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第15話【ハルト】

8月7日(月)


この日は最後のターンをまわす日だ。いち速く全体の確認をするため、午前0時をまわるとタブレットを立ち上げた。


今回は日常マスだったため自分のイベントはなかった。


タブレットからアナウンスが流れ、イベントが表示された。


『♪~チェックマスイベントが発生しました。8位通過はショウマさんです。ショウマさんは全員から3万JPずつもらいました。ショウマさん、おめでとうございます』


【30,000JPをショウマに支払う】


ハルトのポイントは13,198,610JPとなった。


そこでポイントランキングを見る。


「ん?リョウスケが追い付いてる?」


1,000万を超えているのはハルトとリョウスケの二人だった。


マップを見るとハルトとリョウスケが先頭となっている。


「進行度はリョウスケの方が先をいってたけど、ポイントは俺の方が上だったよな?ここへ来てポイントを増やしてきてる。同じマスに止まってるのに何で?」


今止まっているのは日常マスだ。今までは気にならなかったのに同等のポイント数だ。


「カードか…」


ハルトはカードのアイコンをタッチした。すると、選択画面が出てきて、持っているカードが表示された。


【4を出させるカード】


「4を出させるカード?」


ハルトが【4を出させるカード】を選択すると、相手を選ぶ選択肢が表示された。


「プレイヤーだ。リョウスケに4を出させて、自分が8を出せば、進行度は暫定的には1位になる?」


そこでマップを確認すると4マス先は悪魔マスだった。


「!?これしかない!!」


自分が勝つための手段として、他人を貶めることにした。ハルトは選択肢からリョウスケを選んだ。


『【4を出させるカード】を使いました』


アナウンスがあったがそれだけだった。


「ん?」


何の変化もない。


「んー?」


時刻は午前0時10分。タブレットを立ち上げ、チェックマスイベントを確認し、カードを使うことを決めた。その決断に10分弱。反応を示さないのはなぜだろう。そうこうしていると、ポイントが動いたり、プレイヤーのコマが歩きだしたりしている。


「そうか、ログインしてルーレットをまわさないとイベントとして発生しないんだ。つまり、自分も何かされる前にルーレットをまわし終えておく必要があるな」


ハルトはケーブルをタブレットにさして、ルーレットをまわした。


『8』


ずっと連続で8を出している。もう慣れたものだ。


そこは『カードマス』だった。


「ここへきてのカードマス?」


画面を確認すると、【止まるマスが天使マスに変わるカード】だった。


「えー?もらっても意味ないな。…ん?じゃあ、リョウスケが前回同じマスに止まってたのにポイントが増えたのはこれのおかげ?」


画面にはスマートウォッチとの連動を促すアナウンスが表示されている。ハルトはスマートウォッチをかざした。


『連動されました。それでは1週間お楽しみください』


マップを見るとリョウスケのコマが動きだし、4マス先の悪魔マスで止まった。もし、のんびり朝にログインしていたら…。誰かに陥れられたかもしれないし、カードが使える相手がいなかったかもしれない。同行を見て戦略を練れないのは痛いが、先にイベントを発生させておくことも重要だったのだ。いろんな戦い方があると最後のターンで気付かされた。


◇◇◇


8月14日(月)


結果発表となった。


前日にはメールが届き、午前8時までにはログインし15ターン目のイベントを確認し終えること、結果発表後午前9時にスマートウォッチを外すことで終了となるという案内があった。


午前0時をまわるとハルトはタブレットを確認した。カードマスに止まっていたハルトは自身に何もイベントが発生しなかった。


軽快な音楽と共にチェックマスイベントを知らせるアナウンスが流れた。


『♪~チェックマスイベントが発生しました。9位でマスに止まったのはユウキさんです。ピッタリ止まったユウキさんはピタリボーナスを反映し、全員から32万JPずつもらいました。ユウキさん、おめでとうございます』


【320,000JPをユウキに支払う】


「なんだそれ!?ピタリボーナス?」


ピタリボーナスの反映。それは着順で貰えるチェックマスポイントにルーレットで出た目の数をかけたポイントを全員から貰えるというものだった。チェックマスは通過だけでもイベントが発生するとわかったから、チェックマス自体に止まるということは考えていなかった。盲点だった。もし1位でチェックマスに止まりルーレットで8を出していたら、720万も貰えたのだ。


「ほんとうにいろんな戦い方があるな…」


ハルトのイベントはこれで終了だ。この後は就寝して、8時にまたタブレットを確認し最終結果を見ることにした。


時計は午前8時を示した。タブレットの表示が変わる。


『♪~、みなさんいかがでしたでしょうか?それでは各賞の発表に移ります。まずは、【ゴールできたで賞】ですが、ゴールに辿り着いたプレイヤーはいませんでしたので、該当者なしです。次に…』


アナウンスが始まった。各賞の結果発表以下の通りになった。


【ゴールできたで賞】

該当者なし。


【たくさん進んだで賞】

ハルトさん。賞金500万JP。


【天使とお友達で賞】

ダイチさん。賞金500万JP。


【悪魔とお友達で賞】

ユウキさん。賞金500万JP。


【宝の持ち腐れで賞】

ショウマさん。賞金300万JP(カード3枚×100万JP)


