16話 …代償
あいつ…酒ばっか飲んでんだけど…、何だったんださっきの視線は…、けどあいつからの敵意はやばいな、ちょっとでも油断したら殺されそうな。
巴は酒を飲み干すと空になった樽を元郎に向けて投げる、元郎は投げられた樽を左手を使い砕く、それを見た後に巴は地面を強く蹴り一瞬で元郎との距離を詰め大きく振りかぶり拳を振るう、元郎はそれを避けるが避けた後に足蹴りを腹部にくらい吹き飛ばされ平屋の壁を貫通する。
おいまじかよ…、地面えぐれてるけど…どんな力してんだよ、てか元郎さん地面えぐる様なあつの攻撃まともにくらったけど…やばくね、取り敢えず魔術はなるべく使わないようにしよう、魔力不足で倒れたら洒落にならない。
勇は少し冷や汗をかきながら「ルーメン力を貸してくれ」そう呟くと、辺りが光で満たされ剣の剣身が光で覆われる、巴は勇が出した光に興味を示し勇を睨む、勇は呼吸を整え、巴との距離を詰め斬りつける、巴はその攻撃を避けることはせずにあえてくらい、勇の首を素早く右手で掴み持ち上げる、勇は持ち上げられながら何度も巴を斬りつけるが怯むことは一切せず、首を強く掴まれ力が抜けていく、巴は勇に向かって話す。
「小僧…その光…面白いの…、魔を砕く力か、わしには効かんが頭なら効くかもな?」
勇は首を絞められ顔が次第に青くなっていく、元郎が血を流しながら壊れた壁から出来くるのを確認した巴は勇を元郎に投げつける、元郎は勇を片手で受け止め地面に下ろす、勇は大きく息を吸い吐き出し何度かむせる。
まじで…苦しかった、てかあいつ…剣で斬ったとこ全部治ってるし、どうなってんだよ…まじで勝てないな…あれ。
巴はどこから取ったのか大きな木の柱を左手に持ち、勇と元郎にゆっくりと近づいていく、元郎は血を口から吐き捨て少し笑みを浮かべ、巴との距離を詰める、巴は手に持っている柱を軽々と振り回し元郎に攻撃するが、元郎は上手くかわし巴の横腹を斬りかかるが、刀が巴の体に当たるとキィーンと音を鳴らし巴の皮膚だけを斬り裂く、元郎は小さく「なまくらめ」と悪態をつき巴との距離を取ろうとすると巴に掴まれ投げ飛ばされる、勇は巴の投げ飛ばす隙を狙って背後をとり大きく斬りつけるが距離を取る前に後ろ蹴りをくらい後方に飛ばされ地面を転げる、勇はすぐさま立ち上がり巴がいた場所を見ると巴はその場所にはおらず、平屋を破壊して何かを探していた、平屋の住人が包丁を持ち巴に向かって喚いており、巴に包丁を突き刺すが包丁は砕け、住人は巴に軽く叩かれ気絶する。
痛い…けど後ろ蹴りに気づけて良かった、気づけてなかったらこんなもんじゃなかたよな…、てかあいつ何してんだよ…何か探してんのか?、あの人…可哀想だな…死んではなさそうだけど、あの人には悪いけど動けそうにないな。
勇は座り込み呼吸を整え体の回復をしていると、元郎が勇の横に立ち息を乱しながら話す。
「はぁ…はぁ…あの巴とか言う奴、何しとんぞ?、はぁ〜…まぁええ…今の間に少し休むか…」
二人は体を休めていると巴が半壊した平屋から出てくる、手には大きな樽酒を持ち豪快に飲み、二人の方に歩いてくる。
あぁあいつ酒探してたのか…どんだけ好きなんだよ、俺達じゃ相手にはならないけど戦ってんだけどな…。
