第90話「凶王の誕生」
魔物の首領ガトウッズは凶王が生まれた経緯とその驚きの正体を明かす。
ガトウッズは異世界”タンファージ”の魔王軍の要であったが、魔王城に繋がる巨大な橋レイノラレイクブリッジで異世界転生者ブラックウィンドに負けた。
極悪非道なブラックウィンドによってガトウッズが突き落とされた魔王城の浮かぶレイノラレイクは深く広い湖だったが、ガトウッズはなんとか一命をとりとめた。
その後、他の魔王軍のモンスターとともに魔王城にかけつけたガトウッズが見たのは息絶え、魂も失われたただのからっぽのブラックウィンドの死体だった。
ガトウッズたちは直前に、まばゆい光を目撃しているが、それはちょうどデリトたちがウルレカッスルによって異世界”ゴブリンズスレイブ”に転移した瞬間だった。
「おお・・・さすが魔王様、ブラックウィンドめを倒したのか・・・。はっ、ゾーレお嬢様は・・・?」
ガトウッズは魔王マクスガムがブラックウィンドを倒したものと勘違いしていた。
ゾーレのことは小さいときから知っており、戦闘一筋で妻も娘もいないガトウッズは姪か娘ができたようで昔から可愛がっていたのだ。
それから数ヶ月、ガトウッズは全世界に散らばった魔王軍のモンスターたちをまとめていき、ゾーレと魔王マクスガムを探したが見つからなかった。
その間、魔王軍と敵対していた勇者軍、つまりブラックウィンドに加担していた勢力が実は異世界転生者によって無理やり協力させられていたことを知り、
和解することができた。
しかし、異世界転生者ブラックウィンドと魔王マクスガムがいなくなった日から異世界”タンファージ”に謎の黒い霧が多発するようになった。
それは日に日に濃くなりやがてタンファージ中を覆うほどとなっていった。
さらに同時に起こったのが地割れだった。
地割れとともにタンファージ中の大地や街は浮き始め、やがてタンファージの住人はその割れ目の下に空が広がっている事に気づいた。
やがて、地割れは大きくなり、ついに地面が完全に割れて、空を飛ぶ島々になっていった。
そして辺りは黒い霧が濃くなり始め、周囲の状況が見えなくなってきた。
魔王軍のガトウッズたちは島々を渡るために橋をかけたが、ある時、大きな影が目のまえに現れた。
その影はガトウッズたちが数カ月ぶりに魔王城へと訪れた際に、突然現れた。
「ガトウッズ・・・」
「何だ貴様は!?なぜ俺の名前を知っている?」
ガトウッズは新手のモンスターかと思い、斧を持って身構えた。
「分からない・・・。だが、私は以前ここにいた。敵と戦い、破れたのだ。」
「何・・・!?」
ガトウッズは色々な可能性を考えた。
いかにもパワー系な見た目とは裏腹に、彼は頭の回転が早く、だからこそ今まで魔王マクスガムの代わりに魔王軍残党をまとめ上げることができたのだ。
「まさか魔王様か・・・?娘は、ゾーレ様はいたか!?」
影を前にガトウッズは、目の前にいる影が魔王マクスガムではないかと考えたのだ。
「そうだ・・・私には娘が・・・、娘がいた・・・。おお・・・ゾーレ・・・!?」
形ははっきりしないが、影は頭を抱えてうめいているようだった。
「貴様の名前はまさかマクスガムではないのか!?我らが主、魔王マクスガムではないのか?」
ガトウッズの問いに影はうめいて答えた。
「・・・思い出せない。私は一体・・・。」
影はそこで消えた。
その後もガトウッズは魔王城へ足を運び、再び魔王マクスガムのいた大広間で影と出会った。
「魔王様・・・!どうか我らをお導きください!大地は割れ、空にも地面にも空が広がり、黒き霧が世界を覆っています・・・!」
「分からぬ・・・分からぬ・・・!」
またしても影は消えた。
それからは毎日それが続いたが、次第に影の様子が変わっていった。
当初は何も分からないと言っていて、口調も魔王マクスガムのそれだったものが、粗野な様子で命令を下すようになっていたのだ。
今や、タンファージは黒い霧につつまれていてほとんど周りが見えない状況になっていた。
「てめえら、俺様の指示を聞けるか。」
影は目の前に集まった魔王軍の残党に向かって言った。
「はっ、魔王様の仰せのとおりに!」
魔王軍残党をまとめるガトウッズは頭を垂れた。今や目の前にいるこの影こそ魔王マクスガムそのものなのだと思っていた。
「ふん・・・魔王ってのも捻りがねえな。・・・いいか、俺様の名前は”凶王”だ。
この異世界にとっての”元凶”として破滅をもたらすものだ。」
「はっ!凶王様!」
ガトウッズは凶王の最後の発言が少し気になりはしたが、指示に従うことにした。
魔王軍残党を始め、”タンファージ”をまとめる存在となっていたが、各地で反乱や問題が起こり、異世界をまとめる重荷から解放されたかったのかもしれない。
それからガトウッズは凶王に言われるがまま、魔王軍の飛行部隊を率いて黒い霧の外へと向かった。
黒い霧の外にも見たことのない異世界の国があるのを発見し、凶王の指示に従って攻撃を仕掛けていったのだった。
それが騎士王と呼ばれる勢力と魔女王と呼ばれる2つの勢力が争っているエリアだというのはすぐに分かったのだった。
そう、いつの間にか異世界”タンファージ”は別の異世界”マジックキングダム”と融合していたのだった。
凶王の勢力は魔女王と組むことになり、奇襲のため凶王と魔女王単身で騎士王の城に攻撃を仕掛けに行ったが、凶王だけが戻ってきた。
騎士王の姿で。
「これが俺が知っている全てだ。」
ガトウッズは、ふうと、息をついて話し終えた。
「魔王マクスガムが生きていただと・・・?」
デリトは衝撃を受けた。
確かに、ブラックウィンドに倒される姿を見た。
「しかし、おかしいじゃないか。異世界”タンファージ”と異世界”マジックキングダム”は別々の異世界だろ?
