第96話「前世では平凡な能力と役に立たない資格しかなかった事務の地味女ですが、異世界転生して勇者になったと思いきや何故かイケメン魔王の秘書をしてます。」
アマツガネ アケミは、早朝まで働いていたオフィスで仕事がいち段落し、大きなため息をつく。ふと振り向くと、上司のレクタムが温かい缶コーヒーを差し出していた。アケミは、レクタムの色気ある笑顔にドキドキしつつも、彼との関係を整理する。
「はぁ・・・。」
大きなため息をついて、アマツガネ アケミはノートパソコンを閉じた。
「やっと仕事終わったぁ~!」
今は明け方。アケミは誰もいないオフィスでひとり、伸びをした。
「・・・お疲れ。」
「ふぇ?」
ほっぺたにピタと温かな缶コーヒーをつけられアケミはそのままの姿勢で首だけを動かし後ろを見上げた。
「あ、あんた、いたの!?」
アケミは驚きでひっくり返りそうになった。
「いつも遅くまでお疲れ様。」
ニコリと笑ったのはアケミの上司であり、この会社の社長であるレクタムだった。
受け取った缶コーヒーはどうやら猫舌のアケミのために買ってから少し置いてぬるめにしてあるようだった。
その絶妙な温度加減はアケミの好みを全て把握している証だった。
「遅くまでって・・・もう朝だし。しかもアンタがしっかりしてないから私がやってるんでしょ。」
カシュ、と缶コーヒーを開け、アケミはまたしてもため息をついた。
グ、と苦味のあるブラックコーヒーを喉に流し込み、香り立つカカオのアロマをしばし口の中で楽しんだ。
レクタムは机の上に軽く腰掛けアケミの方に体を傾けた。
「そうさ。だから俺にはアケミが必要だ。」
そして、レクタムはアケミの顎にス、と手を回しその瞳を覗き込んだ。
爽やかだが、色気のある笑顔で迫られアケミはドキドキが止まらなかった。
「・・・おっと、もうこんな時間か。みんな出社してくるしシャワーでも浴びなければ。」
アケミが覚悟を決めて、目を閉じた瞬間、レクタムはスタッと少しはねて立ち上がりさっさと行ってしまった。
長身ですらっとしていながら筋肉もついたスーツ姿を見ながらアケミは顔を赤らめた。
もう、いつもこうなんだから。
からかっているのか、本気かは分からないが、アケミにしか見せない姿がある。
レクタムはこのレクタム商事の創業者にして社長である。
普段はキリッとしていて、どちらかといえば少し厳しめな社長だと思われている。
いわゆる、ワンマン社長のパワハラ上司であるが、アケミにはそれとは違うお茶目で可愛らしい姿を見せる。
「あ、私もシャワー浴びないと・・・」
呟いたアケミの言葉が聞こえたのか、レクタムがドアの前で立ち止まり、いたずらな笑顔を向けた。
「アケミも一緒にシャワー浴びるか?」
「うるさいバカ!」
アケミは怒ったが、それが本気ではないことをレクタムは知っていた。
「はいはい。残念だなぁ。」
ドアを開け、レクタムが去って、誰もいないがらんとしたオフィスをぼーっと見ながらアケミは自分の状況を整理した。
アケミの務めるレクタム商事はこの異世界”ビジネスライク”の物流・小売・卸・インフラから何から何まで全てを牛耳る一大グループだ。
一強グループといってもいいかもしれない。
かつて、いくつもの企業がこの異世界の覇権を争う中、M&Aを繰り返しこの異世界を支配することになったのがレクタム商事だった。
そして、レクタムは畏怖の念を込めて、魔王と呼ばれるようになったのだった。
アケミはレクタムが魔王としてこの異世界を支配している時、転生の女神エルレケネンによって異世界転生し、レクタム商事のライバル会社から産業スパイとして送り込まれて、ついにレクタムの秘書になったのだった。
当初、アケミはこの異世界を救うべく、レクタムの弱点を狙っていたが、知れば知るほど完璧なレクタムにだんだんと魅了され、ついには自分でも預かり知らぬうちに恋に落ちてしまったのだった。
最初はレクタムに大してとてつもない嫌悪感があったのにも関わらず、だ。
あまりにも気持ちが悪いものだから毎日トイレで吐いてしまっていたくらいだ。
段々と自分好みのイケメンだということに気がつき、今となっては常にドキドキが止まらなかった。
その時、”魔王連合”と名乗る団体が現れた。
”反逆の女神”ウルレカッスルによって招集された他の異世界の魔王たちとは、当初は利益を同じくするということでレクタム商事と”魔王連合”には”業務提携関係”が結ばれた。
しかし、”魔王連合”によってアケミを送り込んだライバル企業を始めとした競合他社が買収され、レクタム商事の一強というこの異世界の勢力図が塗り替えられていっていることが発覚した。
”魔王連合”の目的は異世界転生者を葬り去り、各異世界の統合と統率とのことだったが、レクタムは魔王でありながらこの異世界の名の通りビジネスライクな思考の持ち主であったため、
自分自身、そしてこのレクタム商事こそが他の異世界も含め支配することを目的としていた。
つまり”魔王連合”とレクタム商事では目指す方向性こそ同じであるものの、それぞれの優位性を保ちたいという思いがあるのだった。
アケミは自分が異世界転生者であることはひた隠しにしているため、”異世界転生者を全て滅ぼす”という考えの”魔王連合”にいつバレるかとヒヤヒヤしていた。
そこで両者の齟齬に気づいたアケミの提案によって”業務提携関係”は解消され、レクタム商事は”魔王連合”とは敵対することになったのだった。
まさにそれが一週間前の出来事だった。
アケミが連日、まともに睡眠できず、事務処理に追われているのは”業務提携関係”の解消に伴うものだった。
「はぁ・・・自分が撒いた種とはいえ、辛い・・・。」
ぐぐっとアケミはコーヒーを喉に押し込み再びパソコンに向かった。
しかし、アケミがやっとの思いで机に向き直ったのに巨大な破裂音のようなものが空に響き渡ったのはその時だった。
作者のほか作品もぜひご覧ください!
・異世界転生殺し
https://ncode.syosetu.com/n8355gr/
・SEX ANDROID(完結)
https://ncode.syosetu.com/n9297hx/
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