元郎が「行くぞ!!、ユウ」と言い、巴に近づくために走り出す、勇は呼吸を整え構えをとり、強く地面を蹴り巴に急接近する、巴は酒を飲むことに夢中で勇の接近に気づかず腹を大きく斬り裂かれる、元郎が勇に追いつき勇の肩を足場にして高く飛び上がり、巴の目に向けて刀を突き刺そうとするが、巴はそれを軽く避け、元郎の足を掴み振り回した後に地面に叩きつける、勇は元郎が地面に叩きつけられた隙を狙い巴の首を狙って斬りかかるが、巴はそれにいち早く気づき自身の腕を使い首の攻撃を防ぎ、勇を掴み元郎と同じ様に地面に叩きつける、勇は地面に叩きつけられる前に受け身を取りダメージを抑えるが、痛さで少し声を漏らし、すぐに立ち上がる、巴は追撃をすることなく酒を飲む、それを見た勇と元郎は再び体を休め、少し休めていると一人の男性?が巴に近づく、勇は直感でその男性?が人ではない何かだと気づく、男性?は巴に話しかける。
「巴…何をしている?、そいつらはなんだ?…」
巴は楽しそうに答える。
「竹期の元郎がいたからの、遊んでたんじゃ、頭も殺るかの?」
頭と呼ばれた男性?は冷たく「早く終わらせろ」と言い立ち去ろうとすると、頭と呼ばれた男性?は立ち止まり勇を見て声色を変え話す。
「いや待て…巴、あの光ってる剣を持っている男は俺が殺る」
巴は少し驚き返事をする。
「なんじゃ以外じゃの…、そうかあの小僧が勇者とか言うやつなんか?」
頭と呼ばれた男性?は巴の質問を無視して勇にゆっくりと近づいていく。
おいおいまじかよ…何で増えるんだよ、まずい…やばい…あの巴とか言うやつはめちゃくちゃ手を抜いて戦ってたから死ななかったけど、こいつは絶対に殺すきだろ、取り敢えず時間稼ぎだ…話しかけるか?。
「なぁあんたなにもんだよ…、魔王軍の人とか?、名前とか教えてくれない…」
頭と呼ばれた男性?は立ち止まり話す。
「聞いてた話とは違うな…、お前はあまり喋らないと聞いたが…、名前か…まぁいいだろ」
頭と呼ばれた男性?は笠を外しながらゆっくりと名乗っていく。
「魔王軍…幹部…六装の…クロドト、一つ質問だ…お前はユウ シンドウだな?」
クロドト…あぁ前に聞いたことあるぞ、以前戦った魔物が言っていた…、やっぱり人じゃなかったか…てか魔王軍幹部?!!、やばいな…こいつ俺がユウ シンドウだと知ってて確認してきてるな、多分変にごまかしても意味がないな…だったら。
「あぁユウ シンドウで間違いないよ、まさか魔王軍の幹部とこんなとこで会うなんて」
クロドトは冷たい声で言葉を返す。
「運の尽きだな…ユウ、お前が使うその光は危険だ、だからこそ俺の手で殺してやろう」
クロドトは指笛を鳴らし、鳴らした瞬間クロドトの後ろに魔物と思われる人が3人現れ、クロドトに武器を渡す、クロドトは六本の腕を伸ばし武器を手に取り構える、勇は苦笑いを浮かべ構える、クロドトが勇に接近しようとした瞬間、巴がクロドトに向かって話す。
「頭…上物じゃ、おぉこの感じは剣聖の類いじゃ」
クロドトはそれを聞き巴が向いている方を見る、勇も釣られるようにそちらに視線を向けると、丸吉がこちらに向けて歩いてきていた、その後ろにアン グオン ティラスそして何人かの侍達がいた、巴は笑みを浮かべ勇達と戦っていた時とは段違いな速度で丸吉に近づき大きく振りかぶり殴りかかる、巴の攻撃が丸吉の鼻先に近づいた瞬間、攻撃を行った巴の腕が内側から切れ中を舞う、巴は飛び上がり空中で切られた腕を手に取り、豪快に着地をして切られた腕を合わせ治す、巴は嬉しそうに話す。
「すごいの…流石は剣聖じゃ、理解できぬ攻撃じゃ」
丸吉は笑みを浮かべ言葉を返す。
「残念だが俺は剣聖の姓は持っていない、貰うにはあまりにも時間がなくてな」
丸吉はそう言うと咳をする、丸吉は続けて話す。
「これが俺の最後の戦になる…、俺を楽しませろよ龍の子」
