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No Name's Dynasty  作者: 大道福丸
林江漫遊記
101/163

害獣退治しよう!③

「グモオォォォォォォォッ!!」

「グモオッ!」「グモッ!」「グモモッ!!」

 さすがに子供達を一網打尽にされては黙っていられない。親グモンダと中型グモンダは怒声を上げながら、壁から降りて来た。

「ついに本命の登場か……!!」

「かなりお怒りみたいだな。んで、どうする?適当に流れに身を任せるか?それとも協力して一匹ずつ確実に潰していくか?」

「自分が一番デカい奴をやる。残りのちょっとデカい三匹は……」

「オレの仕事ってわけね。了解、それで行こう」

「ずいぶんと素直だな。オレが親グモンダをやるってごねると思った」

「そこまでガキじゃねぇよ。下らねぇ言い争いしてる暇がないことくらいは理解している」

(そして、悔しいが今はお前の方が頭も力も上だってこともな……!)

 槍を握る手に力が入った。無意味な意地を張るほどガキではないが、簡単に割り切れるほどバンビは大人でもない。

「はぁ……とにかく江寧の村のためにもちゃっちゃと終わらせよう」

「おう!!」

 両者は話し合いで決めた対戦相手に向かって、駆け出した!

「この密かな苛立ち……てめえらで晴らさせてもらうぜ!」

 鋼梟は勢いそのままに槍で突きを放つ……が。

「グモオォッ!!」


ヒュッ!


「ちっ!!」

 中型グモンダはカサカサと忙しなく八本足を動かし高速移動、回避した。

「赤ん坊どものようにはいかないってことか」

「グモオッ!」「グモッ!」「グモモッ!!」

 三匹の中型は仲良く尻を鋼梟に向けると……。


ビシュッ!ビシュッ!ビシュッ!!


 噂の粘着性の糸を発射した!しかし……。


ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!!


 鋼梟は軽快に動き回り、全てを躱し切った。

「さっきの動きも、この糸も想像したよりずっと速い……速いが、ヤンラフィの方が速かったし、もっと理不尽な動きをしていた!あれに比べれば、てめえらなんか止まって見えるぜ!」

「グモオッ!」「グモッ!」「グモモッ!!」


ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!!


 自らの言葉が正しいことを証明するように、鋼梟は糸の雨を掻い潜り、接近!射程距離に入ると……。

「オラアッ!!」

 先ほどよりも力を入れて突きを放った!


ザシュウッ!!


「グモオォォォォォォォッ!!?」

 当然スピードも大幅にアップしている槍はグモンダに回避どころか思考すらさせる間もなく、貫いた!

「まずは一匹!!」

「グモオォォォォォォォッ!!」

 目の前で殺された兄弟の仇を討つために二匹目来襲!

 身体を起こし、先が尖った脚を鋼梟の頭上に撃ち下ろす!

「だから……」


ヒュッ!ザンッ!!


「――グモッ!!?」

「遅いんだよ!!」

 けれど鋼梟はそれを回避……するだけに飽き足らず槍で逆に切り落とした。さらに……。

「二匹目!!」


ザシュウッ!!


「――ッ!?」

 驚き開いたグモンダの口に槍をぶち込む!もちろん即死……いや!

「グ、グモオォォォォォォォッ!!」


ガシッ!


「何!?」

 死は免れない。だが、このまま何もできず死ぬことなど許せない!そう言わんばかりにグモンダは顎を閉じて、自分の身体を貫いている槍を噛んだ!そして……。

「グモオォォォォォォォッ!!」


ガギィン!!


 そのまま噛み砕いた!

(こんなにあっさり槍が……!?力を見せつけるように口なんて狙ったのが駄目だったのか!?つーか、あまりにも脆すぎる!リンゴへの対抗心から不必要に力が入っていたのか!?なんにせよ……未熟過ぎるぞオレ!!)

 後悔先に立たずとはこういうことを言うのだろうと、バンビは痛いほど理解させられた。だが、今の彼には悔い改める前にやらなければいけないことが……。

「グモオォォォォォォォッ!!」

「!!?」

 三匹目強襲!武器を失った鋼梟に容赦なく襲いかかる!

(くそ!?オレはどうすれば……!?)



「ググモオォォォォォォォッ!!」

 親グモンダもまたターゲットに尻を向けていた。当然、この後の行動も同じだ。


ビシュッ!!


 粘着性の糸を発射!しかし……。

「ふん」

 狻猊はいとも容易く回避。けれど……。

「グモオォォォォォォォッ!!」


ビシュッ!ビシュッ!ビシュッ!!


「ちっ!」

 それに懲りずに乱射!緑の獅子はこれも躱したが、それだけで精一杯。反撃に移ることができずにいた。

(躱すことは難しくないが、近づくのは中々難儀だな。まさかあいつ、自分と子供との戦いを見て、こっちには遠距離攻撃がないと判断したのか?このまま撃ち合いを続けるなら、しんどいな……)

 狻猊は回避運動を続行しながら、地面に転がる子グモンダと、今も攻撃を続ける親グモンダの重厚な身体とそこから伸びる細く、だが丈夫そうな八本脚をチラリと確認した。

(バンビにやったように巨星震脚で体勢を崩すのは無しだな。せっかく寝かしつけた赤ん坊を起こす可能性もあるし、あの重心の低い身体にそれを支える八本もの脚相手だと、そこまで効果が出ないかも。じゃあ、どうするか……うん!これしかないな!!)

 覚悟を決めた狻猊は力強く一歩踏み出した!


