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No Name's Dynasty  作者: 大道福丸
第二部
71/163

因果応報

「――!!気配が、ケチャの不愉快な気配が消えた!!」

「何!?」

 キトロンがそう叫ぶと、ジョーダン達は一斉にマッドシザーズの群れの奥に視線を向けた。

「ここからだとよくわからないな……」

「ですね……あっ!でも、あのやたらと目立つ親衛隊みたいな盾持ちがいなくなってません?」

「……だな」

「隊列に乱れはない……もしかして、敵さんも大将がいなくなったことに気づいておらぬのか?」

「そうっぽいな……」

「何にせよ、我が軍も限界が近いです。仕掛けるなら、今しかないかと……」

 ラクは視線で決断を下せと訴えて来た。

 兄弟子にして、今この軍を指揮しているジョーダンの答えは……。

「よし……キトロンの感知能力を信じよう!ボク達特級使い三人で一気呵成に攻め立てる!フルスロットルで行くよ!!」

「はい!!」「おう!!」

 三人は今装着している骸装機を脱いだ。そして……。

「導いてくれ……麒麟!!」

 ラクのイヤリングが!

「裁け!狴犴!!」

 セイの懐から出した札が!

「嵐を……今回は止めに行こうか!応龍弐式!!」

 ジョーダンの眼鏡が輝きを放ち、各々の最強戦力が降臨する。

 満を持して姿を現した黄金の龍がまずその青い眼を向けたのは、紫の獣であった。

「玄羽さん!申し訳ないですけど、ケチャが健在の可能性もあります」

「わかっておる。わしはここで待機して、お主らがおかしくなったら兵士たちを撤退させればいいんだろ?そういうのはキャラじゃないんだが、致し方ない……やってやるよ」

「さすが拳聖!話が早くて助かる!!」

 もしもの時の動きを確認した応龍は若干、いやかなり不服そうにしている闘豹牙に背を向け、今にも飛び出して行きそうな狴犴と麒麟に目配せする。

「セイ、ラク!」

「わかってる。ジジイと同じくオレも話がわかる人間だ」

「付き合いが長いですからね、兄さんがやりたいことはだいたいわかります」

「そうか……なら!応龍槍!!」

 黄金の龍は槍を召喚するや否や走り出す!そして、棒高跳びの要領で地面に槍を突き刺し、その反動を利用して跳躍する!

「応龍翼!!」

 空中で翼を広げ、その場で待機。これで中継地点が完成だ。

「来い!ラク!!」

 応龍が先ほどまでいた場所を見下ろすと狴犴の戦鎚の上に麒麟が爪先立ちで乗っていた。それはカタパルトだ!

「シュガとジジイの下手な物真似……いや、オレ達の方がうまくできるよな!」

「はい!ぼくを兄さんの下に届けてください、セイくん!!」

「おう!!」


ブゥン!!


 狴犴がその凄まじい膂力で戦鎚を振り上げ、黄色の神獣を撃ち出した!麒麟はぐんぐんと加速して行き、あっという間に応龍の下へ!

「兄さん!」

「よっしゃ!やるぞ!ラク!」

 麒麟はくるりと空中で器用に回転し、足を応龍に向ける。すると兄弟子もまた足を向け、足裏で弟弟子の足裏を受け止めた。

「角度は……」

「問題なし!」

「じゃああとは……」

「タイミングを合わせるだけ!」

「それも兄弟弟子であるボク達なら……」

「問題ありま……せん!!」


ブゥゥゥゥン!!


 これもまたカタパルトだった。応龍と麒麟がタイミングを合わせ、力いっぱい足を伸ばすと、麒麟は先ほど以上のスピードで押し出された。

 彼の向かう場所、それは……敵陣のど真ん中だ!

「ん?なんだ、あれ!?」

「何か落ちてくるぞ!?」

「気づいたところで……もう遅い!!」

 麒麟は矛を召喚!それに溜まりに溜まった鬱憤を伝える。そして!

「金剛戦華!百花繚乱!!」


ドゴオォォォォォォォォォォォン!!


「「「ぐわあぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」

 泥の中に落下すると同時に、麒麟が矛を地面に突き立てると、それを中心に岩の花が咲き誇った!

 その硬く鋭い花弁は装甲自慢のマッドシザーズの身体を砕き、貫く。一撃で隊列は崩壊、慇軍に壊滅的なダメージを与える。

 しかも、その花の役目は敵を打ち倒すためだけではない。

「兄さん!ラクくん!足場が完成しました!」

「あぁ!最高にシャレオツな奴ができたみたいだね!」

 麒麟の呼びかけに応じ、応龍は花弁の上に降り立った。

「少し!肩を!借りさせて!もらうぞ!」

「はい!」「どうぞ!」「お好きに!」

 狴犴も仲間の鉄烏の肩や背中を飛び移りながら、花弁へ。こうして三体の特級骸装機が最前線に踊り出た。

「ここまで来たのに、仕掛けて来ないってことは、マジでケチャは撤退したみたいだね」

「ええ、つまり残る脅威は……」

 灑の三体の特級の視線が慇の二体の特級を捉える。

「追加発注だ、ラク。あの特級コンビに向かう、かつ奴らを分断するウイニングロードを大至急作ってくれ」

「承知しました!」

 兄弟子の期待に応えるため、麒麟は再び、矛を地面に突き刺す!

