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第10話【ハルト】

5月1日(月)午前0時。


ハルトはタブレットの電源を入れた。


「明日仕事だけど、ゲーム気になるし夜更かしだな。朝はギリギリに起きてご飯はコンビニでおにぎりでも買って会社で食べるか」


~オープニング~


『♪~リアル人生ゲーム、始めます!』


軽快な音楽とともに女性の声でアナウンスが始まった。


『本日は20XX年5月1日月曜日です。間違いがなければスタートをタッチしてください』


ハルトは指示通り設定を進めていく。


『はじめまして。私はこのゲームの案内人タナカです。このゲームはあの有名なボードゲームを現実世界で楽しむために開発されました。幸か不幸か、未来は貴方の手にかかっています。まず初期設定を開始します。ログインIDを入力後、参加者は顔認証の為の登録をしてください』


「え?写真撮るの!?」


タブレットの画面はインカメラで顔が写るようになっている。ハルトは覗き込むようにし、自分の顔を撮影した。


『こちらでよろしいですか?よろしければ決定を押してください。♪~。参加者のデータを登録します。ゲーム終了後獲得したポイントの精算を行うため、正しく入力してください』


「ポイントの精算?」


氏名、性別は既に入力されており、生年月日と電子マネーの登録をした。


「この登録した所に獲得した賞金が貰えるってことか?」


『こちらでよろしいですか?よろしければ決定を押してください。♪~。ハルトさんですね。それではルールを説明致します。このゲームは1~10人プレイ用です。15ターンで勝敗を決定します。このゲーム内の仮想通貨単位はJP(人生ポイント)です。1JP=1円となります。毎週月曜日午前0時から午前9時までにルーレットを1回まわし、プレイヤーを進めていきます。マスには良い出来事が起こる"天使マス"、悪い出来事が起こる"悪魔マス"、カードが貰える"カードマス"、中継ポイントとなる"チェックマス"、何も起こらない"日常マス"があります。止まったマスに関する出来事が1週間の内に起こり、マスのイベントとして登録されます。必ず決められた時間内にルーレットを回してください。確認できない場合には脱落となり負けが確定します。途中脱落によるペナルティはマイナス1000万JPですのでご注意下さい。さらに脱落後もプレイヤーとしてチェックマスイベントには参加し続けるのでご注意下さい。最終順位により獲得する賞金の反映後、参加者全員の精算が行われます。また、事務局よりメールが届くことがございます。その際には必ず確認の上ゲームを進めてください。早速メールが届いています。確認してください』


画面のメールボックスには①のマークが付いている。ハルトはタッチした。


『貴方が参加するゲームNo.はA23です。このゲームの参加者は10名です。今回はモニターゲームであるため、ゲーム機器をプレゼントしております。つまりスタート時のイベント【10万円相当のゲーム機器のプレゼントキャンペーンに当たる】が適用され、貴方の獲得ポイントは10万JPです。画面にてご確認下さい』


「え?10万!?」


さっそくホーム画面に戻ると、ポイントに100,000JPが表示されている。


「思っていたより動く金額がでかいな。リアルなら1回に動く金額はせいぜい数千から多くて1万かと思ったけど」


ハルトは1時間程度の体験型のゲームの1回の参加費が3,000円くらいの相場だと考えていた。このゲームは週一回1ターンのペースで15ターン行うという。ゲームに関与する時間の長さで考えると単価はそれくらいになるのか?と、大きな金額が動くことに動揺した。


『ルールを再度確認することも出来ます。右端にご用意しておきました。それではさっそくルーレットを回してみましょう』


「え!ルール説明って終わったの?」


ルーレットをまわす前に、ハルトは簡単にルールをお復習した。


《今回のゲームの参加者は10人》

《週一回ルーレットをまわしプレイヤーを進める。これを1ターンとし全15ターンで勝敗を決める》

《マスは、天使、悪魔、日常、カード、チェックの5種類》

《止まったマスのイベントが1週間のうちに起こる》

《毎週月曜午前0時から午前9時の間にルーレットをまわす》

《最終順位で賞金がある》

《途中脱落はマイナス1,000万JP》

《脱落後もチェックマスイベントには参加する必要がある》


書き出してみると思ったより情報があった。


「ゴールを目指せとは書いてないんだよな。15ターンで先を行ってれば良いのかな?」


画面をよくみると、ランキングが表示されている。まだ誰も何もしていないからか、ポイントランキングは全員1位でポイントは100,000JPとなっている。そしてランキングは切り替えることができた。進行度ランキングと幸福度ランキングがあった。


