第79話「異世界の大原則」
「『勇者=異世界転生者』というのはご存知の通りだけど、実は魔王も、もともとは勇者として召喚された異世界転生者なの。」
ユークリートが静かに伝えた。
「なんだと・・・!!」
デリトは驚愕した。
敵として戦い、”異世界転生殺し”で葬ってきた異世界転生者たち、つまり”勇者”と、ライゼレのように自分のことを助けようとしてくれた”魔王”たちはもとは同じだったというわけか。
「”物語世界”には大原則がある。そのひとつは”異世界転生者は異世界に1人だけ”というもの。」
「どうやらこの大原則は絶対に捻じ曲げることはできないらしい。
だからお互いに異世界転生者である魔王と勇者はお互いにその大原則に従って、自分の意思すら関係なく戦うことになる宿命を背負っている。」
エライトが補足した。
「そこは良いとしても、問題なのはもう一つの法則。
まぁ、これは法則ではなく特性というべき点なんだけど、”現実世界”と”物語世界”は本来は似て非なる別の次元。
本来は”現実世界”のヒトである異世界転生者は本来は”物語世界”には存在しえない存在だから、だんだんと病になっていく。」
「病?」
「そう、異世界にいるだけで精神に悪影響が出てくる。何にせよそれはもともと異世界で産まれたヒト、つまり異世界人には何の影響もないけど、
”現実世界”から転生してきた人間の精神には影響して段々と邪悪な人間へと変えていく。」
「・・・それこそが魔王というわけだ。
つまり、勇者として呼ばれた異世界転生者たちは否応なく次元の違いに耐えきれず、段々と精神に異常を及ぼしてチートスキルを持ったまま魔王と化す。
しかし、魔王は野放しにしてしまうと世界が滅びてしまう。だから”現実世界”から勇者を異世界転生させ魔王を”異世界の大原則”に従って倒す。それが繰り返される。」
エライトは兄であるスタンライトのことを思い出したのだろうか、話しながら苦しそうにまゆをひそめた。
「・・・なるほど、魔王になった異世界転生者は、かつて魔王を倒した時のチートスキルをほとんどそのまま持っているから他に敵となるものはおらず、
絶対的な力を持つ存在として邪悪な精神のもとに異世界を支配するようになる。
そして、それを討伐するためにまた異世界転生者が勇者として呼ばれるということか・・・。」
これはある意味、輪廻とでもいうべきなのだろうか。
「そもそも異世界転生者にはどんな人間が選ばれるんだ?」
デリトが質問をした。
この点はエライトも聞いていなかったようで、ユークリートを見た。
「異世界転生者になるには、2つの絶対条件があります。1つは死ぬ時、強い思念、つまり強い後悔を持ったまま死んだもの。
この思念のひとつがそのまま、チート能力として発現し、そのヒトの個性や記憶と絡み合って唯一無二の”権能”という、本来存在しないはずのXクラススキルが生み出される。」
「なるほど。」
異世界では基本Sクラススキルが最高ランクと言われているが、異世界転生者の”権能”だけが唯一、その上を行くXクラススキルなのだ。
「そして、もうひとつが”勇者にふさわしい心優しき人間”であるということなの。
だから異世界転生者たちは転生した時点で、チートスキルも持ち、心優しい真に勇者にふさわしい存在なの。」
ユークリートが説明すると、エライトもデリトも自分は果たして前世でそんな心優しい人間でいられたのだろうか、と考えた。
そうだとしたら、これまでの行いも報われるのか。
2人は自問自答したが、答えが出ることは無さそうだった。
「えーと、つまり、あのー、ぶっちゃけて言いますと」
ボッチェレヌいかにも聞きづらそうに発言した。
「何でしょうか?」
ユークリートはまだ怒っているのかボッチェレヌにだけ厳しい目線を向けた。
「そちらのエライトさんが魔王スタンライトを倒したあと異世界人たちの記憶から国の存在を消したというのは・・・。」
「・・・既にエライトは”魔王症候群”とでもいうべき現象がその時から始まっていたといえます。もしくはその前から。」
「・・・・・・。」
エライトはしかめっつらしたまま何も言わなかったが、おそらく本人が一番苦しんでいるのだろう。
「人によっては病に気づかず、突然発症することもあるみたいだけどエライトは進行が遅いようですね。」
沈黙が流れたが、少し時間を置いて、再びユークリートが口を開いた。
「唯一救いなのが魔王として完全に覚醒するまでは時間があるということと、魔王に完全に覚醒した時点で”権能”は失われるということが分かっています。
正確には他のチートスキルも全て崩壊が始まっているのですが、最も崩壊スピードが早いのが”権能”と言われるものになります。」
「なるほど。だから”魔王連合”の魔王たちには本来あったはずの”権能”は無いということだな。」
「ただ、ユークリートは失われたはずの”権能”を復活させる術を獲得したらしく、魔王に復活させた”権能”と類似の能力を”業”と呼んでいるとのことです。」
カルマとはもともと仏教用語だったように記憶しているが、それは”業”とも”宿命”とも訳される。
業・・・つまり技ともかけあわせているのか・・・?
デリトは頭の中の言葉遊びを隅に追いやった。
「そもそもウルレカッスルの目的とは何だ?何故、転生の女神たちと戦っているのだ。」
「そこが私達も分からないのです。」
「分からない?」
「ええ。転生の女神たちは本来、異世界転生を繰り返していくことが使命であり、存在意義なので転生を行わないと我々は死にます。」
「そ・・・そうなのか・・・。」
転生の女神が死ぬというのは初めて聞いた。
「人間でいう睡眠や食事と同じで、取らなくてもすぐに死にませんが。
ですので、私も、ウルレカッスルもその姉妹もこの戦いに参加しながら、時々、異世界転生を行っていて、力を多く消費するので、その前後は力を出すことができません。
そんな中で戦いを仕掛けるのは意味がわかりませんし、
戦おうと戦わまいと異世界転生は行わなければならないのですから戦いの必要性が・・・」
「なるほどな・・・ところで、ウルレカッスル、いや、”魔王連合”の次の行き先は分かっているのか。」
デリトは何故ウルレカッスルが戦いを仕掛けているのか、真意を本人に確かめてやろうと思った。
「おそらくこの異世界ではないかと目星がついています。」
「それは?」
エライトが聞いた。
ユークリートはその名を口にした。
「最果ての異世界。”マジックキングダム”。」
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