第9話【ハルト】
「これは?」
親の世代から楽しんでいたというボードゲーム。自分も家族で遊んだ記憶がある。そのリアル版の体験モニターの募集、製品プレゼントキャンペーンが行われるという案内が届いた。
「人生ゲームかぁ。結構好きなんだよね、お金が貯まってく所が。実際にこんなに手にしたらどうなっちゃうんだろうっていうワクワク感も良いんだよな」
ハルトは案内に目を通すと応募を決めた。
「体験モニターか。面白そうだし、ゲームだもんね」
QRコードを読み取ると、アンケート入力画面へと移行した。
名前、性別、年齢、職業、年収(選択肢あり)、最終学歴(選択肢あり)、親の世帯年収(選択肢あり)家族構成を入力していくと、恋人の項目があった。
「恋人か…。そろそろわかれようかと思ってるけど、今はありか…」
大学4年の時に付き合い始めた2歳下のサークルの後輩カナミがいる。ハルトが社会人になると、生活環境の違いに戸惑った。学生の時には考えられなかった価値観の違いが顕著に現れたのだ。愛を感じれる程相手からは好かれているし、彼女がいない状態になるのも捨てがたく、なんとなくダラダラと付き合ってはいるが、ハルトからの気持ちは愛ではなく惰性だ。
ハルトが恋人を『あり』にすると、アンケートの質問部分は終わった。残りは送付先住所とメールアドレス入力と個人情報管理と免責事項に関する同意のチェック項目があった。確認画面に進み、『応募する』の所をタッチするのみとなった。
「ゲーム、やってみたいな。選ばれると良いけど…」
こうしてハルトはリアルゲームのモニター&プレゼントキャンペーンに応募した。
◇◇◇
1ヶ月後、ハルトの元に荷物が届いた。
「やった!選ばれたんだ。結構最新式?タブレットにスマートウォッチとルーレット?」
梱包品を1つ1つ出していく。最後に書面一式を取り出すと読み始めた。
『本田ハルト様
貴方はこの度の選考により当選しましたので、事務局よりゲーム機器一式を送付致します。
5月1日より開催されるリアル人生ゲームへの参加登録となっておりますので、必ず参加してください。
以下の手順で準備を済ませておくようお願い申し上げます。
①届いた日より常にスマートウォッチを装着すること(防水仕様の為入浴時もお使いください)
②タブレットの充電をしておくこと(初日は事務局からのルール説明もあるため、満タンにしておくことを推奨)
③タブレットはインターネット回線に接続すること
④5月1日午前0時~午前8時までに初回のログインをすること(初回はルール説明と登録作業に1時間程要します。午前9時までにルーレットを回す為、お時間に余裕を持って始めてください)
以上
尚、返品は受け付けません。故障、不具合の場合のみ交換を受け付けます。また、ゲームへの不参加も認めません。不履行を確認した場合違約金が発生します。リアル人生ゲーム事務局』
最後の注意書は小さな文字でさりげなく書いてあった。そしてログインIDも添えてあった。
「うわぁ。リアルな感じ。自分が応募したやつだけど、送られてきた所からだと強制的に参加させられてるみたいで、小説とかによくあるデスゲームみたいじゃん」
違約金が発生するとなると不参加はまずない。早速スマートウォッチを身に付け、タブレットの充電を始めた。ネット回線も問題なく接続できた。
「ゲームに関する説明書がないな。タブレットの画面も変わらないし、電波状況も回線も大丈夫そうだから固まってる訳じゃないと思うけど」
こうして、5月1日を迎えた。
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