第86話「ルシファー」
デリトは、かつての宿敵ルシファーとの再会により、自身の過去と異世界の秘密に直面する。混乱の中、彼は自分の正体と真の使命を知ることになる。
「オレっちは堕天使ルシファー!異世界”リードワールド”の魔王さ!」
ボッチェレヌこと、堕天使ルシファーはビッと自分の胸に親指を突き立て、胸を張った。
全身筋骨隆々なのと対象的に顔は癖のないイケメンで、髪の毛はおかっぱのように切りそろえてあるが違和感なく全てが馴染んでいた。
その時、デリトが目を覚ましルシファーの顔を見て飛びのいた。
「・・・お前はルシファー・・・!?生きていたのか・・・!?」
状況を把握するよりも前にルシファーの出現に混乱していた。
デリトは自分のい最初いた異世界”リードワールド”での凄惨な戦いを思い出していた。
彼は”リードワールド”の魔王だったルシファー戦いで、ルシファーの命と引き換えに数多くの仲間と前世の妻そっくりな仲間のメイを失ったはずだった。
「おう、デリトの旦那。オレっちはルシファーことボッチェレヌ・・・あれ、ボッチェレヌことルシファーだっけ?まぁ、どっちでもいいか。」
「ボッチェレヌだと・・・!」
デリトはこれまでのことが思い出された。
いつの間にか一緒にいくつもの異世界を旅していたが、そういえばボッチェレヌとどこで出会ったのかは思い出せなかった。
「・・・まさか、ボッチェレヌが自分のいた異世界の魔王だったとは、と思っただろ?いつからだろうな?」
ルシファーはニヤリと笑った。
デリトは素早く立ち上がり、ボッチェレヌに銃を向けた。
「お前の目的は何だ?」
「まぁまぁ、待てよ旦那。オレっちが今説明してやるからよ。知りたくないか?デリトの旦那が何者なのか、オレっちが何故デリトの旦那と数々の異世界を旅していたか。」
「貴様のことなど信用できるか・・・!」
「そうかい。ただ、言っとかなくちゃいけないことがあるんだが、良いか?
先刻、旦那はここで暴れまわって、異世界転生者をひとりブチ殺しちまったことと、そこに倒れてるエライトをブチ殺しかけたってことをさ。」
「何・・・!俺が・・・!」
デリトは頭を抱えた。
記憶は定かではないが、先程の出来事がぼんやりと思い出された。
「まさかネゲテーテを・・・!?」
「そうそう。だからデリトの旦那は今、こっちがわだ。魔王側なんだよ。」
「そんな・・・俺は・・・」
”O.W.H.L.”と行動を共にすることになった時、”異世界転生殺し(チートキラー)”は二度と使いたくないと思った。
そう言いかけて、デリトは自分自身の本当の気持ちを悟った。
今になって、彼は彼の与えられた仕事の重圧から逃げたくなったのだ。
「旦那。アンタが何を考えているか分かる。なぜならアンタは俺っち自身だからな。
残念だけどな、それは無理だ。それが誰の思惑だったにしろ、今までの罪は消えない。
そもそもはウルレカッスルに頼まれてやっていたことかもしれないが、自分自身で選んだ道には変わりはないんだ。」
「・・・待て。お前が俺と同じだと?何を言っている。」
「ああ。そうだ。旦那の前世はメイという妻、そして娘がいただろ。」
「・・・ああ。」
デリトは何故知っている、と訝しんだ。
ウルレカッスルが言ったのか。
「そして、旦那は家族をとても愛していた。職を失って自暴自棄になっても見捨てないでいてくれた家族に対して、
ある日、自分の立場がいたたまれなくなって家族と喧嘩して、そのまま飛び出して、そして不運にもトラックに轢かれて死んだ。」
「何故それを・・・」
「当然だ。デリトの旦那、いや、”ヒーローデリートプログラム”、お前はオレっちの記憶を”異世界転生殺し”という器に入れた殺戮人形なんだよ。」
「何だと・・・!?俺は・・・」
目の前にいる天使の姿をした因縁の相手をデリトは疑いながらも、ルシファーの言っていることが本当なのだと心のどこかで分かっていた。
「お前はオレっちさ。だから、旦那。オレっちはお前を見捨てたくない。」
