19話 魔王
10日ほど経ち勇達は遂に第3前線拠点サンに到着する、勇達が自動車から降りるとサンにいる一部の人が歓声を上げて出迎える、一人の男性が勇に近づき話す。
「ユウ様よく来てくれました、早速ですいませんがついてきてくれませんか…、ユウ様一人でお願いします」
勇は「わかりました」と返事をしながら頷く、男性がアルハスを見て少し驚いた表情を見せて話そうとすると、アルハスが首を少し横に振り人差し指を自身の口に当てる、男性は黙り込み頷き歩いていく、勇はそれを見て少し目を細め、少し息を吐き目をつむり首を横に振り、男性についていく、男性が向かった場所は少し大きな建物でその中に入っていく、勇も続いて中に入ると、部屋の中から複数人の話し声が聞こえる。
「やはりこちらを取らないと話になりませんよ、少しでいいので兵を送ってください」
声色が怖い男性が言葉を返す。
「そんな所いらないだろ、それより前線だ、お前のような戦いも知らない奴が口を挟むな」
勇についてくるように言った男性は複数人の話し声が聞こえる部屋に入り話す。
「失礼します、ユウ シンドウ様を連れて来ました、それと少し声が大きいかと」
声色が怖い男性は勇を連れてきた男性を睨み、イソルクが言葉を返す。
「案内ご苦労…それと忠告感謝する、会議が終わるまで外で待っていてくれ」
勇を連れてきた男性は返事をして部屋から出ていく、イソルクは勇を見て続いて話す。
「勇者様また会えて良かった、この戦場でも勇者様の活躍は耳にしている…、取り敢えず私の隣で見ていてくれ」
勇は返事をしながら頷き、イソルクの隣に立ち会議を見る、しばらく声色が怖い男性と始めに話していた男性が言い争いをして、最後にイソルクが二人の意見をまとめ作戦を提案する。
「二人は少し熱くなりすぎだ、少しは頭を冷やせ…お互いに人を指揮する立場だろ?、それで勇者様一番危険な場所だがいいかな?」
勇はなんの迷いもなく頷き返事を返す。
「わかりました、けど一つだけお願いがあります、俺の仲間のグオンは一番安全な場所でお願いします」
イソルクはそれに了承して会議がひとまず終わる、勇は建物から出て適当に歩いていると声色が怖い男性が勇を呼び止め話しかける。
「少し良いかユウ殿?、なぜ承諾した?、仲間のためを思ってではないだろ?」
勇は迷ったように返事を返す。
「いえ…別に…仲間のため…いやただそうした方がいいかなって、それだけです、あのもう行ってもいいですか?」
声色が怖い男性は勇の目をしっかりと見た後に話す。
「壊れているな…イソルクの奴めむちゃをさせる、ユウ殿なにか困った事があったらなんでも言ってくれ、では失礼した」
そう言い声色が怖い男性は立ち去っていく。
壊れているか…わかるんだな、明日から魔王軍と本格的に戦う…、俺にできることはすべてやる、この体が生き続ける限り…人のために…。
この世とは思えない大地、雪が降り積もっていた大地は灰色に変わり、魔物達があふれかえる数の魔獣を引き連れ灰色の大地を埋め尽くす、兵士達は守りを固め陣地を築く、ただ複数の部隊はあふれかえる魔王軍に向けて各々の武器を構え向ける、そしてその者たちの死の合図が辺りに響き渡り、あふれかえる魔王軍は滝のように迫りくるう、陣地を築いていない兵士達はそれに対抗するようにあふれかえる魔王軍に向けて進軍する、その一番先頭を勇は走り抜け、あふれかえる魔獣の群れに飛び込み、一体…二体…三体と斬り伏せていく、勇を止めるものは誰もおらず、ただひたすらに殺戮が繰り返されていた、数時間経ち勇は青い大地に立っていた息は乱れ、体は青く濡れ、辺りにはありえないほどの屍が転げている、魔王軍は撤退し勇はひとまずの勝利を得た、数日経ち勇は再び会議に呼ばれ話を聞く。
「いや…流石は勇者様、凄まじい成果ですね、勇者様さえいれば間違いなく、ルンヘルム卿の部隊は問題ないでしょう…、なので私の部隊に兵の増強を…」
