11話 誰かの記憶 叶う願い
5日ほど経ち勇が暇そうに本を読んでいると、ドアからトントンと音がなる。
ん?誰だろ…アンかな、昨日美味しい食べ物見つけたとか言ってたからな、パン系だったけ。
勇は読んでいた本にしおりを挟み、ドアの方に向かいドアを開ける、目の前に立っていたのは案内役のティラスだった、ティラスはおどおどしながらも丁寧に勇に向かって話す。
「ああの…勇者様、突然伺ってごめんなさい、イソルク様さら勇者様をノウム王城に連れて行くように言われましたので、何か予定はありますか?」
かなり急だな、まぁ予定とかはないけど、勇者様って恥ずかしいな…。
「予定はないよ、あと勇者様じゃなくてユウでいいから」
ティラスが言葉を返す。
「わかりました…ユウ…様、では向かいましょう」
勇は「様はいらないよ」と言い、ティラスは少し驚いた顔を浮かべ頷く、そして二人はノウム王城に向う。
やっぱりいつ見てもデカいな、てか何で俺呼ばれたんだろ…、あぁ出発するようにとかかな?、ティラスは俺が何で呼ばれたか知らない感じなんだよな、一応聞いてみるか?。
勇がその様に考えていると、ティラスが「ホルシアラ家…」そう呟き顔色が少し悪くなる。
ん?ホルシアラ家?、それにティラス顔色が悪くなったな、どうしたんだろ。
ティラスが勇に小さく話す。
「ユウさん…すいません、ここまででいいですか?」
やっぱり様子が変だ…、会ったばっかりだけどティラスは途中で投げ出す感じじゃないよな…、まぁあまり踏み込まないほうが良さそうな感じだな…。
「ありがとう、一人でも大丈夫だよ」
勇がそう言うと、ティラスは深く頭を下げその場を離れる、勇はティラスを見届けた後にノウム王城の中に入る、中に入るとアキヘスが待っており勇を案内する。
またアキヘスさんだ、俺の担当だったりするのかな?、てかティラスに聞きそびれたけど俺何で呼ばれたんだ?。
「あのアキヘスさん、俺何でここに呼ばれたんですか?」
アキヘスは質問に答える。
「国王陛下がユウ様に何か渡したいそうで、宝物庫にあるものをなんでもいいので持っていくようにと」
なんでもいいって…ラルグスさん適当だな…、ほんとになんでもいいのかな?。
「ラルグスさ…ラルグス王も来るんですか?、それとほんとになんでも?」
アキヘスが答える。
「国王陛下は多忙な方なので来れません、国王陛下はなんでも何個でもと言っていましたよ」
来れません…か、やっぱりラルグスさん忙しんだな、てかなんでも何個でもっていいのかな、まぁ流石に1つぐらいにしておこう。
二人は下に降りていき、頑丈そうな扉の前につく、アキヘスはポケットから鍵を取り出し、頑丈そうな扉の鍵穴に差し込む、すると頑丈そうな扉はガシャガシャっと音を鳴らし着々と開いていく、開いた扉の部屋は明るく灯されており、数人その部屋にいた。
すげー扉が自動で動いた、てか宝物庫広いな、それにめちゃくちゃ綺麗に並べられてるし。
勇があっけにとられていると、部屋にいた一人の人が勇に話しかける。
「ユウ様ようこそいらっしゃいました、この宝物庫には旅に役に立つものが数多くあります、何か聞きたいことがありましたら、この宝物庫にいる人に聞いてください」
勇は「わかりました」と返事を返し、宝物庫を歩き回る、しばらく見て回り一本の剣に目が行く。
何だあの剣…何かすごいな、見た目は普通って感じだけど、この宝物庫にあるもので一番惹きつけられる…、手に取ってみよ。
勇はウキウキしながら剣に手をかける、その瞬間辺りがとても強い光で満たされる、そして勇は頭に記憶が流れ込む。
……………
巨大な何かは少女に話しかけている。
『風の子よ、なぜ泣いている?』
少女はそれが魔獣だと思い体を震わす。
『私美味しくないよ、だから食べないで…』
巨大な何かは再び少女に話しかけるている。
『食べる…そんなもの我には必要ない』
巨大な何かは金色の瞳を少女に強く向ける、そして続けて話す。