『各賞の発表は以上で終了です。ポイントを反映させた最終結果はこちらです』


1位ハルトさん

2位リョウスケさん

3位ダイチさん

4位ショウマさん

5位アラタさん

6位マサユキさん

7位コウヘイさん

8位レンさん

9位ユウキさん

10位ケンタロウさん


『ポイントランキングは順位の発表のみとなります。また、このポイントはゲーム終了後24時間以内に精算されます。約3ヶ月に渡りお楽しみいただきましてありがとうございました。午前9時を迎えましたらスマートウォッチを外してください。以上となります。お疲れさまでした』


最終的にハルトは17,878,610JPとなった。【たくさん進んだで賞】つまり進行度が1位だったことで更に賞金を獲得できた。


「やった…!」


ハルトは顔が緩みっぱなしになった。9時になったことを確認し、スマートウォッチを外すと《バチン》と身体中を電流が駆け抜けハルトは一瞬意識を失った。





「あれ?今、何してたんだっけ?」


目の前にあるタブレット画面にはこんな表示があった。


『ゲーム機器一式に不具合が発生しました。回収致しますので下記送付先まで着払いにて送付をお願いいたします』


「え?懸賞で当たったゲーム機に不備?そうなのか…。あ!でも抽選で当たった賞金は残ってるよね!?」


電子マネーを確認すると1,700万を超えた額が確認できた。


「あ~、よかった~。何に使おうかな?ほんとうに留学しようかな?」


ハルトは送付先を控えると、タブレットとスマートウォッチの電源を切りケーブルのついたルーレットをひとまとめにした。


「あれ?でもこのゲーム機って、何のゲームが出きるんだったっけ?」


ハルトの頭の中からはゲーム内容に関する記憶だけ失われていたのだった。



◇◇◇


1ヶ月後。アキナが駅の改札でハルトを待っていると、見覚えのある人物がこっちを見ていた。目が合うとその人物は近づき声をかけてきた。


「アキナ!久しぶり。元気にしてた?」


「…ユウキ。まあ、元気だよ」


「しばらく連絡してなくてごめんね。なんか、間が開いちゃって連絡しにくくなっちゃってさ。今何してんの?」


「…。人と待ち合わせてる。っていうか、別に連絡待ってないから要らないし。こっちから連絡しなきゃ連絡しないじゃん」


「それは本当にごめんって。俺、今は仕事が大事だって、忙しいって言ってたアキナの気持ちよくわかったよ。今度からは気を付けるし」


「は?何親しげに話しかけてきてんの?私たち自然消滅してるんでしょ?」


「あ、それは…」


「大橋くんが教えてくれたよ。だから、もう私に関わらないでくれる?人と待ち合わせてるって言ったじゃん」


「アキナ、お待たせ」


そこにハルトがやってきた。


「あれ?今井、何してんの?週末に仕事?」


ユウキはスーツを着ていた。


「あ、本田…、いや、これは…」


「ああ。仕事探してるのか。就活初めてなんだろ?今からじゃ中途の枠でしか応募できないもんな。うちの会社をそんな早期に退職するやつなんかいないだろうから、…大変だろうね」


アキナに微笑みかけながら同意を求めた。


「失ってから大切さに気付いたってわけね?さっきね、仕事の大切さが解ったって言われたのよ。入りたくても入れない人が多いのにね。ユウキの所為で優秀な人が一人、枠から漏れちゃってるんだもん。会社の損失も大きいよね」


二人は親しげに話をしている。アキナはハルトからユウキの解雇の話を聞いているだろう。会話がスムーズになされている。


「あの、待ってる人って本田のこと?」


ハルトは二人の関係を勘繰った。


「そうだけど?私、今、ハルトと付き合ってるの。自然に私を消してくれてありがとね、ユウキ」


「偶然な再開だったけど、タイミングといい運命だったかもね。じゃ、そろそろ行こうか。時間になっちゃうよ」


「あ、本当だ!今日の先生はイギリス人だったよね?アメリカの人とはやっぱりちょっと違うから新鮮だよねー」


「それを言うならアジア系の人も独特だよね?でも英語圏じゃなくてもみんな当然のように英語使えるからすごいよ。もっと学生の時に勉強しておけば良かったな」


ユウキは二人の会話を口を開けて見つめている。


「あ、じゃ、さよなら」


「ま、頑張れよ」


こうして、固まったユウキを残し、ハルトとアキナは去っていった。



「そうだ、留学も良いなぁと思ってるんだ。アキナもどお?」


「語学留学ってこと?私もしたいなと思ってるけど、その為にはもっとお金貯めないとね」


「臨時収入があったんだ。二人分は用意できるよ?」


「え!?でも貰えないし、借りても返せるかわからないし」


「うーん、じゃあ、結婚する?」


「…どういうこと?」


「夫婦の資産なら遠慮無く使えるでしょ?」


「嬉しい提案だけどお金の問題は慎重に!でも、プロポーズは本気にするよ?」


「もちろん!じゃあ、まずは一緒に住むのはどお?」


「気が早いよーって言いたい所だけど、タイミングも大事だよね。冬にアパートの更新があるんだ。そこからで考えてみる?」


「うん。そうしよう」



ユウキもハルトも賞金を獲得して終わったのに、人生においては勝ち組と負け組の差が明らかだった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


ここでハルト編が完結となります。次回からはリョウスケ編が始まります。引き続きお楽しみください。


気に入っていただけましたら、評価を頂けると作者のモチベーションに繋がりますので、ぜひお願いします!

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