「金剛剣山!!」


ドゴオォォォォォォォォォォォン!!


「ぐっ!?」「ちっ!?」

 風伯と雨師の間に向かって、地面から真っ直ぐと次々岩が隆起する。発注通り、荒々しい道が多久ヶ原に形成され、狙い通り、特級コンビは左右に分断された。

「さすが!ボクの弟弟子!」

「兄弟子の命は絶対ですから」

「じゃあ、さらにわがまま言わせてもらうよ。ボクとセイが奴らを倒す!その邪魔にならないように鋏付きを頼む!」

「はい!」

 麒麟は反転、まるで門番のように立ち塞がり、こちらの様子を探るマッドシザーズに睨みつける。

「では、参りましょうか、星譚くん……って!先行くなよ!!」

 狴犴はすでに金剛剣山の上をぴょんぴょんと渡り、特級コンビの片割れ、青色の雨師の方に向かっていた。

「こっちに……来るんじゃない!!」


ババババババババババババババッ!!


 雨師が手を翳すと降り注いでいた雨粒が急停止!したかと思ったら、超高速の弾丸となって狴犴に発射された。

「雨粒のマシンガンか。並の骸装機なら、穴だらけになっているところだな。しかし、残念……生憎、狴犴は“並”ではない!!」


バシャ!バシャ!バシャ!バシャ!!


「――なっ!?」

 狴犴は雨粒の弾丸を全て拳ではたき落とす!雨師の攻撃はダメージを与えるどころか、白い獣の足を止めることもできない!

「くっ!!」

 雨師は拳を大きく振り上げる!狴犴にカウンターを決めるために!しかし……。

「モーションが大き過ぎる」


ガァン!!


「――ッ!?」

 対照的なコンパクトな狴犴のパンチが雨師の顔面に炸裂する!端から見ると、軽く小突いたようにしか見えなかったが、雨師のマスクは一撃でひびだらけになってしまった。

「どうやら距離を取って戦うことを想定されたマシンのようだな」

「ぐっ!?」

「だとしたら、この距離に接近された時点で勝負は決まりだ」

「そんなこと……!!」

「雨を降らせるのが得意なようだが、実はオレと狴犴も雨を降らせられるんだぜ」

「何!!?」

「雨は雨でも……血の雨だがな!!」


ガンガンガンガンガンガンガンガン!!


「ぐがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!?」

 狴犴の拳のラッシュが容赦なく雨師に襲いかかる!青色の装甲がボロボロと剥がれ落ち、泥の中に沈んで行く。

「はあぁぁぁっ!!」


ガギィン!!


 そして本体も……。泥に抱かれた雨師が動くことは二度となかった。



「この!!」

 風伯も相棒と同じように黄金の龍に懐に潜り込まれてしまった。それでも必死になんとかしようと、剣を召喚し、龍の脳天に撃ち下ろす!

「甘い!!」


バギィン!!


「ぐっ……!?」

 けれど剣は応龍の裏拳一発で粉々に砕かれてしまう。

「ちいっ!!」

 インファイトでは勝ち目がないと踏んだ風伯は後ろに跳躍、さらに両手のひらに風の渦を生成する。

「まさかキミも竜巻を発射するつもり?」

「そうだと言ったら……!?」

「キャラ被ってるから、消えてもらう!!」

 応龍は翼を展開し、ファンを高速回転させる。そして!

「小龍砲!!」


ブルオォォォォォォッ!!


 二本の竜巻を発射する!

「くっ!!」

 風伯も迎撃しようと両手から同じように竜巻を発射するが……。


ブルオォォォォォォッ!!


「そ、そんな!?うわあぁぁぁぁっ!?」

 応龍の竜巻には敵わず、あっさりと打ち消される!そして竜巻はそのまま本体である風伯も飲み込み、その白い装甲を削り、抉り、砕きながら彼方へと吹き飛ばした。

「キャラは被っていたが、性能は段違いだったようだね。まっ、この天才が精根込めて、作ったマシンなのだから当然か」

 自分の才能に惚れ惚れしながら、応龍は上を向いた。

「発生源を退治したから、そのうち晴れるとは思うけど……こちとらせっかちさんなんでね!!」

 応龍はさらにファンを高速回転させる。自身の最強の必殺技を散々苦しめられた暗雲にぶち込むために!

