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Xデー

作者: 長万部三郎太

あれほど愛し、コミュニケーションに不自由のなかった間柄であっても、年月は人を変える。

互いのことを知り尽くしたはずの妻との仲がこじれて5年が経った。

寝室はもちろん、食事も個別だ。



冷え切ったわたしたちとはいえ、互いに一線を越えることはなかった。

これまでは。


ここ数か月、妻の様子がおかしい。

半信半疑だったが、その思いは雇った探偵の報告で確信に変わった。



『あいつが何を考えているか分かる……』



かつての愛は、容易に憎しみへと転換された。

これまで我慢をしてきた分、よりいっそう強い憎悪へと変化したのだ。



偶然にも、わたしと似たような境遇を持っていた親友。

彼の吐露である決意を固め、こう提案した。


「交換殺人っていうのがあるんだが……」


要はわたしが彼の奥さんを、彼が私の妻を殺害するという方法だ。

これならアリバイが作りやすく、直接的な証拠も残ることはない。


我々は作戦を練りに練った。

計画はこうだ。


関係が冷めきったことは互いに承知している。

そこで、互いの妻に手を出すフリをしておびき寄せるのだ。


「誘い文句はそうだな、“一緒に映画に行かない?”とかでいいだろう。

 ベタなオファーだが昔はよく一緒に映画に行っていたんだ」


我々はXデーを決めたあと、お互いの勝利を信じて解散した。



数日後、わたしは偶然にも親友の奥さんとばったり会ってしまった。


決行日はまだだ。素通りするべきか?

一瞬迷ったものの、不自然な対応は避けるべく軽めに挨拶をした。


「やぁ、こんにちわ」


奥さんは微笑みながらこう返してきた。



「あら、お久しぶりです。

 ちょうど先日奥さまと映画の話をしてまして……。


 ……どうでしょう? 今度一緒に観に行きませんか?」





(すこし・ふしぎシリーズ『Xデー』 おわり)

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