第91話「王たる聖騎士」
異世界転生者たちは、強力なカウンター能力を持つ凶王に立ち向かうが、全ての攻撃が跳ね返され苦戦していた。凶王は、魔王マクスガムや異世界の残留思念が融合した存在であり、異次元の力を誇る。仲間たちの攻撃が効かない中、ゾーレは凶王のカウンター能力に疑問を抱き、ある重要なことに気づく。
「凶王。いや、魔王マクスガム、あなたはお父様なの?」
ゾーレは凶王に言った。
「てめえはゾーレ。いや、確か対ヒーローデリートシステムだったか?」
ニヒヒと下品に笑う凶王の姿からは優しく気品があり、偉大だった父の面影は感じなかった。
「・・・・・・。」
ゾーレは黙っていた。
「・・・分かった。答えてやろう。俺様が何者かっつー話だな。実は俺様自身にも分からねぇんだ。
混濁した記憶があるだけでどれもあやふやだ。
おそらく、俺様は色々なやつの思念が融合した存在なんだろう。」
凶王は珍しく静かにそういった。
「なるほど。異世界同士の融合の際に様々な人々の残留思念が集まった・・・。
いや、魔王という異世界を構成する核を失わないために異世界自身が無理やりその存在を存続させたとしたら・・・」
ユークリートは何やらぶつぶつと言っているが、デリトたちには意味が分からなかった。
「だが!」
凶王はニタリと笑って声を張り上げた。
「俺様は俺様だ!・・・もともと何者であったにしろ、それは間違いない。」
そう言うと凶王はゾーレへと襲いかかった。
「チッ、それなら、お前の中の魔王マクスガムを呼び起こしてやるまでだ。」
凶王の拳がゾーレに届く直前、デリトの拳がそれを受け止めた。
「・・・そうこなくっちゃなぁ。かかってこい!異世界転生者どもよ!全員まとめてぶっ飛ばしてやる!
<王たる聖騎士>!」
そう言うと凶王の鎧は変化し重厚なものへと変わり、馬が現れた。
「異世界転生者どもにも匹敵する”騎士王”の力と魔王マクスガムや異世界に残った思念が合わさったのが俺様の真の姿だというのなら。
俺様の力、お前らに見せてやるよ。」
凶王は馬の腹を蹴って駆け出すとデリトに向かって槍を突き出した。
「・・・異世界転生者だけじゃない!私もいる!」
デリトに突き出された槍をゾーレが弾き飛ばした。
「おうおう、やるじゃねぇか。」
「貴方には、魔王マクスガムには、聞かなきゃいけないことがあるの。私が何者か。対ヒーローデリートプログラムとは何なのか。」
「なら、お前ら全員で呼び起こしてみろ!エライト、ガイデンラーフェ、てめえらは腰抜けか?
全員で一気にかかってこいって言ってんだよ!」
「やってやろうじゃん!<ファイアパレス>!」
ガイデンラーフェはSクラスの炎魔法を繰り出した。
「<ライト・ウォーカー>!」
「<インフィニット・ウェポン>!」
エライトとデリトも同時に攻撃を繰り出した。
「<バイコーンズ・ソード>!」
ゾーレも合わせて双剣で攻撃を仕掛けた。
「俺っちも加勢するぜい!」
ボッチェレヌもルシファーの姿になり、剛速でパンチを繰り出した。
「<オート・カウンタ>!」
「ぐはっ・・・!」
ほぼ同時に攻撃したのにも関わらず吹き飛んだのは、異世界転生者たちの方だった。
凶王が奪った騎士王のカウンター能力は異世界最強をさらに超える力を持つ異世界転生者たちを上回ったのだった。
デリトは<インフィニット・ウェポン>によって一度に100の武器を他の仲間に当たらないように撃ったが、全て弾き返されてしまった。
エライトも時間を超え、過去と未来に移動して攻撃したが何故か弾かれてしまった。
凶王の腕ではいつの間にか腕は6本に増え、大剣や槍、盾を始めとした様々な武器をもっている。
「腕を隠していたのか・・・!」
「しかも早い・・・!どういうことだ、時を超える僕の攻撃が・・・!」
「無駄無駄・・・!時を超えようが何をしようが、俺の<オート・カウンタ>は”全ての攻撃を弾き返す”!
