第74話「異世界”バトルロワイアル”」
デリトはウルレカッスルが与えた<ゼロリサーチ>という新しい能力で対象の異世界転生者の前世を覗き見ることができるようになった。
そこで見たものは・・・?
入鹿 直道真は前世では、蒲羊歯 京矢と言った。
彼はひとことでいえば精神異常者であった。
両親はアルコール中毒だったり、子供に乱暴を振るうような最低な人間だったし、周囲も同じような劣悪な環境下であったので当然の結実であったのかもしれない。
理由は何であれ、彼は周囲の誰よりも残忍な性格を自分のうちに、自分自身でも分からないままに隠していた。
唯一、祖母のみが優しく善良な人間であり、彼の本来の性格を引き止めるストッパーだったが、京矢が小さい時に目の前で強盗に惨殺されたことでそのストッパーは外れてしまった。
目の間に刺された祖母の死体が転がった瞬間、それをとても愉快なものだと感じたのだ。
次の瞬間、両親の家から祖母の家に避難するようにしばしば遊びに来ていた孫、つまり蒲羊歯 京矢自身に強盗が標的を移したのが分かった。
結果としては蒲羊歯 京矢と強盗のバトルは、蒲羊歯 京矢の勝利に終わった。
蒲羊歯 京矢自身も大怪我を負っていたため、必死の抵抗のすえ、強盗を退治したのだと、正当防衛だということになった。
しかし、事実は全く逆で、入鹿 直道真が先に強盗を惨殺しようとして最後の最後で油断してしまい、強盗の最期の力を振り絞った反撃によって負った怪我だったのだ。
子供と侮って蒲羊歯 京矢を放置していた強盗は京矢の急に呼び起こされた残忍性の犠牲となってしまったのだった。
とはいえ、強盗は自業自得である。
だが、その後の蒲羊歯 京矢の人生を見ると、強盗は蒲羊歯 京矢が隠し持っていた真の姿を彼自身のもとに暴き出したのは確かだった。
蒲羊歯 京矢は怪我が治ると、まずはろくでもない両親を惨殺し、隣の家に忍び込んで一家を殺して逃亡した。
両親はともかく隣家の家族は何の罪もない人々だった。
やがて、彼は小学生ながら凶悪犯罪者となった。
彼は家に火を付けて巧妙に自分と両親一家が強盗に襲われたように見せかけ、自分自身は誘拐されたかのように偽装し、本来は存在しないはずの死んだ子供となった。
もちろん、その偽装工作などすぐにバレていたのかもしれないが、警察もまさかそこまで巧妙な偽装工作を小学生の息子がするとは考えなかったのだろう。
裏で追われていたのかもしれないが、情報が表に出てくることはなかったし、逮捕されることも無かった。
そして、狡猾な彼は様々な手を使い、中学生になるときまでに20人ほどの人々を殺してきたのだった。
標的はコミュニティの外にいるホームレスや親族から敬遠されている老人、身寄りのない子供、家族と縁を切った一人暮らしの男性など、死体が見つかりづらいし、いなくなっても気づかれづらい存在に絞って、まさに”殺すことを目的とした”殺しをすることで怪しまれることなく犯行を続けていた。
それは1年に1回か、多くても3回程度で犯行の手口は全く違っていた。
そして、彼の犯行は100回に及んだが、とうとうその犯行が暴かれることは無かった。
戸籍が無い状態だったのでずっと人の世を偲んで、殺人を続けるために闇社会に生きたが、誰かの依頼で殺しをすることは絶対に無かった、
そんなことをすれば必ずどこかで犯行が暴かれるからだった。
あくまで自分のための、本能に近い趣味としての殺人だった。
人を殺すのは快楽ではなく、喉が渇いた時に水を飲むのに近い、生きるのに必須のものだったのだ。
やがて彼は齢30半ばにして、若くして癌で死んだ。
体調の異変には気づいていたが医者には行かなかった。
彼にとって殺人は生きる糧だったが、しかし、良心が咎めないということではなく、むしろ狂気の裏で心は常に痛んだ。
ただ、人を殺したいという欲が勝ってしまっただけであった。
医者に行かなかった理由は、犯行がバレる可能性があるからではない。
「誰か俺を殺してくれ。殺すのをやめられない。」
常にそう願っていた彼はついに病気によって死ぬことになり、解放されると思ったのだ。
そんな彼は何の運命の因果か異世界転生することになった。
彼が入鹿 直道真と言う名前で転生してきたのは異世界”バトルロワイアル”だった。
異世界”バトルロワイアル”はお互いに人が人を殺し合う異世界だった。
異世界転生する者の能力は前世での強い後悔の思念が影響する。
彼は前世で「殺してくれ」という願いとともに死んだが、同時に強い後悔があったのだ。
「まだ人を殺したい。」
精神異常者、連続殺人鬼の入鹿 直道真にとって”バトルロワイアル”はまさにうってつけの異世界だった。
異世界”バトルロワイアル”は名前の通り、すべての住人がお互いに殺し合うのが義務付けられたバトルロワイアルを行う、まさに地獄だった。
バトルロワイアルを仕切る”倫理委員会”が決めたルールによって、自分の命を守るために友人同士で殺し合い、家族を殺し、愛する人すら殺していく。
異世界転生した当初、入鹿 直道真は「殺したい」欲に加えて、正義のために殺しを行っていた。
彼は自分でも不思議なくらい、世界を救うという使命を明確に持って”倫理委員会”へと挑んでいった。
多種多様な殺しのスキルと”権能”である”人殺し”によって彼はまさに異世界の頂点に立った。
異世界”バトルロワイアル”においては、人を無条件に殺しまくれる彼はチート以上の何者でも無かった。
やがて”バトロワマスター”と呼ばれる黒幕を殺してバトルロワイアルを終えた時、入鹿 直道真のもとに彼を転生させた女神であるオルレアが現れ、彼女は言った。
「人を1人殺すことで異世界を救いませんか?」
オルレアは入鹿 直道真のことを”異世界転生殺し”デリトの天敵だと思い、その”権能”と性格の危険性を知りながら”O.W.H.L”に誘ったのだった。
しかし、一方で”異世界転生殺し”について聞いた時、入鹿 直道真が思ったのはこうだった。
「やっと俺のことを殺しきってくれる人がいる!!!」
そこで、デリトの<ゼロリサーチ>による前世戻りは終了した。
「デリト・・・?」
ゾーレが心配そうに覗き込んでいる。
どうやら数秒ほど意識を失ったようになっていたようだ。
「<ふわふわアサシン>!」
ボッチェレヌが入鹿 直道真を食い止めてくれているようだ。
そういえばアイツも人では無かったか・・・。
デリトは目を閉じて、ゆっくり目を開けると見通すような目をして言った。
「入鹿 直道真、安心しろ。お前は俺が殺す。」
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