2つの異世界が融合するなんてことありえるのか?」
エライトは険しい顔をした。
「・・・実はその現象には心当たりがあります。」
今まで黙っていたユークリートが口を開いた。
「何だと?・・・何故今までそれを黙っていた?」
「今まで確信を持つことができなかったからです。ただ、今回のお話で全てが繋がってきました。
今までも勇者と魔王がいなくなった異世界では、その異世界そのものの存在が不安定となり、他の異世界にとりこまれるという現象が報告されてきました。」
デリトの詰問にユークリートは答えた。
「なるほど。異世界は勇者と魔王の戦いの物語がエネルギー源となり世界そのものの核となっている。
それが無くなれば・・・」
エライトはそこまで言うとハッと気づいた。
デリトもエライトと同じ可能性に当たったらしく、暗い顔で俯いた。
「つまりそれこそがウルレカッスルの狙いということか。俺が異世界転生者として、さらに”異世界転生殺し”として勇者や魔王を同時に葬り去る。
そうすることで異世界をどんどんつなげていく。そういった狙いなのか。」
「だけど狙いが分からない。どうしてウルレカッスルはそんなことをするの?」
ゾーレは不安げに眉をひそめた。
「うーん、異世界を全て統一したあと、全ての異世界の王になって世界征服!とか?」
ボッチェレヌは半分冗談半分本気でそれを言ったが、ウルレカッスルの真面目な性格を知っているだけに、どうもしっくりこなかった。
「しかし、異世界の融合は知っていましたが、新しい魔王が生まれるなんて初めての現象です・・・。
何かが起こっているのは確かです。」
ユークリートがそう言うとみな、押し黙ってしまった。
それぞれ、考えを巡らせていたが答えは出なかった。
「ゾーレお嬢様!」
ガトウッズは叫んだ。
「どうか・・・どうか魔王様をお救いください!俺はあの方が苦しんでいるんじゃないかと思っているんです。
凶王となったあとも時々、魔王様に戻るときがあって。その時にはとても苦しそうな、悲しそうな感じで・・・。」
「・・・・・・。」
影、否、凶王が魔王マクスガムだという証拠は無いのでなんとも言えないが、目の前にいるガトウッズは本当のことを言っているようだったし、
長年、魔王マクスガムにつかえてきた彼の直感をゾーレは信じたかった。
「・・・とにかく向かおう。魔王城はどこに?」
デリトはガトウッズに言った。
「案内しましょう。こちらの船は空飛ぶ魔法の船をお見受けしましたが、自由に飛べるのですか?」
「ああ。いくらでもスイスイいけるよ!形も変えられるし!」
ガトウッズの問いにガイデンラーフェは答えた。
10分後、一行は他の空を飛ぶ島々と比べ、一段と高いところを飛ぶ魔王城へとやってきていた。
さすがに異世界が丸々取り込まれ、変化しているだけあって、ガイデンラーフェの超高速の飛空艇をもってしてもたどり着くまでなかなかの時間がかかった。
「こんなふうになってしまったの・・・」
ゾーレはかつての自らの家が変貌した姿を見て絶句した。
幼少期よく駆けていた広大な庭は割れて分裂し、魔王城はほとんどボロボロに崩れていた。
さらに魔女王と凶王による人工生命体デッドリィがうようよと壁を這っていた。
「行こう。大丈夫だ。俺らがいる。」
デリトはゾーレの肩を叩いて勇気づけた。
「はぁい。」
一行が行こうとしたその時、女性の声がした。
「誰だ!」
エライトとデリトは武器を向けたが、その女性はゾーレたちの会ったことのある人物だった。
「ちょっとちょっと。私は味方よ。」
そう言って手を上げたのは異世界”タンファージ”でデリトが殺した転生者ブラックウィンドの仲間イライだった。
「お前は・・・誰だっけ?」
ボッチェレヌが知らないフリをするとその顔にイライの武器である鋭いブーメランがザクッと突き刺さった。
「どうしてお前が?」
驚いてデリトが聞いた。
「あら、意外だった?ガトウッズがまとめたのは魔王軍だけでなくブラックウィンドの言いなりになっていた勇者軍も同じよ。」
「いや・・・」
デリトは被りを振った。
「・・・もしかして、私がブラックウィンドのことを殺したあなたのことを恨んでるんじゃないかと思ってるんでしょ。
・・・残念、どうかしてたわ。あんなヤツに心酔するなんて。アイツは私の両親も殺したのよ。」
「・・・・・・。」
デリトは黙っていた。
「あんたには感謝してるわ。おかげでブラックウィンドと旅してたときにいがみ合ってた子たちと、一緒に仲良くできてるわけだし。」
イライはすたすたと歩いていった。
実はデリトは彼女たちがブラックウィンド亡き後、どうなるのか心配していたのだ。
だが、心配することも無かったなと思い直し、フッと笑った。
イライの案内で、デッドリィのいる場所を避けながら凶王がいるという魔王の間へとたどり着いた。
「・・・・・・。」
ゾーレは黙って自分がかつて住んでいた場所の残骸を見ていた。
彼女には、父である魔王マクスガムと過ごした日々が蘇っていた。
「やはり追ってきたか・・・。」
そう言って物陰から現れたのは騎士王の姿を借りた影、凶王だった。
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