第89話「暗黒大陸」
デリトたち一行は「魔王連合」の新入りである凶王を追い、暗黒大陸へと向かう。飛空艇に乗りながら、デリトはユークリートに凶王について質問するが、彼女も詳細は知らない。凶王はこの異世界に突然現れた新たな魔王らしく、謎に包まれていた。暗黒大陸に到着すると、一行は魔物たちの襲撃を受け、激しい戦闘が繰り広げられる。その後、デリトたちはゾーレの知り合いである魔物の首領ガトウッズと再会し、驚きの展開が待ち受ける。
一行は”魔王連合”の新入りである凶王を追って、彼の軍勢がいるという暗黒大陸へとやってきていた。
「凶王とは何者なんだ?この異世界の魔王である魔女王と組んでいるということだったが、他の異世界から来た存在なのか?」
デリトは前にいるユークリートに聞いた。
ユークリートやエライトをはじめとする”O.W.H.L.”の面々はガイデンラーフェの魔法で出現させたガレオン船のような見た目の大型の飛空艇に乗っていた。
異世界転生者のチートな脚力を持ってしても、跳んでいくのには半日はかかるであろう空飛ぶ島々の間をすいすいと高速で行く飛空艇の旅は悠々時適なものだった。
”異世界転生大魔道士”ガイデンラーフェの”権能”は”MP∞×魔法力超増大”で今の飛空艇もさすがに”管理者の方舟”ほど巨大ではないが、とても巨大な図体の割にはかなりの高速で移動していた。
「凶王のことは実は私にも分からないのです。異世界転移して他の異世界から来ない限りは、ひとつの異世界に2人の魔王が現れることはないのです。
”魔王連合”の奴らが言っている感じだとどうやら凶王はこの異世界に突如湧いて出てきた新しい魔王のような感じでしたが・・・。
それこそ、そこの堕天使魔王さんが分かるのでは?」
ユークリートはじとーっと胡散臭そうな目をルシファーに向けた。
「おいおい、そんなに見つめんなよ。俺っちに惚れてんのか?
確かになぁ、ふわふわのぬいぐるみだったはずのやつが・・・」
「ぬいぐるみの方が良いです。」
ルシファーはからかったが、ユークリートはぴしゃりと言ってぷいっとそっぽを向いてしまった。
「分かったよ。ぬいぐるみに戻りますよ、じゃあ。」
ポンと軽くは弾けるような音がしたかと思うと、ルシファーはボッチェレヌの姿に戻っていた。
「そういえばお前のことはルシファーと呼んだほうが良いのか、ボッチェレヌと呼んだほうが良いのか。
慣れない・・・。」
デリトはぬいぐるみの姿に戻ったルシファーを見て困惑した表情を見せた。
「どちらでも。今更ルシファーと呼ばれるのも何か気恥ずかしいしな。」
ルシファーことボッチェレヌはフッ、と笑ったがその姿は元通りのボッチェレヌの姿だった。
一行は暗黒大陸の中に入ってきた。
ここまでは雲も多くなかったが急激にどす黒いような灰色のようなもくもくとした雲が増えてきた。
暗黒大陸とはいくつかの暗い空を飛ぶ島々の集合体の呼称だとガイデンラーフェは言ったが、まさにその通りで、どの島々も不気味な廃墟といったふうだった。
人は住んでおらず、目だけが爛々(らんらん)と光るゴブリンのような魔物や牙がぎらりと光るオークのような魔物が多くいた。
「凶王というのは俺っちも詳しくは分からないんだが、」
少し経ってボッチェレヌは話し始めた。
「本当にここ最近で異世界”マジックキングダム”に現れた存在らしい。厳密にいうとウルレカッスルも魔王かどうかも分からないようだった。
この異世界の魔王である魔女王レゼッロペリンの推薦で今回”魔王連合”に加わるかどうかという感じだった。」
「なるほどな。それで合点がいった。
”反逆の女神”が去る際に凶王を置いていったのは、推薦した魔女王が死に、どういった存在なのかよく分からなかったからというわけだな。」
エライトが腕を組んで歩いてきた。
「まぁ、それに関しては”剛力のセクタスネ”も置いていってしまったようだし、微妙なところだがな。
よっぽど”方舟の鍵”が効いたとみえる。」
ニヤリとボッチェレヌは笑った。
デリトは不思議な感覚を覚えた。
「でやんす」と話してた時と比べ、ルシファーだった時の本来の語り口調になったボッチェレヌの姿は多少違和感を覚えるが、その姿は本来のデリト自身でもあると言えるので妙に懐かしさを感じるのだった。
辺りは一段と黒い雲が濃くなってきていよいよ暗黒大陸の中心部に入ってきたのだと感じた時、周囲の島の廃墟から何かが降ってきた。
「何だ!?」
エライトやデリトを始め、”O.W.H.L.”の面々は武器を構えた。
じりじりと近づいてくるそれは数十体にも及ぶ魔物だった。
「囲まれたか・・・」
「皆、殺すなよ。凶王が何者なのか。どこにいるのか知る手がかりだ。」
デリトは敵に聞こえないよう、一行に告げた。
戦闘は突然始まった。
適の魔物達が一斉に走り出し、同時にデリトたちに襲いかかってきた。
数十倍もいる魔物たちによって”O.W.H.L.”の異世界転生者たちはやられてしまったかと思われた。
