第84話「デリト=ヘロ」
「う・・・ガああアア!」
魔女王に解き放たれたデリトは宙に浮きながら、不気味な雄叫びをあげた。
やがて呪文はデリトの体に貼り付いていき、ギシギシと大きな音を立たせながらその体を変化させていった。
「一体何が・・・!」
エライトや始め、”O.W.H.L.(勇者同盟)”の面々は戦いてそれを見つめた。
転生の女神長であるユークリートも状況を飲み込めていないようだった
「みなさんお待ちかねのショーのはじまりはじまりってわけだ・・・!」
凶王はニタニタと笑っている。
もうもうと立ち込める蒸気の中から現れたのは、全身黒く染まり冷徹な表情をしたデリトの姿だった。
黒く染まった反面スーツは白くなり、黒い炎のようなものを全身にまとっており、肌には赤く呪文印が刻まれて光っている。
さらに特徴的なのが、その顔を半面覆っている不気味な仮面だった。
「”ヒーローデリートプログラム”。異世界転生者を殲滅しなさい。」
「・・・了解。」
ウルレカッスルの命令にデリトは冷たい声で短く答えると目にも止まらぬスピードで跳躍した。
「なっ・・・!」
デリトはネゲテーテの目の前に現れ、その目を合わせた。
その片目は全身に刻まれた呪文印と同じ様に赤く光っていた。
「<ゼロリサーチ>終了。これより異世界転生者の削除を開始する。」
そう言うとデリトは振り向き、エライトに狙いを定めて右手にもつ拳銃の引き金を引いた。
「なっ・・・!」
ネゲテーテを攻撃するのだと思い、助けようと光のスピードで動き出していたエライトは驚きの表情を見せた。
既に走り出してしまったため、瞬きするよりも速い一瞬の中でエライトの眼前に銃弾が迫っていた。
しかし、いくら不意打ちとはいえ<チートキラー>を発現させていないデリトの攻撃はエライトに重傷を負わせることはできても致命傷にはなり得ない。
と、思いエライトは回避の動きを取ると同時に一瞬、デリトに目を移したとき驚愕した。
いつの間にかデリトはエライトの兄、スタンライトの姿になっていたのだ。
「<チートキラー>。」
デリトは既に銃弾の引き金を引いた瞬間、異世界転生殺しの”権能”を発現させていたのだった。
間に合わないと思ったその時、エライトとデリトの銃弾の間に何かが割って入り、デリトの銃弾は弾かれた。
「させぬ!”絶対防御”!」
ネゲテーテが間一髪で割って入り、”権能”を発現させてエライトを守ったのだった。
そう思った瞬間、エライトの腹部を激痛が貫いた。
「がはっ・・・!」
ネゲテーテが驚きで振り返った時、エライトの顔が苦痛に歪み、腹部を押さえて崩れ落ちた。
「何・・・!」
エライトの腹から大量の血が流れ落ちる。
「<ダイヤモンド・バリア>。」
デリトは右手に握った拳銃で最初の弾丸を撃つとほぼ同時に、左手に握った拳銃で上方に向かって弾丸を撃って<ダイヤモンド・バリア>で自分の弾丸を弾いてエライトの腹部に当てたのだった。
さらに<サイレント・サイレンサー>で視覚を歪ませることでその企みを隠し、最初に撃った弾丸に意識を向かわせて二人の異世界転生者をだまくらかしたのだった。
ネゲテーテの”絶対防御”が意識が向いていないものに対しては効果が無いことを分かった上で組み立てられた攻撃だった。
「エライト・・・!」
ネゲテーテは心配して振り返った。
「お前は大事なものを守れない。」
「はっ・・・!」
いつの間にかデリトはネゲテーテの額に拳銃を押し当てていた。
「<チートキラー>。」
そして、そのまま引き金を引いた。
撃たれた瞬間ネゲテーテは自分の前世の記憶が走馬灯のように見えた。
ネゲテーテは前世ではコンピューターのハッキングを防ぐシステムのエンジニアだった。
世界最大手のそのアンチウィルスシステムの責任者だったが、ある時、そのシステムをすり抜けてハッキングを受けた顧客がおり、それが世界的な大企業だったことから大問題となり、その後、彼は責任を感じて自殺した。
決して彼のせいではなく、社内にいた競合他社のスパイが仕組んだものだったとして捜査が進んでいたが、上層部から部下の管理などについて問い詰められた責任感の強い彼はその結果が出る前に自ら命を絶つ道を選んだ。
その後、彼は異世界転生し、絶対に大事なものを防御するという”権能”を得た。
だが、それは逆に言えば”大事なものや重要なものを防御できない時、心の隙ができるという弱点”があり、<チートキラー>の発現に繋がったのだった。
「なんてこと・・・!」
”O.W.H.L”の絶対的な盾として数えていたネゲテーテがあっさりと殺され、ユークリートは本来の女神の姿になるべきか悩んだ。
このままではユークリートの野望が果たせない。
彼女も固定体という実体になれば戦いに加勢することもできるし、異世界転生者ほどではないにしろ、かなりのチートなステータスを持っているはずだった。
異世界転生者ではないので”権能”を使うことはできないが、逆に言えば異世界転生者ではないので”チートキラー”の対象とはならない。
しかし、その場合、攻撃されると転生の女神としての存在にもダメージを受けるうえ、異世界転移などができなくなってしまう。
ユークリートは一瞬のうちに無数の可能性を考えた結果、新しい異世界転生者を転移させてくることを選び、呪文を唱え始めた。
「次はお前だ。」
デリトは背中からいつの間にか実体化した聖剣シルバーゴールドを抜き、うずくまっているエライトに向けた。
実は異世界”ゴールド/シルバー”から出る時も隠しアイテムとして、ずっと持っていたのだ。
さきほど、エライト相手に<チートキラー>を発現できたのもこれが原因だった。
聖剣の力を使って彼は今、エライトの弱点である彼の兄、スタンライトの姿になっていた。
「くっ・・・」
エライトは反応できず地面に血を吐いた。
弱点が分かっているとはいえ、デリトが本気になればこんなにも実力差があったのか。
デリトは聖剣シルバーゴールドを振りかざしエライトの眼前に振り下ろした。
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