声色の怖い男性が少し怒った様に言葉を返す。
「ふざけるなよ若造!!、確かにユウ殿は何万何十万もの力を持っているが、一人しかいない、一人で前線を保つことなどできん、それに俺の部隊の多くが死んだ、間違いなく増強はこっちが優先だ」
始めに話した男性が言葉を返そうとすると、ヘルスが会話に入る。
「一つ疑問なのは…あの隻腕のビースと言う、新たな魔王軍の幹部が戦場に現れなかった事が不自然ですね」
隻腕のビースと言う名前を聞き、会議室にいる勇以外の皆は暗い顔を浮かべる、イソルクが少し暗い声で話す。
「確かにそうだ…、隻腕のビース…あいつにはひどくやられた…、勇者様は知らないと思うが、我々は勝っていた…それも圧倒的に、だが隻腕のビースと名乗るものが現れすべてを変えた…」
ヘルスが地図を軽く指さしながら話す。
「帝国も苦戦をしているそうです、あちらは皇帝さえ戦場に出れば変えれるはずなのに、なにをしているのやら…」
イソルクが少し悩んだ後に勇に向けて話す。
「勇者様…我々の一番の敵は隻腕のビースだ、もしもあいつが戦場に現れたら相手を頼めるか?」
ルンヘルムが言葉を挟む。
「イソルク…それはむちゃだ、ユウ殿に死ねと言うつもりか?」
イソルクがそれに言葉を返す。
「無茶なのは承知だ、ただ死ねと言うつもりはない、勇者様なら倒せるかもしれない…、それにあいつを放置してまた同じことをするつもりか?」
ルンヘルムは苦虫を噛んだ様な顔を見せ、勇が返事をする。
「俺は別にいいですよ、なにも…ただ戦うだけですから」
イソルクは頷きお礼を言い、しばらく話し合い会議が終わり、勇は自身のテントに帰る途中で勇の事を話す兵士達の声が聞こえ立ち止まる。
「あの人…勇者様ってすごいよな、まるで英雄譚に出てくる人物みたいだよ」
若い声の男性が言葉を返す。
「そうだね…けど怖いよな、人間とは思えない…英雄ってよりは化け物の類だよ」
もう一人の若い声の男性が思いついたように話す。
「その勇者様の仲間のグオンって人すごいよな、あの人の背中見てたら気持ちが高まるんだよな」
若い声の女性が返事をする。
「そうそうあの人こそ英雄ってかんじ、何回も助けられたって聞くし」
兵士達は更に話が盛り上がる、勇は少し笑みを浮かべその場を通り過ぎる、テントにつき中に入り、敷かれた毛布に寝転びポケットから指輪を取り出しそれを眺めながら「化け物か…」と呟き目をつむりそのまま眠りにつく、少しして眠りから覚め体を起こすと地面になにかが落ち、勇はそれを手に取り確認する。
なんだこれ…あ…ユウタケだ…懐かしいな、乾物っぽいけど誰が置いていったんだろ…、多分俺にくれたんだよな。
勇はニオイを嗅ぎしっかりと見た後に乾物のユウタケを食べる、勇は少し驚きそれをしっかりと味わい食べる、勇は食べ終わると小さくはあるが聞き取れる声で「美味しいな…」と呟き、勇は小さく笑みを浮かべる。
数日経ち勇は戦場にいた、多くの兵士が隊列を組み横に広がり、魔王軍の襲来に備えていた、勇は誰よりも前におり戦いに備え集中力を高めていた。
この戦いで大きく変わる…、隻腕のビース…そいつを殺すのが今の俺の役目…、見た目とかは聞いてないけど隻腕とか言う名前?がついてるし、片腕なんだろうな。
勇がその様に考えていると勇の見ている先の空間が縦に広く割れ青黒い穴が広がり、その穴から無数の魔獣 魔物が無作為に出てくる、その中で一際でかい魔物がおり、その魔物は腕が一本しかなくその一本の腕は無数の手で構成されており、決して人が持つことができないほどの巨大な剣のような斧を持っていた。
あぁ…あいつだな…片腕だし、俺が想像してたよりでかいな、かなり遠目から見てるけど…でかい。
勇は突撃の合図を待ちリズムを整えていると、遠くにいるビースが声を大きく上げ話す。