「我々に勝てるなどと・・・」
魔物のひとりがそういいかけた時、数十体の魔物は一度に吹き飛んだ。
「ただの魔物程度で俺らに勝てるとでも?我々は堕天使一行様だぞ!」
ドヤ顔をしたのはもちろんボッチェレヌだったが、今は堕天使ルシファーの姿では無くぬいぐるみのボッチェレヌの姿のため、何の役にも立っていなかったのは言うまでもなかった。
「つ、強い・・・!」
「堕天使だと・・・?」
魔物たちが恐れる中、後ろから怒号が飛んできた。
「てめえら!こんなんじゃ、親方様に怒られるぞ!やれー!」
あたりは薄暗くその魔物はデリトたちから遠く、詳細な姿は分からないが、ひときわ大きな姿でそれに見合うだけの大きな声だった。
「ん・・・?この声・・・」
ゾーレはいぶかしげな顔をしたが、辺りにのびていた魔物たちはガバっと起き上がり再びデリトたちに襲いかかってきた。
「この船を操りながらでも僕は攻撃できるよ!<ファイアウォール>!」
ガイデンラーフェは魔法で作った炎の壁で敵を火傷させた。
「<インフィニット・ウェポン>!」
デリトはガイデンラーフェの攻撃の合間を縫って上手く急所を外しながら10個のショットガンで敵の足や腕を打ち抜き、戦闘不能にしていった。
「光の速さについてこれるとでも?」
エライトは消耗の大きい<光よ、時間を超えろ(ライト・ウォーカー)>は使わず通常の”権能”でデリトと同じく急所を外して攻撃していった。
「ステータス強化中心にどんどん行くよ!<ファステスト・キッチン>!<アファイ>!<ターウォ>!」
モレネは攻撃に参加することもできたが、今いるメンツで十分だと感じ、サポートに徹することにした。
「ぐぁぁぁぁ・・・!」
魔物たちは異世界転生者たちのあまりの強さに成すすべなく全員無力化された。
「えいっ」
ガイデンラーフェが明かり代わりに船の上空に炎を灯すと、魔物と異世界転生者たちはお互いの姿をきちんと認識した。
デリトが<スパイダー・ストリングス>で縛り上げた魔物たちの姿が暗闇に浮かび上がった。
「えっ」
「えっ」
間抜けな声を上げたのは意外にもゾーレと魔物の首領ガトウッズだった。
「ゾ・・・ゾーレお嬢様・・・?」
「ガトゥ・・・なんでここに・・・?」
ふたりとも驚いた顔でお互いを見ていた。
ガトウッズは牛の頭を持つ巨躯の魔物でいかにもパワータイプといった見た目をしていた。
「何だ、ゾーレ知り合いか?」
「う・・・うん。」
デリトが聞くとゾーレは小さく頷いた。
「ゾーレお嬢様生きていらしたのですね・・・!てっきりブラックウィンドに・・・。おお、良かった!
それではこいつらはお嬢様の家来ですか?」
ぱぁっとガトウッズの顔が明るくなったが異世界転生者たちは眉毛がぴくっとなった。
「家来だぁ?」
ポンと音がすると、ルシファーの姿に戻ったボッチェレヌがつかつかと歩み寄り、ガトウッズの顔の間近でガンを飛ばした。
「違うの、ガトウッズ!この人たちは私の仲間よ。家来どころか私は足手まといになってしまっているくらい。
そして、ここにいるデリトは私の命を救ってくれた恩人・・・。」
ゾーレは何か他にいいたそうだったがデリトに見つめられているのを見た瞬間、顔を赤らめてそむけてしまった。
ぽかんとしているデリトの顔をボッチェレヌがニヤニヤと覗き込む。
「なんと!まさかあのブラックウィンドを倒したと!」
ガトウッズは驚きのあまりあんぐりと口を開けた。
「・・・ああ。ひとひねりだったな。」
「いやいや、旦那はアイツの弱点を解明するのに1年もかかったでしょうが。確かに弱点さえ分かってしまえばひとひねりみたいなもんだったけど!」
どや、と胸を張ったデリトをボッチェレヌがバシとツッコんだ。
「この人はガトウッズ。私の父の、異世界”タンファージ”の魔王マクスガムの親衛隊長にして魔王軍最強の戦闘力を持つ猛将よ。」
「いえいえ、そんなめっそうもございません!私などあの悪逆非道のブラックウィンドに倒され、死ぬこともできずに生き延びてきた身でございます。」
ガトウッズはその巨体ににあわず可愛らしく頭をふるふると振った。
ゾーレはこれまでの冒険をかいつまんで話した。
「そうでしたか・・・それにしてもお嬢様ご立派になられて・・・。」
「ふふ・・・そうかしら・・・。」
いつもはあまり喋らないが、こうやって楽しく話している姿を見るとゾーレもやはりお嬢様なのだなとデリトは思った。
「それにしてもガトウッズはこの異世界の住人ではないのになぜここに・・・?」
「それがですな・・・」
ガトウッズは自分と自分の家来たちの身に起こったことの顛末を話し始めた。
作者のほか作品もぜひご覧ください!
・異世界転生殺し
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・SEX ANDROID(完結)
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