「幸福度はよくわからないけど、ポイントはたくさん稼げばいいんだろう?進行度は先に進んだ順かな?」


マップを操作することができた。スタートにはハルトと書いてある人の形のコマと他に2人止まっている。


「日付が変わるとすぐに始めた人は3人だけってことかな?」


マスをみていくと、天使の絵や悪魔の絵が書いてある。他にカードと円マークもあったが、白いマスも存在した。ゴールは遥か先にあり、ルーレットの目は『8』までだったため、単純に計算しても15ターンのうちほとんど『8』を出さないと辿り着けない。


「ゴールはないな。どんなに獲得できる賞金が高くてもリスクが大きい」


マスを8ずつ数えると悪魔マスにもそこそこ止まる。ルーレットも狙いどおり出せるものじゃないため、1つずれて『1』が出た時点でゴールには辿り着かなくなる。


まずはどんなものか、それぞれのマスに1度は止まってみることにした。


ルーレットはタブレットに繋げる線がついていた。接続すると、画面のルーレットのマークが点灯した。


『あなたの番です』


画面のアナウンス通り、ハルトはルーレットを回してみることにした。


「6だ」


画面にも『6』が表示され、ハルトと名前がついている男がマス上を歩いている。6マス目で止まるとそこは天使マスだった。


「幸先いいな」


『天使マスに止まりました。スマートウォッチをタブレットにかざしてください』


タブレットにタッチ決済マークがついている箇所があったため、そこにスマートウォッチを近づけるとスマートウォッチの画面に天使の顔が表示された。


「へぇー」


10秒ほど表示された後、時計表示に変わった。


「おお。なるほど」


タブレットの画面に目を向けると天使マスとスマートウォッチの表示が消えた。


『連動されました。それでは1週間お楽しみください』


アナウンスは終了しマップが表示されている。


「ずいぶんと良くできてるな」


時計を確認すると午前1時をまわっていた。マスを進んでいるのは3人。スタート地点に1人いるのが確認できた。


「ログイン時間に幅を持たせてるのは生活習慣に合わせてかな?夜勤の人もいるだろうしな。順番がまわってきたらまわせっていうルールじゃないのも、イベントの発生が週1回の割合だからかな?」


決められた時間に決まった進行をする。社会人のハルトにとってはありがたかった。



この週は、仕事で大きな動きがあるわけでもなく、同期の上司への愚痴に付き合わされた。


(大体はこいつの自業自得なんだよなー)


同期の叔父は会社の専務だと聞いている。コネで入社したという噂が流れていた。


(一応有名企業なんだけど、こんなに無能なやつ一般試験で採用するわけないよなぁ)


ハルトがこの同期に付き合うのは一種の接待だった。この日は乾杯のビールを奢ってあげた。


週末、カナミを呼び出した。これからゲームを楽しみ集中するつもりだったから、これをきっかけに別れを告げることにした。カナミも大方予想していたようで、泣きつかれる訳でもなくあっさりと解散することができた。カナミが先に店を出るのを確認すると、会計を済ませてから外へ出た。店先ではカナミが電話していたが、聞こえた会話に耳を疑った。


「今から会いに行っていい??…うん、もう良いの。…そうなの。これからは堂々と会えるし、お泊まりしても良い?ずっと一緒にいたいの。…うん!嬉しい!シンイチと……」


会話が聞こえなかったフリをし逆方向に歩きだした。ハルトの熱が冷めているのが十分に伝わっていたのだろう。カナミにはもう次の男がいたのだ。


(どおりで連絡の頻度が下がってきてたわけだ。煩わしくなくていいやと放っておいたけど…。あまり良い気持ちではないもんだな)


◇◇◇


5月8日(月)


午前0時をまわるとタブレットを確認した。『イベントを見る』というボタンが表示されている。ハルトは押してみることにした。


【彼女に別れを告げた】


「これが天使マスのイベント?たしかに関係が解消できてスッキリしてるけど」


ホーム画面に戻りポイントを見てみると101,200JPになっている。


「1,200JP増えてる?」


おそらくイベントに関わる金額なのだろう。思い当たることといえば、別れを告げた喫茶店の代金だ。本当に現実と繋がっているがわかった。


マップでは10人が存在している。悪魔マスに止まっているものも確認できた。初日に早くからログインしていた他の2人は次のマスにコマを進めている。ポイントを増やしているやつもいる。


「1位は110,000JPか。一万円動くイベントがあったってことか」


どんなイベントだったのかは他の人にはわからないようだ。つまり自分のイベントも他人にはわからない。


「はじめに10万もらっているから、数万円までは許容範囲だけど、はじめのうちにいろいろ体験して仕組みを把握しておきたいしな」


次はあえて悪魔マスを狙ってみることにした。


『6』


「よし!狙い通り」


そこは悪魔マスだった。


ハルトはスマートウォッチをかざすとベッドに横になった。


「様子をみたいだけだから、大きな動きはしないようにしよう」


こうしてハルトの2ターン目が始まった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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