第72話「入鹿 直道真」
急遽異世界”イート・イン”に現れた、エライトをはじめとする”O.W.R.L.(異世界勇者同盟)”。
デリトとライゼレは”異世界転生料理人”モレネと対峙するが後ろから白髪の少年が現れて・・・?
「まさか・・・エライト・・・!」
デリトはバトルコックのヤンチスを救った人物を見て立ち上がった。
グラコロ(グランコロシアム)の観客たちも皆、突然の事態に驚きを隠せないようだった。
さらに、エライトの他にも複数人の、おそらく異世界転生者たちがグラコロのステージに降り立ち、いとも簡単に”伝説のグルクリ(グルメクリーチャー)”たちを退けているのが見えた。
「・・・と、突然現れた彼らは何者でしょうか・・・?”美食魔王”様、これは一体・・・?」
司会であるキュリエスの気持ちと会場にいる皆の気持ちは同じだった。
”美食魔王” 喰神母雨 は顔をしかめて何やら考え込むような仕草を見せたあと、”異世界転生料理人”モレネを睨んだ。
どうやら喰神母雨はこの事態を飲み込めていないらしくこの状況をモレネの仕業とみているらしかった。
モレネは喰神母雨に睨まれていることを認識しながらもそちらには目を向けず、エライトの方を見ていた。
ざわめいている中、エライトは振り返り、ふと観客の中にデリトがいるのを見つけた。
エライトの表情は怒りも哀しみも笑いも、何も読み取ることができなかった。
「デリト君、どうやら今この瞬間、この異世界の人たちだけで対処できる状況では無くなったらしい。
できる限りの異世界介入はやめようと思っていたが、”O.W.R.L.”が来たのならやむを得ない。
私がエライトを止めるから君たちはヤンチス君を頼む!」
「わ、わかった!」
デリトの横にいたライゼレはそう言うと、レーゼと共に観客席から瞬時に跳び、ステージへと向かった。
「よし、俺たちもいくぞ!」
デリトはゾーレ、ボッチェレヌと共にヤンチスの方へと向かった。
「ヤンチス大丈夫か!」
デリトたちが駆けつけるとヤンチスは尻もちをついたまま呆然とした表情で3人を見上げた。
「あ・・・ああ・・・。あの人達はなんだ・・・?”伝説のグルクリ”をいとも簡単に倒しちまうなんて・・・、まるで伝説の”異世界転生料理人”並みだ・・・」
「そ、そ、その通りだよ。」
デリトたちがその声に振り向くとそこには”食のスーパールーキー”こと、”異世界転生料理人”のモレネが立っていた。
ガチガチに緊張し、足がガクガクと震えていたが腰に手を当て、威厳を見せようと努力していた。
「お、おめぇは”食のスーパールーキー”!」
「そ、そう。わ、私は”食のスーパールーキー”こと、”異世界転生料理人”こと、異世界転生者モレネ!」
本来はヤンチスに恐れられているはずなので、立場的には上のはずだがモレネの声は緊張で震えている。
「さっきから思っていたんすけど、モレネの異名って一つじゃだめなんですかね?」
ボッチェレヌが妙な空気に耐えきれずデリトに耳打ちした。
「どういう意味だ?」
デリトはボッチェレヌの言葉をいつも通り無視してモレネに聞いた。
「そこの少年・・・ぼ、坊やが言っている伝説の”異世界転生料理人”とはかつてこの異世界”イート・イン”に存在した異世界転生者たちのことさ。
100年ごとに1人現れて、圧倒的な強さで当時の”美食魔王”たちを駆逐するげきつよな料理人たちだ。
そして、私は伝説の”異世界転生料理人”にも匹敵するレベルの異世界転生者たちをこの異世界に呼んだ。」
「ふむ、その目的は何だ?」
モレネの言った”げきつよ”という言葉に若干の違和感を感じながらデリトは聞いた。
「私は”O.W.H.L.(異世界転生者同盟)”の第三席”異世界転生料理人”モレネでも、あ、あるよ。
私はもともと”美食魔王” 喰神母雨を葬る使命を帯びてにこの異世界に転生した。
1人孤独に戦っていたけれど、”O.W.H.L.(異世界転生者同盟)”に入って仲間を得た。
そして、それぞれの異世界で暴れまわる魔王たちを駆逐する計画”クルセイダーズ・クエスト”が今始まったのさ。」
「クルセイダーズ・クエストだと?」
「そう、この異世界”イート・イン”から魔王連合を含む全ての魔王を倒す計画が始まった。
そして、そこにいるのは”無限魔王帝”ライゼレと”異世界転生殺し”デリト=ヘロ!二人の魔王よ、覚悟しろ!」
「なっ、俺が魔王・・・?」
デリトはモレネの言葉に驚愕した。
「あ、ああ、お前は異世界転生者を裏切った。だ、だからお前のことは個人的に魔王だと思っている!にせ異世界転生者め!敵!”O.W.R.L.”の中では認められているけど・・・」
ビシッとデリトを指差したその指はぷるぷると震えていて、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「こ、個人的にかよ・・・」
デリトは呆れてそれしか言えなかった。
「・・・ぷっ」
誰かが吹き出した。
「アハハハハ!これは傑作だね!”異世界転生殺し”が魔王だなんて!」
笑ったその人物はモレネの後ろから歩いて来た。
小柄な白髪の少年だった。
「な、なんで笑う・・・!てかお前誰だ・・・!」
モレネはバッと後ろを振り向き、顔を赤らめた。
「ああ、ごめんごめん。僕は”O.W.H.L."新第十席、入鹿 直道真。
最近、”O.W.H.L."に入ったからモレネのお姉ちゃんとは初めまして、だね。」
「新第十席・・・?あの柄悪いヤンキーの第十席はどうしたんだよ!」
デリトは聞いた。ゴロスーグはガラこそ悪かったものの確実に強かった。
この少年はそこまで強いように見えないが・・・。
「ヤンキー?ゴロスーグのことかい?彼ならね・・・僕が殺しちゃった★」
てへぺろ、と入鹿 直道真は舌をだして自分の頭を可愛らしく小突いた。
その仕草は言っている内容と、まるで真逆だった。
「殺した・・・?お、お前も”異世界転生殺し”と変わらないじゃないか!
