第63話「業-カルマ-」
”ゴールド/シルバー”から逃れてきたデリトたちは戦艦型異世界”ジェネシス・フォートレス”にいた。
そこで出会ったのは魔王連合総帥サルガグンと・・・?
時は再びデリトたちの方に戻る。
「ゲホゲホ・・・」
デリトは異世界”ゴールド/シルバー”から急に転移させられてきたため、その勢いで咳き込んだ。
実際には身体に影響はないはずなのだが、感覚的に船酔いに近い感覚があるのだった。
少し離れたところではゾーレとボッチェレヌも咳き込んでいる。
「良かった。ゾーレたちも一緒だったのか・・・。」
「うん・・・ケホケホ・・・大丈夫・・・?デリト・・・。」
「大丈夫でやんすか・・・デリ・・・旦那・・・ゴホゴホォ!ウェッ!」
「ボッチェレヌ、おっさんみたいに咳き込むのはやめろ。というか、ここは・・・」
「ここは異世界”ジェネシスフォートレス”。
分かりやすいイメージとしてはいろいろな異世界の間を航行する宇宙戦艦型の異世界という感じですね。」
辺りを見渡したデリトの前には黄金の鎧を着たウルレカッスルが立っていた。
「ウルレカッスル・・・!どういうつもりだ?”魔王連合”って・・・、それにさっきのやつらはいったい・・・」
「そうですね。順を追って説明していきましょうか。貴方は”光の異世界転生勇者”エライトから魔王連合によって助け出されたのですよ。」
「おう、貴様が”異世界転生殺し”か。」
気づかなかったが、ここは玉座の間か何かのようで、豪華な装飾が施された玉座には赤い肌の大柄の魔族が座っていた。
話しかけてきたのはその魔族の男のようだった。
「お前は・・・?」
デリトを助け出した男、ライゼレではなかった。
「俺様か。俺様は魔王サルガグン。そこにいる”反逆の女神”に頼まれて、魔王連合総帥をやっている。」
「・・・説明してもらおうか。魔王連合とは何のことだ?」
「おうおう、貴様、助けてもらったくせに偉そうなやつだな。ぶっ潰してしまおうか。」
「まぁまぁ、おふたりとも落ち着いてください。私が説明しましょう。」
ウルレカッスルは一触触発状態のサルガグンとデリトの間に立ち、”異世界転生者同盟”への対抗策として”魔王連合”を結成したこと、魔王サルガグンがその統括する役割を担うことになった経緯を話した。
「なるほどな。たしかに、あの異世界転生勇者同盟に対して俺一人だと力不足だと感じていたことは確かだ。
だが、魔王連合を結成するならウルレカッスル、お前がまとめれば良いじゃないか。
異世界転生者同盟だって転生の女神ユークリートが統率しているわけだし。」
「いえ、それはできません。」
「なぜだ?」
普通に考えれば、異世界転生や異世界転移など、文字通り神の御業を駆使できる転生の女神が最も強く、魔王も異世界転生者も導く存在なのだろうと思ったからだった。
「そもそも、転生の女神は実体化はしていないのです。それに精神への干渉する能力はありませんから、指示をだすことはできても、無理やり従わせることはできないのです。」
「だから、貴様は俺に”異世界転生殺し”なんてさせているのか。」
”転生の女神”という存在は本当に異世界転生という役割のみが与えられているのだと改めて認識した。
「ええ。私自身が暴走した異世界転生者をどうにかできれば良いのですが、残念ですがそれはできないのです。
利用していると思われても仕方ありませんが、私は異世界のためを思ってやっていると思っていますし、その理念に共感してもらえたからデリトは異世界転生者と戦っているのでしょう?」
「・・・どうかな。」
デリトには最近”異世界転生殺し”が本当に良いことをしているのか疑問に思えてきていた。
ただ、ゴブリンキングやブラックウィンド、そして、先程まで戦っていたエライトなどの悪行を考えると正しいことをしているようにも思えてきて様々な迷いが生じてきていた。
異世界転生者は魔王を倒すために”権能”という途方もなく大きいチートな力を与えられるが、それゆえに彼らが心を悪に染めてしまった時、”異世界転生殺し”が必要になってくるのだ。
「”異世界転生勇者同盟”を率いるユークリートや転生の女神たちとて私と同じです。
彼女も異世界転生者たちを説き伏せて行動させているのでしょう。
最近はもっぱら、”異世界転生殺し”を始末するために動いているようですが。」
「そういえば、異世界転生者に対抗する手段はあるのか?
異世界転生者は各異世界で魔王に勝つためにチートスキルやステータス、そして”権能”を与えられるんだろ?」
「ええ、その通りです。しかし、対抗手段として魔王連合に所属する魔王には”業”を授けることが可能になりました。」
「”業”?」
「ええ、”権能”を駆使する異世界転生者にのみ使用することができる、いわばワクチンのような存在です。」
ウルレカッスルは説明した。
だが、しかし、まだ”業”が何かがわかっていないデリトにはピンとこなかった。
「・・・正直な話、”業”目当てで魔王連合は成り立っているともいえる。」
ここでサルガグンが口を挟んだ。
「どういうことだ?というか、”業”とは・・・?」
「まぁ、一言でいえば、異世界転生者どもの”権能”と同様の唯一無二の超チートスキルだ。
ただ、今、ウルレカッスルがいったようにワクチンのような存在で、”権能”が全ての異世界の存在に有効なのに対して、”業”は”権能”という超チートを抑制するためだけのものだ。
異世界転生者がいて、かつ、”権能”が発生していない空間でないと、使えないし、基本的には”業”の対象となる存在も”異世界転生者”のみとなる。」
「なるほど、限定的な条件下でのみ発動する”権能”ということか。」
「まぁ、ワクチンのような存在と言っても”業”は”権能”と同等のチートスキルであって、必ずしも勝てるとは限らない。
相性によっては勝つことも負けることもあるそうだ。」
サルガグンはそう言って玉座に深く座った。
「あなたのお陰でもあります。デリト。
今まで”権能”には対抗手段が無いと思っていましたが、”権能”は異世界転生者の前世の記憶や思いをもとにしたプログラムのようだというのがわかってきました。
プログラムというよりかは法則とでもいうものでしょうか。そして、その法則を打ち破る手立てとして”異世界転生殺し”を研究し、私は”業”という似て非なるものを生み出すことができたようなのです。」
ウルレカッスルが”権能”を与える側の存在でありながら、どのような仕組みか分かっていなかったということにデリトは驚いた。
「まぁ、正直いうと我々も異世界転生者に殺されるだけというのは、ごめんだからね。
組織には組織で対抗しようというものだよ。
単純に”業”の力の大きさだけ求めて魔王連合に加入するものもいるがね。」
そう言って現れたのは、先程デリトを助けたライゼレという魔王だった。
「貴様・・・」
「改めてはじめまして。”異世界転生殺し”デリト=ヘロ。私は魔王ライゼレ。魔王連合四天王の第一天を努めています。
何というか、『ククク・・・奴は四天王の中でも最弱・・・!』とか言われる感じのやつです。よろしく。」
怪訝な顔をしているデリトにライゼレは自己紹介をした。
「ライゼレ様、ボケたいからってややこしい説明をしないでください。確かにライゼレ様のオツムは四天王どころか魔王の中でも最弱ですが、第一天は魔王四天王でも最強です。バカは顔だけにしてください。」
ライゼレのそばにいるレーゼと名乗った秘書が毒のある冷静な突っ込みをした。
「な、なんなんだこいつら・・・」
デリトはただただ困惑していた。
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