巴は大きく笑みを浮かべ「当たり前じゃ」と強く言葉を返し、丸吉に接近する、二人は戦いながら勇達がいる場所から大きく離れていき、クロドトは後ろにいる魔物と思われる人達に何かを伝え、魔物と思われる人達は頷き、丸吉と巴の方に向かっていく、クロドトは小さく「青く…閉ざされ開かれた門よ、我が同胞を招き…導かん」と呟くとクロドトの後ろの空間が割れていき黒い穴ができ、その穴から数体の魔獣が出てくる。
は??!…な何あの穴?、何か魔獣が出てきてるし…そんなのありかよ、ままぁあの巴とか言うやつがいなくなっただけいいのか…いややばい状況には変わりないか。
クロドトは侍達の方を指差し、魔獣達は声を上げ侍達の方に向かっていく、元郎が勇の隣に立ち話す。
「あの化け物共は俺らの仲間がなんとかする、今はあのクロドトに集中するぞ」
勇は頷き、元郎はクロドトとの距離を詰める、勇も同じ様にクロドトとの距離を詰めていく、クロドトは近づいてきた元郎にさらに接近して二本の左手に持った斧と剣を巧みに使い攻撃をする、元郎は斧の攻撃を避け剣の攻撃をしっかりと刀で受け止め弾き返す、そのタイミングで勇がクロドトの背後から斬りかかるが、右手に持っている剣でたやすく止められ力で弾かれる、クロドトは右手に持っている斧を元郎に向けて素早く振り下ろし、左手に持ってる斧を勇に向けて横に振り、「インパクト」と呟く、勇は横に振られた斧をかがんで避け、元郎は刀を使い受け止めた瞬間、斧が微かに黒く光凄まじい衝撃が二人を襲う、勇は横に大きく吹き飛ばされ地面を転げ、元郎は凄まじい衝撃を受け止め地面が少し砕ける、元郎はクロドトの前蹴りをくらい後方に転げ、クロドトは右手に持っている石弓の様な物を勇に向けて矢を放つ、勇は魔力を読み放たれた矢を避けすぐに立ち上がり、クロドトとの距離を詰め左手を前に出し「拡散しろ」と呟く、クロドトはすぐさま守りを固め光に備える、勇の目の前が一瞬とてつもない光が発生し、勇はクロドトに斬りかかろうとするが寸前で魔力を読みクロドトの攻撃に気づき、攻撃を瞬時にやめ、後ろに下がりクロドトの攻撃を避ける。
あっぶな…こいつ俺の魔術の事知ってたな、効いてはいるけど効果が薄いな、魔術はいざという時に使うか、てか魔力読めて良かった。
元郎がすかさずクロドトの横腹を斬り裂き、首を狙い突き刺そうとするが、クロドトはそれを避け二本の剣で反撃する、勇は元郎とクロドトとの間に入り一本の剣を受け止めそれを流す、元郎はもう一本の剣を受け止め弾き返す、勇と元郎は強く踏み込みクロドトの心臓を狙い突き刺すが、クロドトは剣と刀が心臓に突き刺さる前に「青く…魔の導きよ、我を導け」その様に唱え姿が消え、先程までいた場所の少し後ろに現れる。
やっぱり…魔術だよな…、魔物も使えるのか、てか瞬間移動とかずるくない?、けどあいつさっきより明らかに疲れた顔してんな、流石に瞬間移動の魔術は魔力の消耗が激しいのか?…。
クロドトは剣をクロスに構え、二本の剣が微かに黒く光ると剣を空に振る、斬撃が視覚的に見え地面をえぐり割りながら勇に迫る、勇は少し慌てたようにその斬撃を避けるが、クロドトは勇が避けた先に石弓の様な物で矢を放っており、その矢を元郎が手で掴み取る、元郎は矢を少し見た後に片手で矢を折り地面に捨てる、元郎はクロドトに向かって話す。
「見た目通りの化け物か…、切っても治る…良い体ぞ、だがクロドトなぜ避けた?、治るのなら避ける意味はないだろ?」
