた女性は絶望した顔を見せる、アンがグオンに話す。
「グオン…どうしたのそんなこと言って、私達は宿…泊まれる場所を探してるんだよ、だったらお姉さんの家でいいじゃん」
グオンがアンに近づき耳ともで話す。
「アン様この村は何か変なんです、だから誰かの家には泊まらず、野宿をしたほうが…」
グオンが話している途中に勇がグオンの肩を組み、会話を遮り話す。
「なぁ…グ・オ・ン、お前…お姉さんの家に行くのが恥ずかしいだけなんだろ、そうだお姉さん俺達だけじゃなくてもう一人いるんですけど大丈夫ですか?」
グオンが勇の腕を払いのけ、勇に一言「黙れ」っと呟く、女性は勇質問に答える。
「はい…大丈夫です…、無理に来なくてもいいので…」
んーこの人何か様子がおかしいな…、まぁいいか野宿は絶対に嫌だし。
「じゃあお姉さん案内お願いします、あとお邪魔します」
これを聞いたグオンは言葉を返そうとするがアンがそれを止め、3人は女性の家に向かった、その後勇はロンと分かれた所に行き、ロンを待っていると、一人の男性に話しかけられる。
「おーい…ヒック、お前さん俺に金恵んでくれね〜かぁ、酒が切れちまって、ね〜んだ、ははは~は」
いや…酒の中身全然あるじゃん、それに俺金持ってないしな。
「おっさんその左手に持ってる酒まだ入ってるよ、あと俺金持ってないから」
男性は酒を持っている左手を自身の顔の前に出し声を上げる。
「あ~~~、本当に入ってるじゃあねーか」
そう言い男性は歩いていった。
何だあの酔っ払ったおっさん…、まぁロンさん待つか。
しばらく経ち日が沈みかけている時にロンが待ち合わせの場所に到着して、勇がロンに話す。
「ロンさん宿が無かったから、村の人の家に泊まることになったよ、遅かったけど何かあったんですか」
ロンが返事を返す。
「すまない、またしてしまったね、この村の村長と話していたら遅くなってしまってね、ユウ二人は一緒じゃないの?」
勇が質問に答える。
「二人はお世話になる家にいるよ、3人で待つのもどうかと思って、一人で待ってた」
ロンが会話を続ける。
「そう…、ユウ今から私はこの村の教会に行くんだけど、ついてきてくれる?」
教会?、何で教会なんだろう、何か気になることでもあるのかな。
勇は了承しロンについて行く、そして話しながら歩く。
「あのロンさん、何で教会に行くの?、何か気になることがあるとか?」
それにロンが答える。
「この村の村長から食べ物と魔石を買ってね、置いてある場所が教会だって言ってたから、今から取りに行くんだよ…ユウ」
ロンが少し声を抑えて続けて話す。
「私は少しこの村を見て変と感じた…、だからこの村にはあまり長いはしないよ…、ユウは何か疑問に思ったことはない?」
ロンさんまで言うって事はやっぱりこの村はおかしんだな…、疑問に思ったことか…確か若い村人が少ないのと、見かける村人の全員が…いやあの酔っぱらいのおっさんを除いて…全員が暗い顔を浮かべていた…、やっぱりおかしいよな。
「グオンもこの村に疑問を持ってたよ、俺が疑問に思う点の一番は若い人が少ない…、はじめは家の中にいるだけだと思っていたけど、ロンさんを待ってる間村を見ていたけど、ほとんどいなかった…それどころか家の数よりも人の方が少なかった」
ロンが「なるほどね」っと言い、教会に付く、ロンがいつものように話す。
「購入した食べ物と魔石は、箱2つぐらいだから先に自動車に運ぶから、手伝ってねユウ」
あ…これ損したな…、皆でこれば良かった。
教会の中に入ると一人の男性が二人に話しかける。
「どうしましたか、何か御用で?」
ロンがそれに答える。
「ヤミキさんから購入した食べ物と魔石を取りに来ました」
ロンはそう言いながら男性に紙を渡す、男性は渡された紙を見て少し笑みを浮かべ話す。
「何ほど…旅に必要なものですか、わかりました案内します」
二人は男性について行き、教会の地下に降りていく、箱がいくつかある場所にたどり着き、男性が話す。
「食べ物の方は少し傷んでいるかもしれませんので、もう一箱ほど持っていってください、魔石は隣の部屋にありますので」
二人は男性に礼を言って、自動車に運び入れた、運び終えるとロンが小さな声でユウに話しかける。
「ユウちょっといい?…、私はこのあたりの別の村に一度来たことがあってね、その時にも教会を訪れたんだよ、その村にあった教会はこの村にある教会とほとんど同じ造りをしていたんだよ、だけどこの村の教会は2箇所だけ明確に違ってた、1箇所目は女神像が誰かに破壊されてた…、2箇所目は壊された女神像の下に帝国の皇帝の絵が飾られてた…、大王国と帝国は長きにわたって不仲でね、この様に大王国の領土内に帝国の皇帝の絵を置くものではない…、やっぱりこの村は何かあるかもしれないね…」
女神像が破壊されてるって普通にやばいな…、それに皇帝か…、絶対この村は何かあるよな。
勇はロンの言葉に頷き、女性の家に向かった、家に入ると食事が用意されており、5人で食事を済ませた、4人は旅の疲れもあったのか、食事を終えるとすぐに睡魔が襲い、4人は各々の寝床に行き、熟睡した。