18話 英雄の代償
今日でこの宿も最後か…、荷物もまとめたしいつでもいけるな…、はぁ…最後にティラスに会えるかな?、忙しいと思うから会えるかわかんないけど最後に…、いや…やめよう…別に最後ってわけでもないし、ティラスには迷惑はかけれないしな、グオンどこいったんだろうな、もう日が落ちかけてるけど帰ってきてないし、まぁ俺と二人っきりは気まずいか、なにかを探してそうだったけど…、流石になにを探してるかはわからないんだよな…、最近グオンと話したりしてないからな、まぁさっさとご飯食べて寝よ、明日は早いし。
勇は一人寂しく保存食を食べ、ベッドに寝転び眠りについた、翌朝になり勇とグオンはアルハス達を待っていた、グオンが珍しく勇に話しかけようとしたタイミングで、ドアの方からトントンと音がなり勇は話しかけられた事に気づかずドアを開けに行く、勇はドアを開けるとアルハスがおり話す。
「お待たせしました、出発の準備は終わっていますか?、それとなにか必要な物はあったりしますか?」
勇は答える。
「準備はバッチリです、必要な物は自分達で用意したんで大丈夫です、じゃあ荷物持ってくるんでちょっと待っててください」
アルハスは頷き、勇が部屋に戻り荷物を持ちグオンに話す。
「グオン…メトゥスさんが来たから行こ、一応確認だけどなにか必要な物とかある?」
グオンは荷物を持ち「ない」と言い、部屋から出ていく、勇もグオンに続いて部屋を出て、二人はアルハスについていき、自動車がある場所に着く。
荷物とかはほとんど積み終えてるな、べルッソさんとハハライさんが積んでくれたのかな?、まぁ早く乗るか。
勇は自動車に乗り込み椅子に座る、少しして4人も乗り込み、自動車が動き出す、アルハスが勇の隣に座り地図を開き話す。
「ユウ様道の説明をします、第3前線拠点までは今乗っているグルパグルだけで行きます、道中の村などに寄る事はしません、食料や燃料などは今積んで物だけで補うつもりです」
村などに寄る事はしないって普通にリスクがあるような…、流石に理由とかがあるのかな?。
「なんで村とかに寄らないんですか?、安全に行くんだったら、寄ったほうがいいと思うんですけど?」
アルハスは頷き答える。
「確かにそうです…、ですがレクス国の先にある村など全ては帝国の領土内なんです、現在大王国と帝国は同盟関係ですが、同盟関係だからと言って中がいいわけじゃないんです、ですので大王国の人間が村などに寄るのは危険だと思い、この様にしたんです」
え?、待て…ややこしいな、レクス国と大王国って別だよな、なんで大王国が出てくるんだ?、てか大王国ってノウムで間違いないよな…。
「ちょっと待て…メトゥスさん、一つ確認していいですか?」
アルハスは頷き、勇が続いて話す。
「大王国ってノウムのことですよね?、なんでいきなりノウム大王国が出てくるんですか?、俺達は確かにノウム大王国の人間ですけど、それだったらレクス国でも危なくないですか?」
アルハスは首をかしげ話す。
「ユウ様…レクス国は大王国の領土内ですよ、ケントルム大陸にある国は七国連盟で分けられていますけど、この大陸にある、レクス国が持つ領土は全てノウム大王国のものです、なのでその領土内から来た人間は帝国の人達は警戒するんです」
ん〜ややこしいな…、まぁここはノウム大王国と変わりないから、普通に警戒されてるって事か??…、まぁいいや村などに立ち寄らないでいいや。
勇が「わかりました」と言い、アルハスが頷く、その後勇は地図を見ながらアルハスに道を教えてもらう。
15日ほど経ち勇達は順調に進んでいた、この日は珍しく風が一切吹いておらず、視界も良好で雲もなく快晴だった、自動車は雪道を凄まじい速度で走り、中は静かで誰も喋っておらず、エンジン音が聞こえるほど静寂に包まれていた、外を見張っているミルルハがアルハスに少し不安そうな声色で話す。
「アルハス遠くに煙が立ち昇っている…黒い煙だ、村などがない場所だと思うが…」
勇はそれを聞き外を覗く、確かにかなり遠くで黒い煙が立ち上っており、勇は目をつむり耳を澄ます、ほんの微かになにか叫び声のようなものが聞こえ、勇は少し不安にかられる。