「俺様の名は隻腕のビース!!!、六装のクロドトを殺した勇者!!、本当に殺した実力があるのなら俺様にかかってこい、俺様は最強だ!」
何だあいつ…遠すぎて全然聞こえないけど、変なこと言ってそうだな、あいつ強そうに見えないんだよな…、まぁ油断は…なしだ。
辺りに突撃の合図の音が鳴り響き、兵士達は声を大きく上げ魔王軍に向けて突撃していく、勇は「纏え…ルーメン」と言い、ビースに向けてとてつもない速度で走り始める、ビースも勇の剣の光を見て近づき武器を大きく振りかぶり勇に向けて振り下ろす、勇はそれに向かって進み続け剣の様な斧が当たる寸前で剣をそれに向けて横に振り、視覚的に見える光の斬撃が剣の様な斧を大きく弾き飛ばす、ビースは少し情けない声を出し後ろにのけぞり体勢を整える、その間に勇はビースの足元までいき、足首を狙い軽く構えを取り「纏え…ルーメン」と言う、ビースは勇が足元にいることに気づき剣の様な斧を大雑把に地面に振るい、複数の魔獣 魔物を巻き込んで地面をえぐる、勇は既にその場所にはおらず、ビースの顔付近に飛び上がっており、剣を横に振るい、視覚的に見える光の斬撃をビースの顔に向けて放つ、ビースは慌てて剣の様な斧を使い防御するが衝撃を押さえきることができずに片膝をつき倒れる、それを見た兵士達は大きく歓声を上げ、魔物達は少し不安げな顔をチラチラと見せる、勇は再び「纏え…ルーメン」と言い剣身に光をまとわせる、ビースは少し唸り声を上げながら立ち上がり、持っていた剣の様な斧を手放し、自身の額をエグリ縦に広げると、赤く燃え光る瞳のような球体が現れ、ビースの額を燃やし続ける、ビースは苦しみながら大きく声を上げる。
「いてぇ!!、この痛み…流石は太陽の義眼…、いいぞ力を感じる、すべてを焼き尽くす力!」
ビースがその様に叫ぶと太陽の義眼が強く光を強め、辺りの温度が急速に上昇する、勇は太陽の義眼を見て少し恐怖を感じ体に力が入る、ビースは奇怪な声を出し太陽の義眼から熱を凝縮させた熱線をあらぬ方向に放ち、放たれた大地はドロドロに溶ける。
なんだあれ…あんなのくらったら確実に…死ぬ、けどあいつ…あの瞳?を使いこなせてないな、さっさと殺さないと大変なことになる。
勇は踏み込みを強め飛び上がり先程と同じ様に剣を横に振るおうとすると、凄まじい速度でビースが勇を叩き、勇は遠くに吹き飛ばされる、勇は空中で必死に体勢を整えようとするが、あまりの速さに体が言うことを聞かず、勇は地面に叩きつけられ地面をえぐる、勇はすぐに起き上がると遠くからビースが持っていた剣の様な斧が凄まじい速度で飛んでくる、勇は素早くその場を離れそれを回避する、剣の様な斧は少し溶けており突き刺さった地面を燃やしていた。
あっぶな…あいつ投げてきやがった、もう武器なんて必要ないのかよ、てかさっきの攻撃全然見えなかった、魔力で少しわかってたけど体がついていかなかった…。
勇は軽く咳をして血を地面に吐き捨てる、少し呼吸が乱れ勇はゆっくり走り出しビースに近づいていく、ビースはかなり焼きただれており、ビースの周りは灰が積もっていた。
くさい…焦げたニオイがするし、生臭い生魚のようなニオイもする、あいつなにがしたかったんだ、もうほとんど動けてないし…死にかけてる。
勇は「纏え…ルーメン」と言い、剣に意識を集中され本来よりも大きく光を剣身にまとわせる、勇はビースに近づいていきある程度近づくと強く剣を横に振り視覚的に見え大きな光の斬撃を生み出し、ビースを斬り裂き消し去る、太陽の義眼だけが地面に落ち次第にそれも消えていく、辺りから喜びと安堵に満ちた声が次第に上がっていき、それと同時に恐怖で満ちた人ではないものの声が上がっていく、ビースの死をきっかけに人による魔獣と魔物の虐殺が始まり、魔物達は次々と青黒い穴に向かい逃げていく、誰もが人の勝利で終わる戦いだと思っていた中、突然世界が大きく揺れガラスを割るような音が上空から鳴り響き、青い空が大きく割れ黒く濃い霧のようなものが溢れ、それらは次第に丸く形をなしなにかを下ろす、勇は人はその霧を本能的に危険と感じ恐怖する、霧が次第に地上に近づいていき近づくにつれて霧がはれていき、なにかが姿を見せていく、それを見た人 魔物達は同じ言葉を呟いていく魔王と、勇はそれを見て無意識に少し笑み浮かべ、全力でそれに近づいていく。