『風の子よ、そんなにも魔獣というものが怖いのか』
少女は体を震わせながら深く頷く、巨大な何かは手と思われる何かを少女の前に置き続けて話す。
『退屈しのぎに鍛えたものだが、くれてやろう』
巨大な何かはそう言うと少女の前に一本の剣を落とす、少女はそれに手をかけ、剣から強い光が出る、それを見た少女は剣を優しく抱え呟く。
『本で見た…ルミナス様の光…』
巨大な何かはその言葉に反応して話す。
『ルミナス…風の子よ、それを使えば多少は恐怖をしのげるだろう』
少女は涙を手で拭き、上を向き巨大な何かは見た後に話す。
『ありがとう、優しい魔獣さん』
……………
光が次第に弱まっていき、宝物庫は次第に暗くなっていく。
何だ…今の、あの金色の瞳…見たことある…、それにあの巨大な何か…魔獣とは思えなかった…もっと…何か…その…。
勇が混乱していると宝物庫の光は完全になくなり、辺りが真っ暗になっていた、少しして明かりが点々とつき始める、宝物庫にいた一人が明かりを持ち勇に近づき話しかける。
「確かここらへんから…、あ!!ユウ様大丈夫ですか?」
勇は息を乱しながら手を少し上げ、自身が無事なことを伝える、続けて明かりを持った人が話す。
「ユウ様ここあたりでさっきの光が発生したと思われるのですが、何か見たりしてませんか?」
絶対この剣だ…、やっちゃったな…調子に乗って不用意に触ったせいでこうなったからな。
「すみません、俺がこの剣に触れたら、剣から光が発生して、俺のせいです」
勇がそう言うと明かりを持った人は驚いた顔を浮かべ言葉を返す。
「ユウ様が触ったら光が出たんですか!?」
勇が頷くと続けて明かりを持った人が話す。
「やはりユウ様は選ばれた人なのですね…、その剣は聖剣ルミナスと言い、その剣に選ばれない限り力を使うことは出来ないと聞いています」
聖剣ルミナス…ルミナスか、あの短い記憶に出てきた言葉、剣に選ばれないと力を使えない…もしかしたらあの記憶はこの剣が見せたものなんじゃ…、いや流石にないか、てか選ばれた人って…ん~恥ずかしいな。
明かりを持った人は思い出したように話す。
「ユウ様ひとまずアキヘス様と共に宝物庫の外に行ってください、その剣はユウ様がお持ちください」
勇は頷き、宝物庫の入口に案内されアキヘスと合流して上にあがっていく、そして流れるように勇は剣の鞘を渡され、体を測られ、ラルグスと話した時に食べたお菓子を渡され、アキヘスに泊まっている家に送られた、勇はゆっくりと聖剣ルミナスに触れる。
何も起きないか…、光が出ることもないしあの記憶の続きを見ることもできない、あの人は俺がこの剣に選ばれたとは言ってたけど、ここまで何も起きないと本当に選ばれたのか、と言う疑問が浮かぶな…、はぁ取り敢えず今日はもう寝よう、何か体がだるいし。
優しい少女の声がかすかに聞こえる。
「ユーウ…早く起きないとイタズラしちゃうよ」
その様に聞こえてしばらくすると勇の顔に水がかかる、勇は一瞬にして眠りから覚め勢いよくベッドから飛び上がる。
「うあーー何だ…、何だよグオンかよ、何で水かけてまで起こすんだよ」
勇がその様に言うとグオンはそれに答える。
「お前がアン様の約束をすっぽかしていつまでも寝ているからだ」
アンとの約束?…、はぁそうだった前に雷労祭を一緒に見て回るって約束してたな、てか俺そんなに寝てたのか?。
「ありがとうグオン、取り敢えず急いで出かける準備をするから…そうだアンどこにいる?」
グオンは目を細め「アン様なら隣の部屋にいる…」と話していると、勢いよく扉が開き、二人の少女が声を上げる。
「ユウ大丈夫?、大きな声上げてたけど?」「ユウ様大丈夫ですか?、何か大きな声が聞こえて来ましたけど…」
アンと…ミリスさん?、何でミリスさんがここにいるんだ?。
ミリスが目を見開き嬉しそうで恥ずかしそうな声で話す。
「ごめんなさい、なにか拭くものを…」
アンがタオルを勇に渡し話す。
「ごめんユウ…、待ってるから」