今の…気のせいか?…、微かに叫び声のようなものが聞こえたような…、ん…嫌な予感がする、いやこれは俺の想像だ、あの黒い煙の下で戦っている…ティラス達が、そんなはずはない…、向う場所が同じだとしても後から出発したティラス達が見えるのはおかしい…おかしいはずなんだ…、けどこの…胸騒ぎ…嫌な予感がする、あの場所に向かうのはリスクがあり過ぎる…、だけど今いかないと俺はこの先…一生後悔する。
勇はグオンを見て「ごめん…」と言い、自動車を飛び降り雪の大地に降り立つ、雪が膝まで積もっており歩くには困難だが、勇はそれが関係ないほど凄まじい速度で走り黒い煙を目指す、自動車は大きく曲がり勇に追いつくために速度を上げるが、追いつくことはできずそれどころか更に勇との距離があき、勇が豆粒のように小さくなる、勇は数分間全力で走り黒い煙の場所に着く、その場所は雪がほんの少ししか積もっておらず砂のようなものが所々にあり、ひどい惨状だった、多くの自動車が破壊させ倒れてあり、人が人として死んでいなかった、勇は全力で走ったからか息を大きく乱しながら辺りを見渡す、勇はすぐに一人の死体に目が留まる、その死体は腰下が砂のように砕けており、右手には勇がティラスにあげた剣を持っていた、勇はその死体にゆっくりと確実に近づいていく。
違う…違う!、あの剣は…偽物だ…、もっと…暗い色で…剣身が短くて…、『違わない、あれは本物だ』、ティラスが死ぬわけない…また会うんだ、きっとあの人は似た誰かだ…、『ティラスだ!!、俺が間違えるはずがない、顔を見なくてもわかる、確信が欲しいなら顔を見ろ』。
勇は更に大きく息を乱しながら死体に近づき、両膝を地面に突き死体の顔を確認する、その死体は紛れもなくティラスだった、それを見た勇は言葉を失い頭が真っ白になり、少しして自身の声が頭に響く。
『俺には仲間がいる!、勇気を持って立ち上がれ!、俺は英雄になる!』
勇は微かに涙を流す、それと同時に吐き気に襲われ嘔吐する、吐き終えると勇は大きく悲しみが混じった叫び声を上げる、勇が声を上げていると複数のなにかが勇に近づき笑いながら話す。
「まだ生き残りがいたか、フハハこいつはどう殺すか?、サーお前はどうしたい?」
サーと呼ばれた魔物はひらめいたように答える。
「ヤーいい考えがある、こいつをどこまで投げれるかやろう、勝ったやつがこいつを喰える」
女性の様な声の魔物が話に入る。
「私もやるね、まだ食べたりないわ、なんならそんなのやらずに食べたいわ」
ヤーと呼ばれた魔物は返事をする。
「食べたりないとかほざくなサザダ、お前が砂にするから俺達も食べたりてないんだよ、お前は参加するな」
サザダが言葉を返す。
「だっていいじゃない、この下等種を砂に変えた時の顔…ククク、本当に笑えるもの」
こいつが…砂に変えた…この魔物がティラスを…殺した、絶対に…『逃げろ!、リスクがある、相手は3匹だ、今は逃げたほうが得策だ』、黙れ…逃げたほうがいいなんて知っている、今ここでこいつらを殺さないと、もう俺じゃいられなくなる、だから黙ってろ…。
サザダの言葉を聞いた勇は静かに立ち上がり背負ってる剣を抜き話す。
「お前か…お前が殺った…、他に仲間はいないな?」
サザダは小馬鹿にした様に答える。
「なにこいつ??、話しかけてくるけどククク、仲間ってなによ、あんたも砂に変え…」
サザダが話している途中で勇が「纏え…ルーメン!」と言うと剣身が光で覆われる、続けて強く話す。
「お前らだけは絶対に殺す、なにがあっても…絶対に」
