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異界人の魔法学校転生記  作者: 人でなし
Ø 入学式
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Ø-3 入学式

 次の日、私は入学式が行われるという講堂に向かっていた。このスティリアとかいう魔法学校、だだっ広い。東京ドーム何個分? とかそういうレベルだ。


「マリーさん……じゃなくて、マリー先生に道教えてもらったけど、これ普段の授業で絶対迷うじゃん。マップとか置いて欲しい」


 私の頭の傷は完治したようで、短い間だったが医務室とはお別れになった。「また何かあったら来てね」とマリー先生は優しく言ってくれたが、ベルは明らかに私を威嚇していた。ごめんて。

 ようやく講堂に着くと、既に大勢の生徒が座っていた。動物の耳が生えていたり、魚のヒレがあったり、姿は様々だ。こういうところを見ると、本当に異世界に来たのだと実感する。

 奥にはステージがあり、多分先生達が並んでいる。気さくに手を振っていたり、咳払いをしたり、個性豊かだ。


「はーい、新入生は前の椅子に座ってねー! そろそろ始まるよー!」


 上級生と思わしき生徒が新入生を誘導している。『生徒会』と書かれた腕章を着けていて、新入生は彼らをキラキラした目で見つめていた。生徒会が憧れ、というのはどの世界でも同じみたいだ。

 

「やっば、本当にここスティリアなんだね。嬉し過ぎて死んじゃいそう」

「本当にね。今年の生徒会長あの人だし、勉強頑張って良かったな〜」


 周りの会話を聞き流しながら席に座ると、新入生が全員講堂に入ったらしく、バタンとドアが閉まる音が聞こえた。それと同時に、今までざわめいていた生徒たちが一斉に静かになる。教師の一人が前に出て、咳払いをした。


「入学おめでとう、新入生諸君! 魔法学校の名門、スティリアへようこそ! 我々は君たちを心から歓迎しよう!」


 マイクも無いのに教師の声が大音量で聞こえ、思わず目を見開いてしまった。小さなマイク、もしくはスピーカーに代わる魔法を使っているのだろうか。


「まずはスティリアの校長、トーイフィール先生の話だ。先生、お願いします」


 教師が後ろに戻ると、代わりにヨボヨボの男性が出て来た。彼が歩く度に杖が地面に当たる音がする。頭には魚のヒレのようなものが付いている。多分彼の種族は魚人族(フィッシャー)だ。


「新入生諸君、入学おめでとう!」


 そんな死にかけとしか思えないおじいちゃんから先ほどの教師の数十倍の声が聞こえ、思わず耳を塞いだ。鼓膜破れるかと思った。


「魔法とは、この世界の全てじゃ。火、水、雷、土、風、光、闇、至るところに魔法は息づいておる。我々はその力を使い生活している。魔法なしに我々は生きられない。君たちが常に魔法へ敬意を払い、畏れ、楽しむことが出来る魔法使いになることを祈っておるぞ」


 そう言うと、トーイフィール先生はまたよぼよぼとした足取りで戻っていった。

 私はへー、なんか良い話っぽいなと思っただけだったが、周りは違った。感嘆の息を吐いたり、涙したりとトーイフィール先生を敬っていることが分かる。魔法学校の校長という立場に居るのだから、かなり有名な魔法使いなのかもしれない。


「トーイフィール先生、ありがとうございました。では次に、在校生代表挨拶、アルケレミス君お願いします」

「フハハハハハハ、ようやく僕の番か! 待ちくたびれてせっかくセットした髪がニミリほど崩れてしまったよ!」


 司会に被せる勢いで後ろから出てきたのは、金髪の男子生徒だ。在校生ということは先輩なのだろうが、なんというか、めちゃくちゃ癖が強そうだ。

 彼が出てきた途端、新入生、主に女子生徒から歓声が上がった。さながらアイドルのライブのようだ。状況を掴めずに戸惑う私の方が逆に浮いているかもしれない。


「僕は五年生にしてこのスティリアの生徒会長を務めているジン・アルケレミスだ! 新入生諸君、歓迎してやろう!」


 なんと、あの男子生徒が生徒会長らしい。めちゃくちゃ偉そうだが、真っ赤な瞳には揺るぎない光がある。なんというか、逆らえないカリスマ性を持っている気がする。

 ジンはポーズを取りながら新入生に向かって手を差し出した。


「このスティリアへの入学を叶えた己の努力を、そしてこの僕と同じ年代に共に学べることを誇りに思うが良い! 魔法使いたるもの、誇りを忘れてはならない! 己の誇りのために戦える魔法使いになれることを僕は願っているぞ。フハハハハハハ!」


 ジンは高笑いして後ろへ戻って行った。物凄く濃い先輩だが、なんとなくかっこいいことを言っている、くらいは私にも分かった。というか、さっきの校長先生といい生徒会長といい、声でかくないと駄目なの?

 

「次に、新入生代表挨拶、アルクリス君お願いします」

「……はい」


 新入生の席から男子生徒が立ち上がり、壇上へと向かう。途端、女子生徒の目がハートになった。疑問に思ったが、彼がこちらを向き、腑に落ちた。

 金髪碧眼で眼鏡をかけていて、まるで人形みたいに綺麗な子なのだ。異様に耳が尖っているので、妖精族(エルフ)の男の子なのだろう。


「……新入生代表、テオンハルト・アルクリス」


 どこか物憂げな様子で話し始める。すると、視界の端で女の子たちが録音機やカメラのような物を出し……え? 嘘でしょ? 

 と思ったら、それらがふわりと浮かび、先生のところへ飛んで行った。どうやら没収されたらしく、女の子たちは悔し涙を浮かべていた。怖いってこの学校。


「……以上です。ありがとうございました」


 前世だったら逮捕されそうな行為に愕然としているうちに、代表挨拶が終わってしまった。ちゃんと聞かなくてごめんね。

 彼が壇上から降りる寸前、ほんの一瞬だけ目が合った気がした。


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