第68話「バトルコック」
「さぁ、その身はプリプリと弾力があり、ジューシーな果汁の多さが特徴ですが、油断してると逆に食べられちゃいますよー!
戦え!バトルコック!」
キュリエスが言うと、戸惑っていたバトルコックたちは各々に武器を持ってジャイアントパイナップルワームに対峙した。
バトルコックたちの武器は主に大型の包丁が多い。
モンスターと戦いながら調理もできるスグレモノだが、繊細な作業には身につけた小さな包丁を使う。
その他、ハンマーのような調理器具に似た武器や調味料を常備しているなど、バトルコックはその名に違わず、戦士と調理人を融合したような存在だった。
違うのは料理の多彩さを出すために荷物や身につけるものが多いというところだった。
「ヤンチスはどこ!?」
ゾーレが声をあげた。
「あそこだ!」
デリトはステージの中心部を指差した。
幸いにもヤンチスは苦戦しているようだが、ジャイアントパイナップルワームには今の所食べられていなかった。
「くそっ、ジャイアントパイナップルワームっていっちゃあ、Bクラスの中でも特に強いグルクリじゃねぇか!
まさかこんな初戦で出してくるたぁさすが魔王戦!いつもの天下一武料理大会とは違うな!」
実はヤンチスは前回の天下一武料理大会にも出たことはあるが、魔王戦のように苛烈ではなかったため戸惑っていた。
グルクリは主にE~Aクラスまでのランク付けがされているが、Bクラス以上はかなり強く、日常生活であまり見かけることはないレベルだった。
「あっ、見て!ヤンチスが危ない!」
観客席から見ていたゾーレが声をあげた。
ヤンチスは気づいていないようだが後ろから何十人ものバトルコックを葬ったジャイアントパイナップルワームが迫ってきていた。
正面で戦っているジャイアントパイナップルワームに気を取られ、ヤンチスは気づいてないようだった。
「ヤンチスー!後ろだー!」
デリトが叫んだが、はるか遠くで戦うヤンチスには全く声が届いていないようだった。
「ダメか・・・!」
諦めたその時、ヤンチスに迫っていたジャイアントパイナップルワームは突然、半分に一刀両断された。
ブシュウゥ、とジャイアントパイナップルワームから黄色い鮮烈な果汁が吹き出すとその中心に侍のような格好をしたバトルコックが立っていた。
そこでようやく気づいたようで、ヤンチスは後ろを振り向いた。
「お・・・おめえは・・・?」
「ふっ、礼などいらぬ。拙者は”料理侍”のロクエモン。またつまらぬ食材を斬ってしまった・・・。」
「お、おれを助けてくれたのか。ありがとな。」
「別に貴様を助けたわけではない。たまたま拙者の目の前に”もののけ”がいただけよ。」
ふっ、とロクエモンは笑ったが、グルクリのことを”もののけ”と表現する独特な男にヤンチスは戸惑っていた。
その時、ヤンチスたちのもとにジャイアントパイナップルワームが5体飛んできた。
「うぉ、なんだ!?」
ヤンチスとロクエモンが危ういところで躱すと、ジャイアントパイナップルワームは既に全て息絶えていた。
あたりにはジャイアントパイナップルワームの果汁が飛び散り、フレッシュな甘い匂いがたちこめている。
「うはっははは!」
ズンズンと重い足音を鳴らし巨大なハンマーを持った大男が笑いながら歩いてきた。
「俺様の名は”肉叩きのドガス”!豪快な男らしい料理が得意なバトルコックだ!どうだ、俺の”肉叩き棒”の威力は!」
「棒っていうか・・・ハンマーというか・・・。」
その後もヤンチスの周りに強い実力派のバトルコックが集まってきてきたが、だいたいクセも強いやつばかりだった。
「俺は両手右利き包丁の男ムエッタゥ!」
「ワタクシは料理格闘家のフローラル・モラル!」
「私は・・・」
「くっ、皆強えな・・・色々と・・・」
ヤンチスは自分の実力と個性が弱かったことに唇を噛んだ。
その時、少し離れたところに大きな物体があるのが見えた。
「なんだありゃぁ・・・!」
巨大な肉叩きハンマーのドガスが声をあげた。
ヤンチスたちもその先を見ると、そこにはジャイアントパイナップルワームが山となって積み重なっているのが見えた。
その上には背中にいくつもの包丁を帯刀した体中を黄色い果汁だらけに染めた小柄な人物が立っていた。
「きゃつめ・・・一人であれだけの数のジャイアントパイナップルワームを屠ったとでもいうのか・・・。」
ロクエモンが冷や汗を垂らす。
「あれは”異世界転生料理人”・・・!」
料理格闘家のフローラル・モラルが呟いた。
「何・・・!アイツがあの”食のスーパールーキー?”」
即座にドガスが反応した。
「”食のスーパールーキー”?」
ヤンチスが聞いた。初めて聞く異名だった。
「ああ、アイツは最近現れたばかりの新人バトルコックで、”食のスーパールーキー”という通り名だったが、やがて奴が異世界人だと分かると、ついた名が”異世界転生料理人”。
異世界よりこの世界”イート・イン”のグルメの危機に現れると言われる勇者の異名だ。」
「なんてオーラだ・・・。誰も話しかけることはできないほどのオーラがあると言われる・・・!」
その時、”異世界転生料理人”またの名を”食のスーパールーキー”がキッと、ヤンチスたちを睨んだ。
「ヒッ!」
「お、おい、俺ら睨まれてるぞ・・・!」
ヤンチスが後退りする。
「・・・・・・。」
”食のスーパールーキー”はスタッと飛び降り、黙ったまま背を向けて去っていった。
身の丈ほどもある大きな肉斬り包丁をサッと振り、ジャイアントパイナップルワームの果汁を地面に飛び散らせてどこかへ行ってしまった。
くるんと巻いたボブヘアーや可愛らしい顔と似合わぬ恐ろしさだった。
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