クロドトは元郎を少しにらみ、元郎はニヤつき「限度があるか?」と呟き、クロドトに向かって走り出す、元郎が走るのを見て勇も走り出す、クロドトは小さく唸り声を漏らし二人がある程度近づいたタイミングで「インパクト」と言い、二本の斧を勢いよく空を振る、二人は強い衝撃が来ると思い武器を地面に刺し衝撃に備えるが何も起きなかった、クロドトは驚き少し動きを止める。
あれ…あのすごいの来ない…、もしかして俺の魔術が関係あるかな?、多分だけどあれって魔力関係の斧…魔器?ってやつだと思う、だったら俺の魔術を当てれば効果がなくなる…宝物庫でやらかしたし。
元郎はさらに勢いをつけクロドトとの距離を詰める、クロドトは二本の剣をクロスに構える、勇はそれを見て声を上げる「元郎さん目をつむって」そう言うと勇は左手を前に出し「炸裂しろ!!」と言い、勇の目の前が光で満たされる、光が収まり元の視界に戻るとクロドトの皮膚が少し崩壊しており、クロドトは剣の力が使えなく困惑の表情を浮かべる、元郎はクロドトの背後に回っており、クロドトの背後から大きく振りかぶり縦に斬りかかる、クロドトはそれに気づき右腕と左腕を使いそれを止めようとするが、そのまま切断され背中を大きく斬り裂かれる、勇がクロドトの目の前に現れ再び心臓めがけて突き刺そうとするが、クロドトは笑みを見せ「青い…青い、我らが主よ、我らを救いたもう」その様に言うとクロドトを中心に青く黒い丸い渦が広がり、勇と元郎を飲み込みすぐにその渦は収まる、勇と元郎はクロドトと少し離れた場所に運ばれ、二人は今にも死にそうな顔を浮かべ地面に這いつくばっていた。
あぁ…これやばぁ…魔力…魔力の塊だ…、こんなに魔力を直に感じたのは初めてだ…、あぁ…気持ち悪い…吐きそう…、早く…体調を…治さないと…やばいぞ…。
クロドトは清々しい顔を浮かべていたが、頭を押さえ「巴が死んだ??!」と言葉をこぼす、クロドトは辺りを見た後に勇を見つけ、息を少し乱しながら近づいていく、グオンが勇の前に立ち勇に話す。
「シンドウ何をしている、早く立ち上げれ俺にはあいつを倒せない」
クロドトはグオンを強くにらみ進み続ける、グオンは無意に一歩後ろに下がるが、首を横に振りクロドトに向けて剣を構える、クロドトはため息をつき石弓の様な物をグオンに向けて矢を放つ、グオンは矢に反応することはできずに腹部に矢が刺さる、続けてクロドトは矢を放ち、グオンの左肩に刺さる、クロドトは再び矢を放とうとしたタイミングで元郎がクロドトの背後から攻撃をする、クロドトはそれを避け反撃をする、元郎は避けようとするが、少し足がふらつき避けるのが遅れ軽く顔が切れ出血する、元郎は笑みを浮かべ前に強く踏み込みクロドトとの距離を更に詰める、クロドトは「蛮族共が…」と声を漏らし後ろに下がりながら軽く攻撃を行う。
ふぅ…大分落ち着いてきた…、グオン…矢が刺さってるし、大丈夫か?…いや大丈夫なわけないか…、てか元郎さんやばいな…何であれくらってすぐに動けてるんだろ…、早く俺もいかないと。
グオンは呼吸を早め膝をつき元郎とクロドトを見ていた、勇は立ち上がりグオンに近づき話す。
「グオンありがとう、動ける?取り敢えず安全な場所に…」
勇が話している途中でグオンが話す。
「そう言うのはいい…、早く行けシンドウ!!」