アンがそう言うとミリスを連れて部屋から出ていく。
ん?…いったい今のは何だったんだ?、何か二人とも顔赤かったし…?、まぁ待ってるって言ってたから急いで出かける準備をしないとな。
勇は濡れた体をタオルで拭き、服を着替えているとグオンが小さく「たらしめ」と勇に向かって言葉をはき、部屋を出て行く。
ん?グオン何か言ったか…っていないし、まぁ気のせいか。
勇は服を着替え3人がいる部屋に向う、勇はミリスに話しかける。
「ミリスさんはどうしてこの家に?、何か緊急の用事があったりしますか?」
ミリスは答える。
「ユウ様の許可なくこの家に入ってすいません、特に緊急の用事はありません、ただ私が国騎士様方にわがままを言い、この家に来たのです」
ミリスがその様に言うとアンが話し始める。
「ミリスもユウと雷労祭に行きたくてここに来たんだって、だから一緒にいかない?」
なるほど雷労祭に行きたかったのか、てかどうやってこの家に入ったんだろ?、鍵はちゃんとかけてたよな…。
「皆はどうやってこの家に入ってきたの、鍵かけてたと思うんだけど?」
アンが目をそらし、ミリスが答える。
「私が訪れたときにはすでにお二人がいましたよ」
グオンが小さく「魔術で侵入した」と答える。
ん?今魔術で侵入したって言ったよな…、グオンは魔術を使えないから…アンか。
勇がアンを見つめる、少し見つめているとアンが少し口を尖らせ話し始める。
「確かに私が魔術を使って鍵を開けたけど、元はと言えばユウが約束の場所に来なかったから、仕方なくだったんだよ」
アンがそう言うとグオンが後ろで小さく首を横にふる。
魔術で開けたか…、まぁ確かに約束を忘れていた俺が悪いよな、けど何か喜んでやったのが目に浮かぶような…。
「アン別に俺は怒ってないし攻めてないから、それよりミリスさん雷労祭に行きたいって本当ですか?」
勇がそう言うとミリスは答える。
「はい本当です、ご一緒してもいいでしょうか?、それと私にさんは必要ないですよユウ様」
勇は返事を返す。
「わかったよミリス、じゃあ俺も様は必要ないから、それじゃ一緒に行こうミリス」
ミリスはにこやかな顔で「ありがとうございます、ユウ」と言うと、アンが勇をジト目で見つめる。
何かアンが俺を見ているような…、なぜかわからないが見つめ返しては行けないような、ままぁ雷労祭楽しみだな…ハハハ。
「すごいデカいなあのドラゴン?、てか何で皆あのドラゴン?の口にめがけて物を投げてるんだ?」
勇がその様に呟くとミリスが答える。
「あの大きな竜の模型は初代国王を竜に見立てたものだと聞いています、口に投げ込んでいるものは小さな竜の模型です、それと願い事を込めて投げ込むと願いが叶うと聞いています」
初代国王を竜に見立てるか…、普通に人の姿じゃ駄目だったのかな、それにしてもみんな楽しそうだな。
「ミリスも何か願い事を込めて投げるの?、俺も投げ込みたいな、どこで売ってるんだろ?」
ミリスがにんまりとした顔を浮かべ答える。
「私の願いは今こうして叶っています、ですがもう一つ叶えたい願いがあるので投げたいです、小さな竜の模型はどこで買えるのでしょうか?」
勇はミリスと会話をしていると勇の後から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「勇者!!!!、何とまさかこのようなとこで会えるとは、まさに運命、ガハハハ」
うわぁ…マースのおっさんだ、ホントに何でこんなところで会うんだよ。
「マースのおっさん、元気そうで良かったよ、それと勇者って呼び方やめてほしんだけど…」
勇が話し終える前にマースが話し始める。
「勇者よアンとグオンはどうした、一緒じゃないのか?、そうだ!勇者よ知っているか、あの大きな竜の模型に小さな竜の模型を入れるのは、遥か昔にあったとされる人と竜との戦争を表して…」
マースが話している途中でアンとグオンの姿が見え、勇が大きな声で二人を呼ぶ。
「おーいこっちこっち、美味しそうなご飯見つかった?」
