第一章 イチョウの木の上で
目が覚めるとイチョウの木の上にいた。「ちょっ、あぶなっ!」
ふと見ると私が腰掛けている枝は細く、今にも折れてしまいそうだった
「くさいなぁ」後ろから声がした
振り返ると私と同い年ぐらいの男の子私と同じように枝に腰掛けていた
私が腰かけている枝と彼が腰かけている枝は同じくらい細かったが、不思議なことに彼の枝はしなってさえもいなかった
はいはいどうせ私はデブデすよ。
「あんた誰?」喧嘩腰に私はいった
「…。」
彼から返事がかえってこない。あれ?シカトですか?
いや冷静に。ここは大人になろう。そう自分に言い聞かせた。
「…よね?」
「へっ?」
もしかして今しゃべった?「お~い今なんか言った?」
「イチョウって臭いよね?」
「…。」いきなり何を言い出すんだこいつは?
こういうキャラを狙ってるのか?それとも頭がおかしいのか?まぁいい。私は大人だ
英語で言えばアダルトだ!(違うかな?)
少年の話題に合わせてやろうじゃないか
早速、鼻に全神経を集中させてイチョウの匂いをかいだ。確かにくさい
刺激臭であるとか「オエッ」というほどではないが、嫌な匂いである。例えるならバナナと納豆を混ぜたような…
少年にはとりあえず、「うん、たしかに臭いね。」と愛想笑いを浮かべながら言った
少年も笑いかえしてきた
うん。機嫌がよくなったみたいだ。良かった良かった
「やっぱりこんな臭くて腐った世界になんかいたくないよね。」