この裏切りもの・・・!」
モレネは入鹿 直道真に包丁を向けた。
相変わらずガタガタガタガタ包丁が揺れているが、デリトの見立てなら身体能力はモレネのほうが圧倒的に上のようだった。
「・・・あ?僕とやろうっての?仲間なんだけど。ほら、二人でやればあのデリトだって・・・」
入鹿 直道真はモレネに優しく諭すように言った。
「お前なんかと仲間になるか!なんか怖い!」
「・・・チッ。クソガキが。」
「何!?お前もクソガキだろ・・・」
モレネは声を荒げたが、次の瞬間、入鹿 直道真に腹を刺されていた。
「え・・・?」
ばたりと倒れたモレネを見下ろし、デリトに顔を向けて言った。
モレネは急所を刺されたのか、何も言わずに血を流している。
「さぁ、邪魔なやつもいなくなったね、会いたかったよ!デリト!・・・いや、”異世界転生殺し”。」
「お前・・・何のつもりだ。そいつ仲間じゃないのか?」
地面に倒れ、血を流しているモレネを見てデリトが言った。
こいつはヤバいかもしれないとデリトは悟った。
「あー、仲間のつもりだったんだけどナメたクチ聞いてたから殺しちゃった★」
「デリトの旦那、アイツやばそうですぜ。異世界転生者をいとも簡単に殺して・・・。」
ボッチェレヌが耳打ちする。
「ああ。アイツの”権能”か・・・?」
珍しくボッチェレヌが真面目なことを言うのでデリトは答えた。
「でも、異世界転生者って皆とんでもない強さなんでしょ?いくら異世界転生者同士だからっていっても、一発で殺せる”権能”なんて・・・」
ゾーレは血の気が引いて顔が真っ白になっていた。
確かに、ベイスレやゴブオとの戦いは通常の異世界人に比べれば圧倒的な強さだったが、お互いにすぐ決着するほどの力の差はなかった。
異世界転生者同士はお互いのいわゆるステータスの違いはほとんど無いのかもしれない。
「そんな”権能”、デリトの”異世界転生殺し”以外、無いなんて思ってた?」
入鹿 直道真はゾーレの声が聞こえていたようで、ナイフを弄びながら言った。
「実はさー、デリトの”異世界転生殺し”の”権能”を超えられるものが一つだけあるんだよね。
”権能”って基本的にその異世界転生者の前世の思念から作られるらしいんだけど、それって唯一無二のものなんだよね。
でもさ、いくつもある異世界と、それぞれの異世界転生者がいるんだし、似てる”権能”ももちろんあるんだよ。」
ナイフを弄ぶ手を急に止めて、入鹿 直道真はニコリと不気味に笑った。
「似てる・・・?」
「例えば、異世界転生者の弱点を拡張して、チート能力を全て前世の値、例えば体力とか防御力を普通の人間並に戻してしまう”異世界転生殺し(チートキラー)”。
そして、”人”ならチート能力やステータスを持っていようと簡単に防御力を一般人なみにしてしまう”人殺し”とかね。」
「”人殺し”だと・・・?」
「そう。まぁ、要はさ、モンスターとか人外系はちょっとアレなんだけど”人”に対してはその”人”自身の能力値に関わらず、いくらでもダメージを与えられるんだよね。 」
「デリトの旦那・・・やばそうですぜ・・・!」
ボッチェレヌが冷や汗を垂らした。
「そういえば自己紹介がまだだったね。僕は”異世界バトルロワイヤル”から来た入鹿 直道真。
”権能”は”人殺し”。つまり、僕の”権能”はチート級の”人特化の防御力貫通”ってこと。よろしくね、”異世界転生殺し”デリト。」
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