魔王…いや違うかもしれない…けど…あれは魔王だ、やっと終わる…俺の旅が、あいつを殺せば俺は…終われるんだ、俺はきっとどこかで願っていた、いないと知ったあの時でも俺はきっと願っていた…、魔王を倒してなにかをなす…なにかになる、それが俺の生きる意味になっていた…、だけどもう疲れていた…早く…終わりたい。
勇は今までに見ないほどの速度と力強さでそれに近づき斬りかかった瞬間、勇の体に複数の剣が深く突き刺さる、偶像の魔王は勇に向かって小さく「弱い」と呟き、次の瞬間勇の左肩が大きく斬り裂かれ力無く地面に落ちていく。
見えなかった…なにも…こんなにも力の差が…、あぁ…もう無理だ…それにこの感じ…死にそうになった時と同じ感覚だ…もうこれでいい…終わりた…。
勇の意識が次第に消えていき、突き刺さった剣は消え、血が出始め肩は大きく裂け大量に血が出る、勇は終わりを感じながら少し笑みを浮かべ意識がなくなる。
…………………
成熟した少女は白髪の赤い瞳の青年に笑顔で話す。
「ねぇ?アルブム…なにか食べたいものはある?」
アルブムは少し不思議そうに返事をする。
「なにか食べたいもの?…、特にはないかな…甘いものが食べたい、なんで聞いたのムリエル?」
ムリエルは笑顔を見せて話す。
「なんでって忘れたの?、今日は私達がここに初めて訪れた日、だからお祝いしなくちゃ」
アルブムは頷き椅子から立ち上がり返事をする。
「じゃあみんなも呼ぼう、僕たちだけで祝うよりみんながいたほうがいい、今から呼んでくる」
ムリエルは笑顔を見せて頷き、アルブムを送り出す。
この記憶の続きは見ることはできない、きっとこの記憶を見せている剣が…ルーメンがそれを拒んでいる、見えない…見せないと言うことはきっと良くないことが起きるんだろうな…、はぁ…さぁ記憶を見終えたそろそろ起きろ勇…俺の旅はまだ終われない。
……………………
勇は目が覚めるとベッドに寝転んでいた、辺りからは人の苦痛に満ちた声や悲しみに満ちた声などが聞こえ、良い目覚めとは程遠いものだった。
ここは…周りには怪我人…、まだ死ねなかったか…はぁまだ戦うのか…。
勇が少し息を乱し起き上がると、一人の女性が驚いた顔を浮かべながら近づき話す。
「勇者様…大丈夫ですか…どこか痛むところはありますか?、少し待っててください、人を呼んできます」
女性はそう言うと勇の返事を聞く前に急いでその場を立ち去る、少ししてイソルクと目に生気がない女性が勇のもとに訪れ、イソルクが話す。
「勇者様すまないこの様な場所で、この戦争を終わりに導いた英雄なのに…」
イソルクがその様に言うと隣にいる目に生気がない女性が不満そうに話す。
「この様な場所って…本気でいってるの?、イソルク総大団長様?、確かにこの人は英雄だけどこの人だけじゃないでしょ?」
イソルクは少し面倒くさそうな顔を浮かべ返事をする。
「あぁそうだ…、それより早く勇者様の体を見てくれ、その為に忙しそうな、お前を呼んだんだ、早く済ませた方がいいじゃないか?」
目に生気がない女性は手に持っていたコップをイソルクに向けて投げ、イソルクはそれを軽く受け止め、目に生気がない女性は勇に近づき診察する、診察し終えると目に生気がない女性はため息を漏らし話す。
「はぁ…問題だらけ、本当になんで生きてるの君…、ある程度は治ってるけど、内臓はボロボロだし骨もいってる、最低でも半年は安静にしてないと命に関わる」