ふぅ…助かった、またマースのおっさんの長い話が続くとこだった、てかマースのおっさん酔ってんな。
アンがマースに気づき話しかける。
「マースさん、久しぶり右手の痛みは引いた?、あと胃は大丈夫、お酒飲み過ぎてないよね?」
マースは痛いとこをつかれた表情を見せ答える。
「右手の痛みはお主のお陰ですっかり良くなった、酒だか…まぁ何だ…んー」
マースが何か思いついたのか、自身の懐から袋を取り出し、アンに渡し話す。
「受け取れアンよ、右手の礼だ、では俺これで元気でな、ハハハー」
マースのおっさん逃げたな、酒めっちゃ飲んだんだろうな…、てかマースのおっさんなら小さな竜の模型の売ってる場所知ってたかもしれないな…、まぁいっか。
4人は近くの座れる場所に座り、アンとグオンが買ってきた食べ物を食べる、食べ終えるとアンが小さな竜の模型の事を話す。
「そうだ、食べ物を探していたときに、二人が探してた小さな竜の模型をいっぱい売ってた屋台を見たよ」
勇が言葉を返す。
「じゃあ皆で買いに行かない?、アン案内よろしく」
アンは「ふぅんん、任せて」と自慢げな表情を浮かべ答える。
4人は迷うことなく小さな竜の模型を売っている屋台に行くことができ、4人分小さな竜の模型を購入する、辺りは少し暗くなり始めており、魔力の光が灯り始める、4人は他愛も無い話をしながら大きな竜の模型がある広場を目指し歩く。
人多いな…てか皆とはぐれちゃったし、まぁ探してたら時間かかりそうだし一人で投げ込むか。
勇は人の間をすり抜けながら上手く歩き、小さな竜の模型を大きな竜の模型の口に向かって投げ込める場所にたどり着く。
ふぅ意外と楽に行けたな、ここは人が少ないな、あそこにいる人達は投げ込んだあとの人たちなのかな?。
勇が大きな竜の模型の口に小さな竜の模型を投げ込もうとすると、後ろからアンに話しかけられる。
「ここ人少ないね、ユウ皆と一緒じゃないの?」
勇は投げ入れるのをやめ振り返り言葉を返す。
「一緒じゃないよ俺もはぐれたから、少ないよねここ、皆を待ってたら時間かかりそうだから、先に入れよアン」
アンは頷き勇に近づき、勇の横に立つそして手に持っている小さな竜の模型を自身の胸に近づけ目を閉じ願いを込める。
あ…そういや願いを込めないといけないんだっけ…特に思いつかないな、まぁ強くなれますようにとかにしようかな。
勇もアンと同じような仕草を行い、小さな竜の模型に願いを込め、大きな竜の模型の口に投げ込む。
これでいいのかな…、アンまだ願ってるな、そんなに叶えたい願いなのかな…。
勇がアンを少し見ていると願いを込め終え、小さな竜の模型を大きな竜の模型の口に投げ込む、勇がアンに話しかける。
「結構願いを込めてたけど、そんなに叶えたい願いだったの…気になるな」
アンは可憐な笑みを見せ答える。
「うん…絶対に叶えたい願いなんだ、だから念入りにね、内容は秘密だよ」
勇は「あぁ」と小さく声を漏らし、二人は他愛も無い話をしながらグオンとミリスを待った、しばらくしてミリスが到着し、二人と同じように投げ込む、そして二人がいる場所に行き会話に入る、さらにしばらくしてグオンが到着する、グオンも同じように願いを少し長く込め投げ入れる、3人はグオンの方に行き、歩きながら他愛も無い話する、しばらく4人は話し各々の家 宿に帰る、勇が家に入ると、中は明るく灯されておりテーブルに手紙が置いてあった、勇はそれを手に取り読み始める。
ティラスからか…えーと…なるど、やっと出発できるのか、えーと…3日後にノウム王城に行くのか…、またノウム王城か…まぁ今回はアンとグオンも連れて行くみたいだけど、旅に必要なものは全部負担してくれるのか、よしそろそろ気合い入れ直さないとな、この国安全過ぎて緩むんだよな、鍛練も少し怠ってたし詰めないとな、強くなりたいし、まぁ今日はもう寝よう明日早く起きて剣の鍛練だ。
勇はベッドに行き、寝転がり深く目を閉じ眠りについた。