剣の光を見たヤーとサーは「「勇者??!」」と言い、サザダは話そうとすると目の前にいた勇が一瞬で距離を詰めて斬りかかる、サザダは反応が遅れ大きく斬りつけられ、反撃をするが既に勇は目の前におらず、サザダの頭上におり勇は剣を横に振るうと、視覚的に見える光の巨大な斬撃が生み出され、サザダは真っ二つになり光の斬撃は地面を大きく斬りエグリ、辺りが雪煙で覆われ真っ白になる、勇は再び「纏え…ルーメン」と言い、辺りの雪煙が晴れ、再び剣身が光で覆われる、ヤーとサーは勇が近づいてくるのを待ち、サザダの体が大きく崩れ地面に落ちると同時に勇はサーに急接近をして斬りかかる、サーはそれを華麗に避け、ヤーが勇にタックルをする、勇はその攻撃を最小限に押さえくらい、吹き飛ばされるが華麗に着陸し、すぐさまヤーに向けて剣を横に振ると、再び視覚的に見える光の斬撃がヤーに向かい飛んでいく、ヤーはそれを間一髪で避けるが、勇が少し近づき左手を前に出し「集…炸裂しろ」と呟くと、ヤーを中心に光が発生し、ヤーの頭部が弾け飛ぶ、サーは姿を消し勇の背後に現れ勇を殴り飛ばす、勇は激しく地面を転がりすぐさま起き上がり、勇は再び「纏え…ルーメン」と言い、剣身が光で覆われる、それを見たサーは恐怖で満ちた顔を見せ一歩後ろに下がる、勇が踏み込みを強めサーとの距離を詰めようとした瞬間、勇の背後にムキムキの焦点が合っていない変な顔の魔物が現れ勇を掴もうとする、勇はそれに素早く気づくが掴まれる、勇は焦点が合っていない魔物に向かって、剣を横に振り、視覚的に見える光の斬撃が生み出され、焦点が合っていない魔物の頭部を切断するが、勇は大きく空中に投げ飛ばされ、サーに空中で殴られ、勇は地面に凄まじい速度で激突する、辺りに雪煙が上がり視界が悪くなる、勇は起き上がり目をつむり辺りの魔力を感知する。
辺りに他の魔物はもういないな…、やっぱり仲間がいたな、後は人に近い見た目のあいつだけだ、魔力感知で大体の位置は把握している、逃げようとしてたけど逃がすわけない。
勇は再び「纏え…ルーメン」と言い、辺りの雪煙が晴れ、剣身が光で覆われる、勇はサーがいる方に向けて左手を前に出し「散…拡散しろ」と呟くと、勇の目の前が広い範囲で一瞬光、サーの動きが一瞬止まる、勇はその一瞬を使いサーの背後に回り込み、剣を横に振るうと、視覚的に見える光の斬撃がサーを大きく斬り裂き、勇は左手を前に出し「消し飛ばせ」と強く言い、数秒後にサーは光を浴び跡形もなく消える、勇は意識を集中させ回りに魔物がいないかを探る、なにかがいるのを察知し勇はなにかに向う、勇はなにかに近づくに連れて体が重くなっていき、足を引きずりながら歩く、グオン達が勇に追いつきアルハスが大きく声を上げる。
「ユウ様!!…駄目です、その先にいっては、止まってください!」
勇はその言葉に一切耳を向けずに歩き続けるが、足が動かなくなり、地面に倒れ込む、それでも勇は這いつくばりながらなにかに向かい進む、そしてなにも感じることなく、勇はぷつりと意識を失う。
もう進むしかない…止まることも戻ることも…許されない、俺はただひたすらにあいつらを…殺すだけ、それが英雄の道…望むことはなにもない…、俺はもう…壊れているんだ…。
勇は意識が戻り目を開けると自動車の中におり、誰かに膝枕をされていた、起き上がり膝枕をしていた人を見ると、知らない女性だった、その女性は寝ており、グオンが勇をじっと見つめていた。
誰だこの人…、俺死んでないのか…だったらよかった…、体は普通に動く…結構攻撃をもろに受けたと思ったんだけどな。
勇は立ち上がろうとすると床に倒れそうになるが、グオンが素早く支え座らされる、その音で女性は起き勇を見て涙目になる。
は?…なんだ今の…、力が入らなかった?、いや違う…なにも感じないんだ…、感覚がない…きっと俺の体は駄目なんだ、だから倒れそうになった…。
勇は少し目をつむり意識を集中させる、勇は鼻血を出し、口から少し血が出る、女性はそれに気づき自身の袖で血を拭き取るが、勇が途中で気づき女性と少し距離を取り、自身の服で血を拭き取り話す。
「すいません、色々気遣ってくれて、けどもう大丈夫なんで」
そう感情がこもっていない声で言うと、女性は返事をする。
「そうですか…、もう大丈夫ですか…、それでももう少し気遣わせてください、あなたは私の命の恩人なので」
勇は目を背け、再び目をつむる、勇はいつの間にか寝ており、テントの中にいた、毛布をかけられており、勇の横に先程の女性が寝ていた、勇は無意識にため息を漏らし、起き上がりテントから出る、外は夜で綺麗な空が広がっていたが、勇はそれに一切目を向けることなく、自動車の方に向かい剣を探す。