「食らえ!嵐龍砲!!」


ブルオォォォォォォォォォォォォッ!!


 二本の黄金の竜巻は天に昇る龍のように、上方に!そして分厚い雲を貫き、跡形もなく粉砕した!

 多久ヶ原に久しぶりに太陽の光が差し込む。灑にとっては勝利の、慇にとっては敗北の報せだ!

「空が……晴れただと!?」

「まさか風伯と雨師がやられたのか!?」

「おい!見てみろ!ケチャ様がいないぞ!?」

「そ、そんなあの方達無しで、窮奇を倒した奴らと戦えというのか……」

「無理に決まってんだろ!そんなの!!」

「あぁ、勝敗は決した……撤退だ!撤退!!慇軍は速やかに撤退せよ!!」

 どこからか自然発生した“撤退”の二文字は凄まじいスピードで戦場に波及し、蜘蛛の子を散らすようにマッドシザーズの群れは反転、多久ヶ原から逃走して行った。

「賢明な判断だな」

「追撃しなくていいのか?」

 セイの問いにジョーダンは首を横に振った。

「こちらもかなりの痛手を負っている。これ以上の戦闘続行はやめておいた方がいい」

「まっ、欲をかいて、手痛いしっぺ返しを食らったら、今までの頑張りがパーだからな」

「そうそう。先の戦いで多くの敵兵と窮奇を……」

「今回の戦いで四魔人が一人、狂乱のケチャとその配下の厄介な特級二人を撃破」

「色々あったけど、結果オーライ、なるようになった。この多久ヶ原の戦いはボク達灑の国の勝利だ!!」

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」

 灑の兵達の勝鬨が多久ヶ原に響き渡った!激闘に次ぐ激闘の末に遂に勝利をその手に掴み取ったのである。



 一方その頃、歓喜に沸くジョーダン達とは対照的にケチャとそのボディーガード達は焦燥し切っていた。

「はぁ……はぁ……」

 息も絶え絶えになりながらも歩みを進める……少しでも戦場から離れるために。全身は泥にまみれ、敗軍の将とはかくも惨めなものかと見る者に思わせる。しかし、見た目以上にひどいのは……。

「早く……早くしろ!あいつに追い付かれたら、終わりだ!早く無影覇光弓から逃げるんだ!!」

 何よりもひどい状態にあったのはケチャの精神であった。自分の左目を奪ったカンシチの影に怯え、ひたすら部下に当たり散らす。まさに狂乱のケチャであった。

「あまり大声を出すと、敵に感付かれますよ」

「!!?」

 そんな彼の前に何食わぬ顔で体格がよく、顔に無数の痣を作った男が現れた。朱操である。

「朱操……!今さら、何しに来た!もう戦は終わったんだぞ!!」

 これまた喚き散らし、朱操を睨みつけるケチャ。それに対し……。

「何をって……上司を助けに来たに決まっているじゃないですか」

「……え?」

 朱操に穏やかに微笑みかけられると、ケチャは一瞬きょとんとし、その後顔を緩めた。

「そ、そうだよな!部下が上司を助けるのは、当然だよな!いいだろう!多久ヶ原で役に立たなかった件は許してやろう!」

「ありがとうございます」

 朱操はそう言いながら、ケチャに近づき、彼の前で膝をつく。そして……。


ザクッ……


「……へ?」

 そして短剣でケチャを刺した!

「がはっ!?お前!なんてことをしやがるんだ!?」

 止めどなく溢れる血液を手で受け止めながら、ケチャは朱操からよたよたと離れていく。

 そんな彼を立ち上がった朱操は見下ろし、さらに口角を上げた。

「だから、俺はあなたを助けてあげたいんですよ」

「これのどこが……!!」

「左目を失ったあなたが本国に戻ってどうするおつもりですか?」

「ぐっ!?」

「大敗を喫し、力を失ったあなたに何の価値がある?ひねくれた大人の頭脳と非力な子供の身体を持っているだけのあなたを生かしておく必要などないでしょうに」

「き、貴様……!!」

 ケチャ自身、心のどこかで理解していたが、目を背けていた事実を突き付けられ、さらに狼狽する。しかし、何もできない。指摘された通り、今の彼は何の力も持たない役立たずなのだから……。

