第88話「お前が俺で。俺がお前で。」
デリトとルシファーは激しい戦いを繰り広げ、仲間たちは次々と倒されていく。しかし、ルシファーには隠された真実があり、女神長ユークリートによってで状況が一変する。デリトは自分の過去と仲間たちの運命に向き合うことになり、戦いの行方は大きく揺れ動く。
ルシファーとデリトは激しい戦いの応酬を続けていた。
「オラオラオラ!」
「無駄無駄無駄!」
某能力系マンガよろしくのスピード感と勢いでデリトとルシファーは銃弾と拳の雨をお互いに浴びせていた。
二人の能力は互角と言っても過言ではないもので、スピード、パワーなどのぶつけ合いの様相となっていた。
「はっはー!どうしたどうした!こんなものか!?」
「くっ・・・。」
ただ、微妙にデリトの方が押される展開となっていることも確かだった。
デリトがSクラススキル魔法<インフィニット・ウェポン>を中心にいくつものSクラス、Aクラス魔法を駆使しているのに対して、ルシファーはその身に宿す高い身体能力だけで魔法を防いでいる。
チートステータス<魔法無詠唱>によってデリトは魔法をほとんどのラグが無く繰り出すことができるが、
それでも多少の遅延があるので、体を使っているだけのルシファーからすればその一瞬のラグは重なれば大きな隙となるのだった。
気づくと、ルシファーの背中からはいつの間にか6枚の大きな翼が生えていた。
ついにデリトの攻撃は破られ、再びルシファーに思い切り殴られてしまいその体は吹き飛んだ。
「ぐはっ・・・!」
「そこで寝てな。旦那。後でちゃあんと遊んでやるから。」
ルシファーは倒れているデリトにそう言うと向きを変え、瞬時にエライトの背後へ回った。
「なっ・・・!」
「もらった。」
這いつくばったデリトの目からはルシファーの鋭い拳でエライトの体が二つ折りになり、壁に激突して動かなくなるのが見えた。
「エライト!」
ガイデンラーフェはそれを見て叫んだが、すぐに背後に気配を感じた。
「人の心配をしている場合か?」
「くそっ、バリア・・・」
デリトと同じくガイデンラーフェも<魔法無詠唱>や、ガイデンラーフェだけが持ち得る<魔法防御力MAX>などのSクラススキルを持っているが、それでも間に合わず彼もルシファーの攻撃に落ちた。
「くそっ、またしても・・・。」
デリトは這いつくばりながら地面を拳で叩いた。
自分のいた異世界<リード・ワールド>でルシファーに仲間たちを殺された時のように成すすべもなく、エライトたちを殺されてしまうのだろうか。
と、その時、高く艷やかな声が聞こえた。
「”異世界転生殺し”デリト!しっかりしなさい!<デバフ解除>!」
魔法をかけられた後、パシッ、と頬を叩かれてデリトは目の前に急に現れた人物に驚いた。
「ユ・・・ユークリート?」
「そうです。正気を取り戻しましたか。デリト。」
目の前にいたのは”O.H.W.L.”を率いる転生の女神長ユークリートだった。
「あれ、俺は・・・!」
「あなたはルシファーによって幻覚を見せられていたのです。そして、他の異世界転生者たちも。」
ユークリートは後ろを振り返った。
エライトやガイデンラーフェがデリトと同じく這いつくばって頭を振っている。
「幻覚だと・・・?」
「ええ。」
「まさか・・・」
デリトは今の戦いと<リードワールド>で相棒であるメイ、そして大事な仲間たちを失った戦いを思い出した。
いつの間にかデリトは仲間たちの死体を前にしていた。
その時、ルシファーは6枚の翼を生やしていなかったか。
「そうか、あの6枚の翼が生えている時、ルシファーの能力が使われるというわけか。」
「・・・その通りさ旦那。」
ルシファーはユークリートとデリトの目の前にいた。
その背中には最初に現れた時のように片翼しか生えていなかった。
「オレっちはウルレカッスルの姉御が他の魔王たちを招集する前から協力していた。
そして、彼女が行っていた実験の第一号だ。その実験とは、とんでもない強さを誇り、絶対勝てないはずの異世界転生者に勝つためのものだ。」
「それは俺の”異世界転生殺し”とは違うものか・・・?」
「ああ。それこそ、今”魔王連合”で使われている”業”。異世界転生者だった時の”権能”を呼び起こし変質させることができる。
オレっちの”業”は超強力な”混乱/幻惑”。残念ながらこれで仲間同士で殺し合わせることもできる。」
「仲間同士で殺し合わせるだと・・・!まさか<リードワールド>でも・・・!?」
「ああ。ご推察の通りさ。旦那の仲間は・・・旦那自身が殺したんだ。俺と戦っているつもりだっただろうがな。」
「貴様!」
デリトはルシファーに殴りかかった。
その拳は少し哀しそうな顔をしたルシファーの顔面に直撃し、ルシファーはそのまま吹き飛んだ。
「お前のせいで!」