体はもう問題なく動く、強くならないと…あいつらを何の問題もなく殺せるぐらい…。
勇は剣を見つけ、剣の鍛練を始める、しばらくしてグオンが現れ近づき話す。
「ひどい顔だ…、あの時と同じ顔だ、俺はお前に勝ちたい」
グオンが話し終えると、剣を抜き構える、勇は嫌そうな顔を浮かべ、返事をする。
「なんだよ…勝ちたいって、俺はお前とは戦わない、戦う意味なんてないだろ」
グオンは勇を強く見ながら話す。
「俺にはある…、本気でいくぞ、死んでから文句は言うなよ…」
そう言いグオンは勇に接近して斬りかかる、勇はその攻撃を軽々と避け、グオンの剣を弾き飛ばす、グオンはすぐさま腰に差してある剣を抜き、何度も斬りかかるが、勇は全て軽く避け剣を弾き飛ばそうとするが、グオンは必死に剣を握り、グオンは少し吹き飛ばされる、グオンはすぐに起き上がり構えを取る、グオンの息は乱れ、勇は話す。
「グオンもうやめよう…、お前は…俺には勝てない、だからもう」
勇が言葉を言い終える前にグオンが叫ぶように話す。
「あぁ!…俺は弱い、そしてお前は強い、なのにお前はそのボロボロの体で強くなろうとしてる、俺はそれが本当に腹が立つ」
グオンは大きく息を吐き、続けて話す。
「お前…本当になにも見えてないのか?、俺が使っている剣…お前が持っていた指輪…、本当に見えないのか?」
勇はグオンに言われて気づく、グオンが使っている剣はティラスにあげた剣で、首に掛けていた指輪がなくなっていることに、グオンは勇の顔を見て怒った様な表情を見せ、剣を地面に投げ捨て、ポケットから指輪を取り出し、勇に向けて投げる、グオンは振り返り自身の持っていた剣を拾い話す。
「本当に人じゃなくなったみたいだ…、お前を気遣っていた女性…クミアの事も見てないんだな、あの人左腕と右足がなくなっていた…、ひと目見たらわかる欠損だ…なのにお前は心配そうな顔の一つもしない…、本当にお前は…」
グオンは言葉を抑え、勇を少し見た後にその場を立ち去る、勇は捨てられた剣を拾い、指輪を拾い、深く目をつむり、少し寒さを感じ、情けない声を少し漏らす、勇は少し晴れた気持ちになりテントに戻る、クミアはまだ寝ており、勇はゆっくり少し緊張しながら毛布に入り、クミアの横に寝転ぶ、勇はクミアを見ると少し涙が出ており、体も震えていた、勇は小さく呟く。
「きっと恐怖で震えている…、忘れられない恐怖…、この人の為に今俺ができることは…」
勇はクミアに抱きつき小さく優しい声で話す。
「もう…大丈夫…、君を怖がらせるものはいない、だから安心して寝ていいんだよ」
クミアは次第に体の震えが止まり、ほんの少し笑顔を見せる、勇はそれを見て目をつむり眠りにつく。
勇はすぐに眠りから覚め毛布から出る、テントから出ると、辺りは少し明るく自動車の方で火が灯っていた、ミットルが焚き火を焚いており、勇が近づいてくるのに気づき、軽く会釈をする、勇は少し笑みを見せミットルの隣に座る、ミットルは少し戸惑った様に勇をチラチラと見る、勇は一切ミットルを見ることはせず目をつむる、しばらく沈黙が続きミルルハが眠そうに焚き火に近づき話す。
「あぁ眠いな、ミットル交代だ…って勇者様もいたのか、体の調子はどうです?」
勇はミルルハを見て答える。
「もう大丈夫です、すいません勝手に飛び出して」
ミルルハは少し笑い言葉を返す。
「いや…俺は噂通りだと思った、噂に聞いた勇者様の戦いぶりを見れてよかった、お前もそうだろミットル…っていないのか」
勇はミルルハとしばらく他愛も無い話をして時間を潰し、他の人達が次々と起き、支度をして出発した。
5日経ち勇はクミアと一緒に見張りをしていた、クミアは勇が腰に差している剣を見て話す。
「ユウさんその剣…、誰でも手に入れれるものなんですか?」
勇は少し首を傾げ答える。
「いや…誰でもは手に入れれないと思うけど…、なんで聞いたの?」
クミアは少し笑い話す。
「同じ剣を持った勇敢な兵士の人が私を守ってくれたんです、だから気になって…、私が今こうして生きているのはその名前も知らない人とユウさんのおかげです」