べちゃっ……


「……え?」

 一歩踏み出したところに、外れた糸が溜まりを作っていた!それを踏んでしまったら、当然獅子の足は地面にべったりと張り付いてしまう!

「しまった!!?」

「グモオォォォォォォォッ!!」


ビシュッ!ビシュッ!!ビシュッ!!


 今が好機と親グモンダは糸を連射しながら突撃!勝負を決めに来た!

 迫り来る糸と本体、その光景にリンゴは……笑った。

「自分の演技も中々のもんだな。こうも見事に引っかかってくれるとは」

 そう満足げに呟くと、獅子は肘を直角に曲げる。

「拳聖の肘はあらゆるものを切り裂く鋭利な刃!!その切れ味、とくと味わえ!!聖王覇獣拳!凶鬼断ち!!」


スパッ!スパッ!スパンッ!!


 高速で振るわれた肘はまさに名刀のように、凄まじい切れ味を発揮し、降り注ぐ糸を容易く細切れにした。

「グモッ!?」

「虫の吐く糸などで聖王覇獣拳の使い手をどうにかできると思うな!!」

「グモオォォォォォォォッ!!」

 プランが崩れた親グモンダだったが、すでに止まれないほど加速してしまったのか、リンゴの挑発が許せなかったのかはわからないが、突撃を止めることはなかった。

 口を開き、牙を露出させ、そこから毒を滴らせて、噛みつきに行く!

「グモオォォォォォォォッ!!」

「剣砕き!!」


バギィ!バギィン!!


「――グモオォッ!!?」

 しかし、自慢の牙はカウンターによって砕かれてしまう。さらに……。

「爪翔撃!!」


ガアァァァン!!


「――グモッ!!?」

 頭の下に潜り込んでからの跳躍!身体ごとぶつけるようなアッパーカット!

 グモンダの身体が強制的に跳ね上がり、その勢い地面に張り付けていた糸から足を解放する!さらに……。

「まだまだ!行くぞ!!」

 若獅子は着地と同時に反転!害獣に背を向けた!もちろん逃げるためではない……追撃し、息の根を止めるためにだ!

「聖王覇獣拳!山崩し!!」


ドゴオォォォッ!!


「――ッ!?」

 背中からの体当たり!ぶちかまし!グモンダは獅子の全身を使った攻撃に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる!そこに更なる、いや最後の追撃!

「もう一度!凶鬼断ち!!」


ザンッ!!ザンッ!!


「――ッ!?」

 再び振るわれた狻猊の肘は無防備なグモンダの腹をX状に切り裂いた。

 そこから噴水のように噴き出す体液、ピクピクと痙攣していたが、すぐに動かなくなった八本の脚……この攻撃が命を断つ一撃になったのは、言うまでもない。

(これで大元は潰した。こいつらの繁殖方法はわからんが、少なくともこれ以上増えることはない。あとは……)

 狻猊は身体に付いた体液を払いながら、仲間の方に視線を向けた。



「槍がないなら!こいつで!」

 鋼梟は先ほど切り落とした二匹目の脚を掴み、力一杯握りしめる。その剛力から脚だけでなく、鋼梟自体の腕部にまで亀裂が走った。

「グモオォォォォォォォッ!!」

 兄弟の脚をオモチャにしているように見えたのか、三匹目の中型は迫力を増して、鋼梟へと覆い被さろうとする。しかし……。

「だから!遅いんだよ!!」


ブゥン!!ザシュッ!!


「――グモォッ!?」

 回避からの手に持ったグモンダの脚で突き!首元にぶっ刺した!

「これでとどめだ!!」

 さらにそれをすぐさま抜くと、くるりと逆手に持ち替え、大きく振り被る!そして……。

「オラアァァァァッ!!」


ザブシュッ!!


「――ッ!!?」

 今度は脳天から突き刺した!

 狻猊に切り刻まれた親と同様に頭に空いた穴から体液を噴き出すと、三匹目はよろよろと少しだけ後退したのち、ガゴンと音を立てて崩れ落ちて、二度と動かなくなった。

「お見事……なんて言うのは、嫌味が過ぎるかね」

「そう思うなら、口にするんじゃねぇよ」

 マスクの下でリンゴは楽しそうに笑い、バンビは口を尖らせた。

「さてと……大物は駆除できたから、あとは地道に寝ている小物を潰していこうか」

「この数をか?」

 絨毯のように敷き詰められた子グモンダを見下ろすと、バンビは急に疲労感が倍になった気がした。

「いっそのこと炎でまとめて焼き殺しちまえばいいんじゃねぇか?」

「気持ちはわかるけど、これだけの数を燃やすには相当の油が必要だぞ。村の人達にはできるだけ負担は……ん?」

 その案が好ましくないと語るリンゴをバンビがきょとんとした顔で見つめていた。狻猊はその行為の意味がわからず、黄金の鬣の生えた頭を傾ける。

「どうしたんだ?そんなジーッと自分のことを見て」

「いや、何言ってるんだろうなって思ってよ」

「はぁ?」

「とぼけてるのか、何か他に理由があるのかはわからんが、その様子だと、どっちみちオレの案は駄目そうだな。しゃあない、地道にやっていきますか。キトロン!取りこぼしがないように気を張っていてくれよ!」

「任せとけ!一匹たりとも逃がさないぜ!」

 鋼梟は目につく子グモンダを手当たり次第踏み潰して行く。

(さっきの話、何だっただろ?まぁいっか)

 狻猊もバンビの言葉に感じた違和感を吹き飛ばし、子グモンダの駆除に取りかかった。


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