騎士王のXクラススキルは時間や空間の概念を超越した能力なのだ。ハハハハハ!」
高らかに笑う凶王に、異世界転生者たちは何度も攻撃を仕掛けたが全てに反応し、反撃をする凶王の前に成すすべが無かった。
さらに、異世界転生者たちが与える攻撃が強ければ強いほど、<オート・カウンタ>から跳ね返ってくる攻撃が強くなるのだった。
「なら!<キッチン・オブ・グランデ>!」
最後尾で戦いを見守っていたモレネは調理を始めた。
通常の人々に比べるとあきらかなチートステータスは持っているモレネだが、”O.W.H.L.”の面々に比べるとそこまでは強くはないのでいつもは身を潜めている。
ここぞというところで登場し、調理による強化魔法をかけるのだ。
今回は少し時間がかかるがいつもより強力なバフをかける”権能”を使用した。
その間、異世界転生者たちは色々な攻撃方法を試そうとしていた。
「攻撃が跳ね返ってくるのならば、攻撃しなければいい!」
そう言ってボッチェレヌは筋肉隆々のルシファーの姿で憮然とした態度で攻撃を待ち構えたが、結果としてただ凶王に攻撃されてふっとばされた。
「だからどうした!」
「ぐえー。」
「大丈夫か!ボッチェレヌ!」
「あのバカは放っておけ!」
ボッチェレヌを心配して走り出そうとしたエライトを引き留めてデリトは凶王に向き直った。
あいつのことは自分が良く知っている。
ハリウッド映画とかで、ナンバリングが変わってもなかなか死なないラスボス並にタフなヤツだ。(何の映画とは言わないが)
「良し!できたよ!そこの池で取ったマオウナギの蒲焼きを使ったうな重、そして、ギガンティックはまぐりのお吸い物だ!」
ポンと出てきたモレネの料理は異世界転生者たちに強力なデバフを与えた。
炭火焼きの香りが漂う柔らかく肉厚なウナギ、はまぐりの濃厚かつあっさりとしたお吸い物の組み合わせは腹を満たすだけでなく、気持ちも満たして、強力に防御力と攻撃力を向上させた。
「次こそ!<ライト・ウォーカー>!」
「そろそろ効いてくれよ!<黒炎の棺>!」
「<ファイア・ハリケーン>!」
「<バイコーンズ・ソード!>」
今のゾーレを含む異世界転生者たちの攻撃力は過去最高値と言っても過言ではなかった。
あまりにも高い攻撃力で<オート・カウンタ>を上回ろうという魂胆だった。
「いくら攻撃力を高めようとも意味なんかないぜ!<オート・カウンタ>!」
凶王は6本の腕で、エライトの光の速度を上回る速度で動き、全ての攻撃を防ぎながら反撃した。
「ぐは・・・!」
過去最高値の攻撃力だったため、跳ね返ってくる攻撃も過去最高であるのは自明の理で、異世界転生者たちは遥か遠くへ吹き飛んだ。
「まだまだぁ!」
一方、ボッチェレヌは立ち上がり蹴りや拳を使いながら攻撃を連続で打ち込み続けている。
「次は数で押し切ろうってかぁ!?」
凶王は笑って攻撃を受け流しながら弾き返していた。
その時、ゾーレが何かをひらめいたようだった。
「待って・・・。全ての攻撃を自動で弾き返すスキルなら、なんで騎士王は凶王の攻撃を弾き返せ無かったの・・・?」
「ゾーレ・・・!」
おそらくゾーレはずっと頭を回転させていたのだろう。
「そうか、攻撃対象を凶王にするからいけないんだ。」
デリトはゾーレの言葉をうけてある可能性にいきついた。
「どういうことだ。」
エライトがデリトの肩を掴む。
「奴は騎士王を攻撃した時、騎士王を攻撃したんじゃない!」
デリトは叫んだ。
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・異世界転生殺し
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