勇は食いつくように話す。
「その人って…髪は短くて茶髪で言葉遣いが良くて…、目の色が青で左眉毛のところに傷があった?」
クミアは少し驚いた様に頷く。
ティラス…勇敢な兵士か、クミアさんを…いや最後までみんなを守ったんだろうな、その姿をこの目で見たかった…。
「その人はきっと…いやティラスだよ、俺の大切な仲間のティラスだ…」
クミアはなにか話そうとして黙り込む、それを見て勇は続けて話す。
「ティラスが助けた…クミアはなにがあろうとも俺が守る、ティラスの勇気は決して無駄にはしない」
クミアは少し笑い頷き、二人はしばらく話し、クミアは床に就く、勇は夜空を見上げていると、とてつもない殺気が勇を襲う、勇はすぐさま剣を手に取り殺気の方に視線を向けると、一人の男性が勇に向けて歩いてくる、その男性はほとんど肌が見えておらず顔も隠れいかにも怪しい服を着込んでいた。
あいつなにもんだ?…、隠す気もない殺気…それに魔獣とか魔物とかの気配をあいつから感じる…けどあいつは人だ、取り敢えずみんなに危険があることを伝えないとな。
勇が声を上げようとした瞬間、怪しい男性はガラス球の様な物を地面に叩きつけ「サイレント」と言い、辺りは一瞬にして無音の世界になる、勇が驚き怪しい男性から目線を外した瞬間、怪しい男性が勇に素早く接近して短剣を腹に突き刺すが、突き刺さる前に勇が怪しい男性を殴り飛ばし、怪しい男性は地面を数回転がり倒れ込む。
音がない…変な感じだな、こいつを殺せば元に戻るか?、いや取り敢えずこいつは殺さずに話を…って話したりできないじゃん、殺したら元に戻るとも限らないし…かと言って音のないままは嫌だしな…どうするか。
勇が少し考えていると怪しい男性が短剣を勇に向けて投げるが勇はそれを手で掴み取り遠くに投げ飛ばす、怪しい男性は起き上がり苛立った様に剣を抜き、勇に接近して斬りかかる、勇は攻撃を軽く避け剣を弾き飛ばそうとした瞬間、勇の全ての動きが止まる。
ん??、動かない…まるで時間が止まったような、止まったのは俺の体だけじゃなくて、剣もきている服も動きを止めている…、けど魔力の動きは感じる…取り敢えずヤケクソで魔術使うか、詠唱無しで初めて使うけど使えると信じて。
勇は心の中で強く「放出しろ」と唱えると、勇の体から微かに光が発生し、次第に大きくなり辺りはしばらく光で満たされる、光が収まると勇は息を乱しながらハァハァと呼吸を行う。
ふぅ…使えて良かったし、効果があって良かった、てか音がある…なんか運がいいな俺…、けど流石にしんどいな、魔力の使いすぎだ。
怪しい男性は癇癪を起こし、持っている剣を地面に何度も叩きつけ喚き散らす。
「ああああははあー、その光!!!その光あーー、消してやる!、消してやるる!!」
えぇ?…や…え?、こいつやばいやつ好きだろ、流石に怒り過ぎ、てかこいつ本当に人間か?、服をなんか脱いでいってるけど、なんで脱いでんだよ…まぁいいや、ウロコの肌に青白い皮膚…それにどことなく魚っぽい、なんか気味悪いな。
怪しい男性はめちゃくちゃに走りながら勇に向かってわざとらしく斬りかかる、勇は怪しい男性の腹を蹴り後方に吹き飛ばす、怪しい男性は地面を転がり口から血を吹き出し、苛立った様に起き上がり勇を強く睨みつける。
もういいか…こいつ殺して…、多分だけどあの動きが止まるやつ、あいつが持ってる剣に触れたら止まるんじゃないかな?、まぁさっさと殺るか。
勇は構えを取り息を整えタイミングを待つ、怪しい男性が少し唸りながら一歩前に出た瞬間、勇は一瞬で怪しい男性との距離を詰める、怪しい男性は慌てて勇に向かって斬りつけるが、剣を持っている腕を勇に斬り飛ばされ、勇に強く腹を殴打され足を切られ怪しい男性は地面に手をつき倒れ込む、怪しい男性は吐瀉物を吐き、起き上がろうと首を少し上げた瞬間、勇に首を切断され、怪しい男性の首が地面を転げる、勇は少し怪しい男性から距離を取り集中力を高め辺りと死体を警戒する、少しして勇は警戒を解き、剣に付いた血を払い、元々いた場所に戻り暖を取り、大きく息を吐き小さく「寒いな」と呟く。