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No Name's Dynasty  作者: 大道福丸
林江漫遊記
115/163

今度こそ国の危機を救おう!③

 若獅子を覆っていた翠色の炎は徐々に小さくなり、すぐに消えてなくなった。

 しかし、狻猊から放たれるプレッシャーは燃えていた時と変わらず、いやむしろどんどんと量も質も増しているようだった。

「武への忠誠だと……屁理屈を!そんなもので――」

「こうして狻猊は応えてくれた」

「――ッ!!?」

「それが何よりの証拠。誰よりも慇の皇帝に熱い忠義を持っていた花則と、この林江の武と強さへの忠誠心は同じだと、狻猊は認めてくれたんだ」

「――ッ!?」

 その通りだと、狻猊が言っているかのように、周囲の気温が上昇したのを典優は感じた。

「……いいだろう。ちっとも納得できねぇが、こうして完全適合できたのなら、きっとお前の忠誠心は本物なのだろう……ならば!その忠誠心の強さを競おうではないか!狻猊!!」

 土螻は溶けて使い物にならなくなった槍を投げ捨てると同時に、新たな槍を召喚!恐れや不安を振り切るように地面を蹴ると、猛然と突撃した!

「もうやられっぱなしにはならないぞ!今までの分……倍返ししてやる!!」

 対する狻猊は手のひらを開くと、そこに意識を集中、すると翠の炎が再び噴き出した!

「今度こそ正真正銘!狻猊ファイアー!!」


ボオォォォォォォォォッ!!


「うおおっ!?」

 しかし、炎を発射したのはいいが、反動で明後日の方向へ。ただ大気を焦がし、虚空へと飲み込まれる。

「アホが」

 その結果、土螻は毛先一つ焦がすことなく、間合いに入ることができた。

「特級骸装機と完全適合を果たすことと、その能力を完璧に使いこなすことは全く別の問題!!今目覚めた能力による付け焼き刃の攻撃などで、この土螻は倒せん!!」


ガリッ!!


 土螻の突きが炸裂!また狻猊の装甲を削り……。

「……遠い的には当たらないってんなら、この距離で!!」

 狻猊はもう一方の翠色の炎を灯した手を土螻に向かって突き出した!

「甘い!!」


バッ!!ボオォォォォォォォォッ!!


「ッ!!?」

 しかし、土螻は跳躍して回避。そのまま狻猊の頭を飛び越し、背後に回り込む。

「飛び跳ねるのは、お前だけだと思うなよ!!」

 さらに身体の毛を針のように硬く伸ばし、そのままショルダータックル!


ザシュ!!


「――ぐっ!?」

 毛針は狻猊の背中に深々と突き刺さり、穴からは緑色の装甲とは対照的な真っ赤な液体がドロリとこぼれ落ちた。

「痛いじゃないか!旋風ゴマ!!」


ブォン!!


「――うおっ!?」

 針で密着していた土螻を若獅子は遠心力で振り払う!

 宙に浮くターゲット。空中では身動き取れないそれに……。

「燃えろ!」


ボオォォォォォォォォッ!!


 再び炎を発射する……が。

「そんな単調な攻撃!当たってやるかよ!!」


ザッ!!ブゥン!!ドロオォォォ……


 土螻は地面に槍を突き刺し、そのしなりを利用して、攻撃範囲外に離脱!翠色の炎は残った槍だけを意味もなく溶かす。

「くそ……!はぁ……!はぁ……!!」

 狻猊はすぐに追撃には移れなかった。その場で肩で息をしながら立ち尽くす。凄まじい疲労感がリンゴを蝕んでいた。

「初めての完全適合……うまく加減ができずに、体力も精神力も予想以上に消耗したか!!」

「あとあんたにボコボコにやられたダメージだな。できることなら、今すぐ横になりたい……」

「情けないことを!そこは若さと武への忠誠心でなんとかしろよ!!」

 土螻、今日三本目の槍を召喚し、今日何度目かわからない突きを放つ!


ガギィン!!