勇は少し頷き、クロドトに向かって走る、元郎とクロドトは攻防を続けており、少しクロドトが引き気味で戦っていた、勇はクロドトの背後から斬りかかりクロドトはその攻撃を弾くが代わりに元郎の攻撃をくらう、クロドトはうめき声の様な声を出し力いっぱいに剣と斧を振り回し二人との距離を作る、クロドトは「青く…閉ざされ開かれた門よ、部屋を開きたまえ」と唱え、クロドトの左右に一つ空間が割れ小さな黒い穴ができる、クロドトは斬られた腕が治っており、治った腕を黒い穴に入れ武器を取り出す、勇が左手を前に出し魔術を使おうとするとクロドトはすぐさま石弓の様な物で矢を放ち妨害する、クロドトの出した剣は微かに黒く光その後剣身が火で覆われる、勇がクロドトにすぐに近づき斬りかかるが剣で受け止められ弾き返される、クロドトは勇に追撃をするために前に踏み込み勇に攻撃をしようとすると、鋭い風の斬撃がクロドトを襲い少しよろめく、勇はすぐさまクロドトの左腕を狙い斬り上げクロドトの左腕一本を切断する、クロドトは鋭い風の斬撃が来た方を向きアンを見てにらみつけ石弓の様な物で矢を放つ、グオンが体を使い矢を代わりに受け、元郎がクロドトの背中を刺し斬り裂く、クロドトは二人から距離を取るが勇がすぐさま距離を詰め懐にもぐりこみクロドトの右腕を切断する、クロドトはうめき声を漏らし、左手に持っている剣で勇に斬りかかるが、勇はそれを受け止め大きく弾き飛ばす、すかさずクロドトは右手に持っている剣で勇に斬りかかるがティラスが木の板で剣を受け止め体でそれを止める、勇は剣を突き立てクロドトの心臓に刺そうとするがクロドトは勇を蹴り後ろに大きく飛ばすが、勇は空中で左手を前に出し「炸裂しろ!!!」と強く言葉を放つ、勇は地面を少し転げすぐさま起き上がる、辺りは大きく光で満たされ次第に元に戻っていく、元郎がティラスを踏み台にして飛び上がりクロドトの首を切断する、クロドトの頭が中を舞クロドトは小さく「青く…閉ざされ開かれた門よ、我が部位を導きたまえ」と呟く、クロドトは少し笑みを浮かべ顔が地面に転げる、クロドトの体は力を失い地面に豪快に倒れる。
よし…首を斬った、俺の魔術で再生も封じている…詰みだクロドト、ただ何か違和感がある…いや気のせいだ、俺達は勝った…後は魔獣だけ…。
勇がその様に考えていると左脇下に強い痛みを感じる、勇が痛みに目線を向けると左脇下辺りの空間に黒い穴が空いており、そこから短剣を持ったクロドトの手が出ており、深く勇の左脇下を短剣で突き刺していた。
いっ…は?、そんなのありかよ…けどこれぐらいじゃまだ死なない、取り敢えず抜けないように押さえて…。
勇はありえないほどの激痛が刺された場所を中心に広がる、勇はそれが毒だと直感で気づくが、あまりの激痛に膝をつき倒れ、悲鳴の様な唸り声の様な声を上げ、意識が次第にぼやけていく、アンがすぐに勇の異変に気づき近づき治療を開始するがあらゆる治療行為が意味をなさず、勇は死にゆく意識の中アンの「ユウは絶対に、死なないから」と言う言葉を聞きながら、死んでいく。
意識が戻ると勇は暗く明るく永遠に続くような広い空間にいた、勇はさっきまで感じていた痛みや苦痛などは一切なく、それどころか感情が薄れているのを感じる、そしてそれが心地よかった、空間の真ん中には光の渦が巻いており、辺りには無限にも思えるほどの光の螺旋が乱立していた、勇が辺りを見ると回りには人の様なものや動物の様なものそしてドラゴンの様なものまでおり、それらは魂がない抜け殻のようで体は半透明だった、そのもの達はひたすらに中心にある光の渦に向かって歩いていた。
ここは…あぁ…多分だけど…いや俺は死んだのか…、この幽霊みたいな人達は何であの光に向かって歩いてるんだろ?、まぁ聞いても何も言わなそうだな…。