それを聞いたイソルクは小さく「もう戦えないか」と呟き、目に生気がない女性はそれを聞いて舌打ちをして勇に向かって話す。
「君も君だから、この怪我達は魔王にやられただけじゃいから、それ以前にあったもの含めた怪我…、なんでここに来た時に私の所に来なかったの?」
勇は少し目をそらし答える。
「大丈夫だと思ってたんで…、それにイソルクさん俺まだ戦えますよ、説明してくだい今の現状を」
目に生気がない女性は大きくため息を漏らし、勇のベッドに緑の液体が入ったら瓶を複数個置き話す。
「死にたいんだ、まぁこれ毎日一本、じゃ私はこれで」
目に生気がない女性はそう言い、他の怪我人の所に向う、イソルクが答える。
「勇者様が死にかけた後、あの魔王は我々の後方拠点を破壊して立ち去った、それに続くように魔王軍も根城に戻っていった、私達は魔王によって被害を受けたがまだ戦える状況だ、魔王を確認したことによって私達の方針は決まった、魔王を討伐するこれを第一とすることに決定した、これはラルグス国王陛下にも許可をもらっている」
魔王を討伐する…か、けど魔王と魔王軍は帰ったんだよな、このままここに留まって来るのを待つのかな?。
「あのイソルクさん、魔王と魔王軍はいつここに来るんですか?」
イソルクは首を横に振り答える。
「わからない、だから私達は進軍することにした、次の決戦地は魔王の城だ、だから…勇者様には厳しいかと、船を使って移動する、だから怪我人は乗せれない」
勇は立ち上がり話す。
「俺は船に乗りません、歩いて行きますから、あの後で目的地を地図に描いてくれませんか?」
イソルクは少し苦笑いを浮かべ頷く、しばらくしてイソルクは出発の準備のためその場所に向かった、勇は足を引きずりながら歩き、自身のテントに帰り1日が終わる、翌日になり勇のもとにアルハスが訪れ、勇はアルハスに次の戦場に行くことを伝える。
「一人でも行きますから、ここまで案内ありがとうございました」
アルハスは少し目を細め言葉を返す。
「流石に無茶だと思いますけど…、次の戦場まで歩いていくには山を歩かないといけません、ユウ様…その体では無理ですよ…」
勇はアルハスに作り笑顔を見せて、その場を逃げるように離れる、少し歩き勇は辺りを見渡す、辺りの大地はひどく荒れており遠くの方には処理がされていない死体が無数に積み重なったていた、勇は近くの材木に座り遠くを見つめる、しばらくそうしていると勇の隣に誰が座り、勇はその隣に座った誰かを見るとクミアが座っていた、その近くにグオンが立っておりバッチのようなものを手に持っていた、クミアは勇に話しかける。
「ユウさん…本当に行くんですか?、もうユウさんは十分だと…いえなんでもないです」
勇は言葉を返す。
「無事で良かったよ、クミアも俺が行くのは反対なの?、俺も反対だよ…本当に無茶だよな」
クミアは少し悲しそうに返事をする。
「無茶でも行くんですよね…、私には反対する権利はないですから…、最後にお別れを言いたくて…」
クミアは髪を結んでいた紐を解き、勇に紐を渡し話す。
「ありがとうございました、あなたとティラスさんのお陰で私は死にませんでした、私は決して忘れません、本当にありがとうございました…、そしてこれをあなたが大切にしていた指輪…、もしよければその紐にしてください」
勇は頷きそれを受け取り、クミアに向かって礼を言う、そして1日が終わり勇は荷物を背負い次の戦場に向う、当然のごとくグオンは勇の隣に立っており、二人は歩き始めようとした瞬間、目の前に自動車が止まる、それしてそこからアルハスが顔を見せ話す。
「さぁユウ様そしてグオン様乗ってください、雪道を歩くのは骨が折れますよ」
更にミルルハが手を差し伸べ話す。
「勇者様手を、中にとびっきりの酒を用意してますから、一緒に飲みましょう、後グオンも」
二人は少し笑顔を見せて手を取り自動車に乗り込み、次の戦場に向う。