「この……!お前たち!何をやっている!この狂乱のケチャに対する反逆行為を黙って見過ごすのか!?こいつを早く殺せ!!」

「は、はっ!!」

 ケチャにできるのは部下に命じることだけ。けれど、それも……。

「お前たち、そんな奴を守るのか?」

「そ、それが我らに与えられた任務だからな……!!」

「軍人の鑑だな。だけど、お前たちがどんなにそいつに忠誠を誓おうと、そいつがお前らに感謝をすることはない。今までも、これからもだ」

「そ、それは……」

 一言、たった一言で決心はいとも簡単に揺らいだ。その程度で崩れるほどの絆とも呼べない細くか弱い繋がりしか、彼らにはなかったのだ。

「もし俺を殺し、王瞑皇帝陛下に謁見することができたら、きっとこいつはお前たちを指さしてこう言う、“こいつらがヘマしたせいで負けた!僕は悪くない!”……ってな」

「「「!!?」」」

 容易に、あまりに容易に想像できた。ケチャならきっとそうするだろうと確信できた。自然と彼らの敵意は目の前の朱操よりも、守るべき魔少年の方へと向いていく。

 あとは簡単だ。揺れるボディーガード達の心に最後の一押しをしてやればいいだけだ。

「この多久ヶ原で勇敢に戦い、そして戦死した……そういうことにしてやるのが、狂乱のケチャにとって一番いいんだよ。もちろんお前たちにとってもな?散々そいつに殴られ、いびられ続けてきたんだろ?」

「あぁ……その通りだ……!」

 ボディーガード達はくるりと反転し、ケチャを囲んだ。

「おい……お前たちまさかあいつの言うことなんて……」


ゴスッ!!


「――がっ!?」

「今まで散々こき使ってくれたな!!」


ドスッ!!


「――ッ!?ま、待て!?」

「うるせぇ!!」


ゴスッ!ドスッ!!


「――ぐはっ!?は、話し合おう!落ち着いて話し合おうじゃない……」

「お前の声はもう聞きたくないんだよ!!」


ゴスッ!ゴスッ!ドスッ!ゴスッ!!


「が……あぁ……あっ!?」

 目の前で部下にリンチされているケチャを見て、朱操は笑いを堪えるのに必死だった。

 元はといえば、彼がカンシチの脱走の手助けをしたことが回り回ってこの結果を生んだのである。そんな敗戦の原因である自分のことを棚に上げて、何を言っているんだという可笑しさ、憎きケチャの命が消えようとしていることの喜び、そしてこれからの自分の未来に思いを馳せると自然と口角が上がってしまうのだ。

(これで四魔人の一角が落ちた。そして上手く事が運べば、さらに他の奴らも……そうなれば、俺にお鉢が回ってくる可能性も十分ある……!)

 そんなことを考えている間にケチャは絶命していた。死因は部下たちによる撲殺。

 それが慇の国の四魔人とまで言われた男のあまりにも惨めな最期である。



「ジョーダン!!」

 嵐の後の爽やかな風が吹く中、多久ヶ原にはこの戦いの勝利の立役者、カンシチがやって来ていた。

「久しぶりだね。元気そうでなによりだ」

「捕まった仲間が無事に帰って来たんだからさ……もっと喜ぼうぜ」

 カンシチはジョーダン達のリアクションに不満だった。けれど……。

「キミが簡単にやられるわけないと信じていたからね。なぁ、みんな」

「お前ら……!」

 ジョーダンの問いかけにウンウンと頷く仲間達を見ると、一瞬で機嫌が直った。チョロい奴である。

「で、一人の科学者として脱走するだけじゃなく、慇の四魔人まで撃破してしまった蒼天の射手と無影覇光弓の活躍をお聞かせ願いたいんだけど……」

「おう!任せとけ!……と、言いたいところだけど、先に話をしたい奴がいるんだ。なぁ、そうだろ、蘭景?」

「あぁ」

「「「うおっ!?」」」

 突如現れた蘭景に皆一斉に驚きの声を上げる。もうここまで来たら慣れることはないだろうと、蘭景自身も諦めムードだ。

「ったく、相変わらず神出鬼没だね……」

「そうでなければ諜報活動などできんよ」

「それでその諜報活動の成果を報告しに来たのかい?っていうか、すっかり忘れてたけど、ラクもボク達に何か伝えたいことがあったんじゃなかったっけ?」

 皆の視線が一斉に蘭景からラクに向いた。当のラクは蘭景の顔を見つめたまんまだ。

「多分ですけど、ぼくの持って来た情報と蘭景さんの持って来た情報は同一のものかと」

 自己紹介もまだの初対面の二人で目配せし合うと、蘭景が力強く頷いた。

「どうやらそのようだな。だが、ここに到着した順からして、自分の方が最新のものだ。なので自分が話させてもらう」

「ええ、当然のことです」

 二人のやり取りを聞いていた全員の視線が再び蘭景に集中、彼はその期待に応えるようにマスクの下の口を開いた。

「慇が我が灑の国とやり合っている隙を狙って、皇帝統満率いる是の国本隊が王都治星から慇に出立、それを迎え撃つために慇も月安から王瞑率いる軍が是に向かって進軍。両軍は国境付近で激突する模様」

「……は?」

「……なんだと……?」

 肌を撫でる涼しげな風が、全身にまとわりつくような不穏なものに変わった気がした……。


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