勇は光の渦を見てたそがれていると、後ろから聞き覚えのある声が勇に話しかける。
「ユウ…もう大丈夫だよ、さぁ私の手を持って」
勇は少し驚き振り返るとアンがいた、顔も髪も体も声も口調も雰囲気もアンだった、ただ勇はアンではないことに気づく、ただ一つ目の色だけが違った。
「お前…誰だ!?、何もかも同じだけどアンじゃない」
アン?はほんの少し笑みを浮かべ話す。
「違うよ…けど違わない、さぁ手を取って」
こいつなんなんだ??、あの目の色…金色…、俺をこの世界に転移?させた、少年と一緒の色…それに記憶で見た巨大な何か…。
「お前が俺をこの世界に転移させたのか?、あの時公園で俺に触れて転移させた少年?…」
アン?は笑みを浮かべ話す。
「なんのこと私にはわからない?…わからないか…、君はこの世界に属さないものだ、未知の存在…この世界にいる存在で君を転移させることは誰もできない、ただできる可能性があるのならあれだろう」
アン?は前に視線を向け光の渦を見る、勇はアン?をにらみつけ少し低い声で話す。
「そうかよ…それでなんでお前はアンの姿をしている?、アンは無事なんだろうな」
アン?は少し笑みを浮かべながら答える。
「この姿のほうが君はいいだろ?、それにアンと言うものがこの体を渡した…願いを叶えるために、残念なことにアンと言うものは、もうこの世界には存在しない、あぁ…簡単に言うと死んだんだよ跡形もなく」
は…??こいつ何いってんだよ、アンが死んだ?…死んだのは俺だろ?、はぁ…こいつ本当に何いってんだよ…。
「お前冗談でもそんな事言うなよ…、はぁ…願いって何だよ…、後なんでお前は俺に手を取らせようとする?」
アン?はほんの少し笑みを浮かべ答える。
「冗談か…あちらに戻ればわかることだよ、アンと言うものが望んだ願いは…君の蘇生だよ…、だから早く手を取って」
勇は目をほそめた後にため息をつき手を取り話す。
「最後に一つ…お前は何者だ?いや…名前は?」
アン?はそれを聞き少し雰囲気が変わる、ただ少しなのに人と思えないほどの迫力…恐怖感を感じさせ答える。
「私は君達に始まりにして全て…名をオニムス、私は君の未知を見ているよ」
オニムスがそう言い終えると、勇の視界がぼやけ歪み意識が消える。
勇が意識を戻すと薄れていた感情が戻り、アンが死んだかもしれないと不安にかられ、目を見開き「アン!!」と言葉を放ち起き上がる、勇はむせ激しく咳をした後に息苦しく呼吸をする、勇は辺りを見渡すがアンがいない、回りにいる人達は全員暗い顔を浮かべていた、勇の横の地面にアンの服だけが残っており、勇の右手にはアンにあげた指輪を持っていた、勇が悲しみに満ちた顔を浮かべると、グオンが涙声で強く勇に言葉を放つ。
「何だ!!…その顔は…、アン様は…アンは死んだ!!、お前のせいで…何でお前はまた…俺から大切な人を奪うんだ…」
勇は涙ぐみ情けない顔でグオンを見る、グオンは鼻をすすり涙声で続けて話す。
「お前は生かされた…、もうお前一人の命じゃない…アンに生かされた、その命はお前のじゃない、お前は予言と戦え!!、もしもそれから逃げるなら俺はお前をこ…」
グオンが言葉を言い終える前に元郎がグオンを殴り飛ばし、怒った様に話す。
「ガキが…つらいのはお前だけじゃいぞ、それにアン自身が決めたことぞ、喚き散らすな」
グオンは倒れ込み大きく泣き叫ぶ、勇は黒い気持ちを心に抱え、とてつもない疲労感に襲われる、それでも勇は疲労感よりも黒い気持ちが膨れ上がり、声を大きく上げ、涙を流す、しばらく泣き叫び気絶する。