「よくやりましたルシファー。また、ご協力頂き、ありがとうございます。」
ウルレカッスルがふわりと降りてきた。
「ウルレカッスル、お前騙していたのか・・・!」
「・・・デリト。あなたを騙したことはありません。ただ、本当のことを全て話していたかというとそうではないのです。」
「どういうことだ・・・?」
「”物語世界”において異世界はとても重要です。”現実世界”とリンクして想像力を与える役割があるのですから。
ただ、異世界は増えすぎました。あまりにも容量が重くなり、これ以上増えてしまえば”現実世界”を引き込んで全てを崩壊させてしまう可能性が高いのです。」
「崩壊だと・・・!」
「そう。私はこの崩壊を”ラグナロク”と呼んでいます。そのためには異世界転生者を滅ぼし、異世界を削除していく必要があるのです。
しかし、異世界転生させている私自身であっても、この異世界を創り出した”管理者”であっても直接的に異世界転生者を削除することは叶わない。
唯一方法があるとすれば”禁忌の権能”、かつて起こった”現実世界”と”物語世界”の戦争において生み出された”異世界転生殺し(チートキラー)”を使うしかなかったのです。」
デリトもエライトも耳を疑った。
反応を見るにユークリートも初耳だったらしい。
「”現実世界”と”物語世界”の戦争だと・・・!」
「ええ。その戦争は私が異世界に来る前に起こったもので私も詳細は知りません。異世界の創造神たる”管理者”に伝え聞いただけですから。
そこで”異世界転生殺し(チートキラー)”は生み出され、戦争の終結とともに封印されました。
そして、今、全く別の危機に私はその力を使って、異世界を滅ぼすことにしました。」
ウルレカッスルはとても落ち着き払って話しているが、”物語世界”を救うためとは言え、自身が業の深いことをしているのは百も承知のようだった。
「異世界を滅ぼすなんてできるのか・・・!?」
「できます。”現実世界”とは違うとはいえ、異世界は本当に世界そのもの。次元そのものに近いのですから。
ただ、直接的には滅ぼすことは不可能でも、間接的に滅ぼすことは可能です。
異世界は”魔王と勇者の戦い”という物語ありきで成り立っています。そして、勇者は魔王にならざるを得ないという性質があります。
私たち転生の女神も異世界転生を行うことは絶対しなくてはならないですし、その仕事を拒否することは不可能です。
ということは逆に異世界転生させた勇者を完全に抹殺してしまえばいかがでしょうか?」
「成程、それで”異世界転生殺し”という”権能”を持つ勇者を生み出した。
おそらく本当の異世界転生者に、その人自身の性質と違う”権能”を付与することはできないのだろう。
だから、イチから”異世界転生殺し”を創り出したのだな・・・!」
倒れていたエライトは、聖剣ゴールドシルバーによりかかりながら立ち上がっていた。
ウルレカッスルはエライトの方を見たが、既にエライトはウルレカッスルの背後に回っていた。
<ライト・ウォーカー>で過去に行っていたのだ。
「<方舟の鍵>!」
エライトはどこから取り出したか弓に矢を番え、思い切り引いた。
「あっ・・・」
ウルレカッスルは振り向いたが、既にその矢は腹に突き刺さっていた。
「しまった・・・!」
ライゼレが動き、ウルレカッスルを助けようと走り出した。
その時、今まであえて静かにしていたユークリートが叫んだ。
「異世界転移完了!来なさいモレネ!」
光り輝き現れたのは”異世界転生料理人”モレネだった。
作者のほか作品もぜひご覧ください!
・異世界転生殺し
https://ncode.syosetu.com/n8355gr/
・SEX ANDROID(完結)
https://ncode.syosetu.com/n9297hx/
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