「……なっ!?」

 それを狻猊は肘と膝で挟み込み、破壊する。

「いいえ、ここは師匠から受け継いだ技でなんとかさせてもらう。聖王覇獣拳……剣割り……!!」

「くっ!?当然、完全適合によって反射神経も強化されているか……!少しばかりおれの槍を見せ過ぎたな……!!」

「そうだ!お前の槍はもうオレには通用しない!!」

「ほざくなぁ!!お前ごときに攻略できるほど、おれの槍は甘くない!!」

 怒りの咆哮と共に四本目を召喚!それを懲りずに捩じ込むように突く!

「だからもう槍は――」

「使い方にもよろう!!」


ザクッ!!


「――き!!?」

 槍は突如方向転換!狻猊本体ではなく、その足元に突き刺さった。

「おれのこと……攻撃一辺倒の男だと思っているのか!!勘違いも甚だしいぞ!!」


ドゴオォォッ!!


「しまった!?」

 土螻は槍で地面をかきあげ、その上にいた狻猊をひっくり返した。

 それに伴い大量に舞い上がった土埃。二人を隠し、お互いの姿を一瞬だけ見失わさせた。

「ちっ!思ったより埃が多い!!だったら!!」


ブォン!!


 土螻は槍を力一杯下から上へ振り、土埃を視界の外へと追いやる!

「………」

 すると、倒れている狻猊に向かって、真っ直ぐと一本の道ができた。

「はっ!もう立ち上がる力も残ってないか!!よく頑張ったよ、お前は……だが、勝つのはおれだ!!」

 土螻は残る全ての力を込めて踏み込み、そして突いた!


ズッ!!


 槍は見事に狻猊の胸を貫いた……貫いたのだが。

「――!!?手応えがない!!?」

 本来感じるはずの槍で骸装機や人を刺した時の抵抗感が全くなかった。

 なぜそんなことになったのか、教えるように槍が刺さった狻猊は一瞬でボワッと煙に変わり、大気へと霧散する。

(しまった!?花則の異名は幻惑……狻猊の真骨頂は炎による攻撃力ではなく、煙による撹乱!さっきのも埃ではなく煙を……おれとしたことが、まんまと引っかかってしまった!!)

「こういうのを……しめしめって言うんだっけか」

「ッ!!?」

 後悔先に立たず。悔やんでも悔やみ切れない失敗に打ちのめされる土螻の横、土埃の中から本物の狻猊が現れた!その手に美しい翠色の炎を灯しながら!

「このタイミング、この距離なら外しようがない!……燃えろ!土螻!!」


ボオォォォォォォォォッ!!


「ぐあぁぁっ!!?」

 土螻を守り続けていた茶色い毛が翠の炎に包まれ、逆に彼を焼き殺すための燃料兼処刑道具と化し……。

「土螻と狻猊の相性が悪いのはわかっていた……わかっていたから、こういうシチュエーションは何回もシミュレーションしてきたんだよ!!」

 土螻は火のついた全身の毛を伸ばすと……。

「自らの炎で焼け死ね!狻猊!!」


ボボボボボボボボボボボボボボボボッ!!


 その全てを一斉発射!翠の火矢となった毛が狻猊に……。

「自分の力でやられるバカがいるか!聖王覇獣拳!旋風ゴマ!!」


ブオォォォォォッ!!


「くっ!?」

 狻猊高速回転!風圧で火矢を全て吹き飛ばす!いや、それだけではない!

「回転とは力なり!拳聖はそれを余すことなく利用する!」

 若獅子は回転を土螻に背を向けたところで急停止!回転によって得た慣性を右足一点に全て乗せて、撃ち出す!

「最高にドラスティック!最強にダイナミック!これが自分と狻猊のマキシマム!聖王覇獣拳!魔天穿滅蹴りッ!!」


ドシュウッ!!


「――がっ!!?」

 回転の力を直進力に変え、土螻のお株を奪うかの如く、真っ直ぐと最短最速で放たれた後ろ回し蹴りは、鉄壁の毛を失った羊の身体に捩じ込まれるように突き刺さった。


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