第1話【ユウキ】
いつもお読みいただきありがとうございます。
いつもとは傾向の違う物語を創作しました。
お楽しみ頂けると幸いです。
「ん?何これ。人生ゲームかぁ。懐かしいなぁ」
親の世代から楽しんでいたというボードゲーム。自分も家族で遊んだ記憶がある。そのリアル版の体験モニターの募集、製品プレゼントキャンペーンが行われるという案内が届いた。
「リアル人生ゲーム?最近リアルを楽しむ物増えてるよなぁ」
リアル謎解きゲームやリアル生活ゲーム、サバイバルゲームもそうだけど、現実の自分も巻き込むような遊びが流行っている。ユウキも大学生の時に友人と脱出ゲームに参加したことがある。
「えーっと、どれどれ?んげっ!?これ参加プレー代10万もするんじゃん!?ん?機械もそのまま付いてくるから?それのプレゼントキャンペーンってことか。まあ、応募するだけしてみるか。当たればラッキーだしな。やらなくても転売すりゃ良いか」
QRコードを読み取ると、アンケート入力画面へと移行した。
「名前、今井ユウキ。性別、男性。年齢、23歳。職業、会社員。年収…、年収?これもいる?ああ、これは選択肢があるのか。400~600万。最終学歴…、これも一応選択肢あるのか…。えーっと、表のなかから探すの?このグループか、私立大学(A)。親の世帯年収?はあ?知らねーよそんなの。んー?確か親父は係長してるって言ってたっけ。あの会社ならこんなとこか?母ちゃんは扶養の範囲内でパートしてるって話をしてくれたことがあったから、800~1000万って所で良いか。家族構成、父、母、姉。恋人、一応ありか。お?こんなところか?」
ここまで来たところで、送付先住所とメールアドレス入力と個人情報管理と免責事項に関する同意のチェック項目があった。
「これ、読むヤツっているのかな?長いし、だいたい同じこと書いてあるんだよなー。同意しますにチェックっと」
確認画面に進み、『応募する』の所をタッチするのみとなった。
「当たるかな?期待せずに待つとするかな!はい、応募!」
こうしてユウキはリアルゲームのモニター&プレゼントキャンペーンに応募した。
◇◇◇
1ヶ月後、ユウキの元に荷物が届いた。
「マジか…。当たった…。すげ~。タブレットじゃん。あとはスマートウォッチ?あ、ルーレットはアナログだ」
梱包品を1つ1つ出していく。最後に書面一式を取り出すと読み始めた。
『今井ユウキ様
貴方はこの度の選考により当選しましたので、事務局よりゲーム機器一式を送付致します。
5月1日より開催されるリアル人生ゲームへの参加登録となっておりますので、必ず参加してください。
以下の手順で準備を済ませておくようお願い申し上げます。
①届いた日より常にスマートウォッチを装着すること(防水仕様の為入浴時もお使いください)
②タブレットの充電をしておくこと(初日は事務局からのルール説明もあるため、満タンにしておくことを推奨)
③タブレットはインターネット回線に接続すること
④5月1日午前0時~午前8時までに初回のログインをすること(初回はルール説明と登録作業に1時間程要します。午前9時までにルーレットを回す為、お時間に余裕を持って始めてください)
以上
尚、返品は受け付けません。故障、不具合の場合のみ交換を受け付けます。また、ゲームへの不参加も認めません。不履行を確認した場合違約金が発生します。リアル人生ゲーム事務局』
最後の注意書は小さな文字でさりげなく書いてあった。そしてログインIDも添えてあった。
「マジか…。ゲーム強制参加ってこと?あ、そうか。モニターってなってたっけ?まあ、プレゼントされたんだから、何かしらはあるわけだな。それにしても、違約金?いくらなんだ?」
違約金という言葉にユウキから不参加という考えは消えた。スマートウォッチを身に付けると1週間後に向けてタブレットの充電を始めた。ネット回線はWi-Fiが使えそうで安心した。
「しかし、このゲームに関する説明書は無いんだな。電源ついたけど、オープニング画面のまま進まない。ルール説明をしっかり聞かないとやべぇな」
こうして、5月1日を迎えた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。