壁に激突して落ちたルシファーにデリトは何度も殴りかかった。
顔面が傷だらけになってもルシファーは反抗するそぶりを見せなかった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
デリトは殴り疲れるとがっくりと膝から崩れ落ちた。
「・・・今となっちゃすまないと思っている。ウルレカッスルにお前のことを”異世界転生殺し”にするために、全てを憎む存在にしてくれと言われたとき、俺の中の悪魔が目を覚ました。
お前を絶望させて、全てを殺し尽くすような憎しみの権化にしてやろうってな。」
「いい気味だっただろうな。そんなやつを近くからずっと観察できて。」
「ああ。ウルレカッスルに言われてお前を観察、監視する役目としてボッチェレヌというぬいぐるみの中から見てる時とても愉快だったよ。
だが、それも最初だけだった。」
「・・・・・・。」
デリトは黙っている。
「旦那は知らなかっただろうが。
お前は、俺っちの前世の記憶を入れられた中身は空っぽの兵器なんだ。
でも、お前は俺っち自身なんだ。俺っちと同じ様に考え動く真面目で不器用な男。」
「中身は空っぽか・・・。」
「俺っちは俺っち自身のことは見捨てられなかった。堕天使ルシファーなんて大層なもんじゃない。
堕落してた人間が、またさらに悪に堕落した最低の自分が悲しくなって、哀れになった。」
「だからウルレカッスルのことを裏切ったのか。」
「ああ。謎に仲間意識も芽生えちまったからな。だから、ここで俺っちのことは殺してくれ。
他人の記憶とはいえ、てめえ自身の手で愛する妻にそっくりな女性を殺した、いや、殺させられた事実は変わらねえ。
恨んでるなら復讐してくれ。」
ルシファー自身の記憶とほぼ同義だからこそ、デリトの恨む気持ちは痛いほど分かっていた。
「ぐっ・・・!」
デリトは再び拳に力を込めて振りかぶった。
「やめて!」
しかし、デリトの目の前にいきなりゾーレが現れた。
「なっ・・・ゾーレ!なんで・・・。」
殴りかけたデリトの拳はゾーレの鼻先で止まった。
「二人の間で昔何があったかはよく知らないけど、私は知ってるよ。
二人がとっても仲良しだってこと。私もそんなに長くは無いけど二人と一緒に旅をして、よく分かってるつもりだもん・・・。」
「ゾーレ・・・!」
泣き出したゾーレを二人は驚いて見つめていた。
出会ったときから泣いたり自分から弱いところをほとんど見せていなかったゾーレのこんな姿を初めて見て面食らったのだった。
ゾーレは先程から二人の会話を聞いていたらしく、色々な感情が湧き上がっているらしく泣きじゃくっていた。
「すまない。」
「ごめんな。」
デリトとルシファーはほとんど同時にゾーレを抱きしめた。
それから少ししてデリトとルシファーことボッチェレヌは固く握手をした。
二人の握手をニコニコとゾーレが上から握った。
「俺っちのことを許せとは言わないさ。だが、改めてこれから俺っちは旦那、いや、デリトの仲間だ。」
「もちろん許すつもりはない。俺自身の問題じゃない。
愛する妻に似ただけの異世界人とはいえ、それを殺させたんだ。
魔王になって色々あったんだろうが、俺はお前のその行動が許せない。」
「・・・ああ。」
ルシファーは少しうつむいた。
「だけどな。お前が反省してウルレカッスルを止めるっていうなら今の所は勘弁してやろう。」
「はは。こりゃ参ったな。」
ニヤッとデリトは笑い、ルシファーも少し気まずそうに笑った。
「俺っちの記憶を植え付けちまってすまないな。」
「変なことをいうな。俺が前世の記憶だと思っていたものはお前の記憶だ。
俺の本当の記憶は、本当の俺は、お前と旅を始めたときから始まった。」
こうして二人は一旦は和解となったのだった。
デリトとルシファーの戦いが一段落した一行は凶王を追うことになったが、ルシファーはユークリートに呼び止められた。
「あなたの”業”は簡単に私に解かれました。ですが、私はそんな大した魔法を使った覚えがありません。
”権能”に匹敵するほどのXクラススキルである”業”をそんなに簡単に解けるはずがありません。貴方はわざと私の魔法にあわせて”業”の効果を薄くしたのでは?」
ユークリートはにらみつけた。
「さぁ、何のことかな。」
ルシファーはその視線をさらりと躱しながらニヤッとウィンクした。
ユークリートはしらーっとした目を向けながら、まだルシファーのことを全面的に信用するのはやめようと思った。
作者のほか作品もぜひご覧ください!
・異世界転生殺し
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・SEX ANDROID(完結)
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