第62話「異端の異世界転生勇者」
時と場所は少し変わり、転生の女神と”異世界勇者同盟”の第10聖ゴロスーグが話していた。
そこにある異世界転生者が現れ・・・?
「クソッ!何で俺が新入りの試験に付き合わなきゃならねぇんだよ!」
異世界転生勇者同盟・第10聖 ”暴虐の異世界転生番長”ゴロスーグはイスを蹴り飛ばした。
ここは”O.W.R.L.”の会議が行われる転生の女神たちのいる空間だった。
彼らのいる白い空間は無限大に広がっているので、豪華な装飾が施されたイスははるか遠くに吹き飛んでいき、地面に着地すると同時にバラバラになって壊れた。
”O.W.R.L.”が発足して、集った異世界転生者たちは、それぞれ第1聖から第10聖までの序列、”聖席”が与えられた。
強さだけではなく、良心や善行、異世界人からの信頼度や英雄として見られているかなどを総合して”聖席”は付けられていた。
「それは貴方が”聖席”で最下位の第10聖だからですよ。ゴロスーグ。」
落ち着いた口調で近くにある豪華な装飾がほどこされた椅子に座って転生女神長ユークリートが言った。
「ああ?おめえらが勝手に付けただけだろ?それに俺は第8聖だったはずじゃねぇか!何で第10聖に落とされたんだよ!?アア!?」
ゴロスーグは今にもユークリートに殴り掛かりそうだった。
「フンッ。あんたが”異世界転生殺し”を仕留めそこねたからに決まっているでしょう?」
その様子を軽蔑するように見ていた転生の女神エルレケネンが腕を組んで鼻で笑った。
彼女はゴロスーグの転生を担当した女神だった。
「この小娘・・・!犯してやろうか?ああ?」
「フッ、フケツ・・・!」
ゴロスーグがすごむと、エルレケネンは顔を赤らめてどこかへ走っていってしまった。
「クッソ!”異世界転生殺し”め、許さねぇ・・・!」
ゴロスーグは悪態をついた。
するとそこへ、転生の女神オルレアが1人の少年を連れて突然現れた。
「相変わらず、どっから出てくる方式なんだここは?」
ゴロスーグをはじめ異世界転生者たちには未だにこの空間がどのような構造になっているのかが分からなかった。
いつも人が突然現れたり消えたりする。
「ご苦労様オルレア。そして、初めまして、入鹿 直道真。」
ユークリートはゴロスーグのぶつぶつと言っていた質問を無視して少年とオルレアを手招きした。
「遅くなりましたユークリート。彼を説得するのに時間がかかってしまい。」
オルレアはぺこりと頭を下げた。
入鹿 直道真と呼ばれた少年は鋭い目つきでユークリートを見上げた。
「ようこそ、”O.W.H.L.”へ。」
「ふーん、あんたが転生女神長ユークリート?なんだか破廉恥な格好したデカ乳オバサンだとは思わなかったなぁ。」
「な・・・!」
開口一番失礼なことを言われ、さすがのユークリートも笑みを顔にはりつけたままヒクヒクと口を震わせている。
ちなみにユークリートは見た目は20代前半の女性にしか見えなかったが、入鹿の年齢からするとそう見えてしまうのだろう。
「オウオウ!威勢のいいガキが入ってきたじゃねぇか!!ハハハ!これには転生女神長様も参ったな!」
大笑いしながらゴロスーグは少年に近づいた。
「チッ。この柄の悪いおっさんは?」
あどけない表情から一変、舌打ちをして、ゴロスーグをにらんだ入鹿は指を指しながらオルレアに聞いた。
「彼は”O.W.H.L.”第10聖”暴虐の異世界転生番長”ゴロスーグです。」
オルレアはゴロスーグを紹介した。
「ふーん。この人が第10聖ねー。つまり一番弱いカス野郎ってことでオケ?」
入鹿は急につまらなそうな表情になり、前髪をいじった。
「コ・・・コイツ・・・!だいたい俺は一番弱いから第10聖になったんじゃねぇぞ・・・!
この失礼なクソガキが新しい異世界転生者か?」
ゴロスーグはなぐりそうな手を必死に抑えて、ユークリートにきいた。
「ええ。名は入鹿 直道真。異世界”バトルロワイヤル”の勇者で、二つ名は”シリアルキラー”。あなたも彼の力には驚くと思いますよ。」
含みがあるような言い方でユークリートは答えた。
「ハーン。まぁ、失礼なクソガキでも俺ぁオ・ト・ナだからな。」
大人、という単語を強調してゴロスーグは入鹿に手を差し出した。
握手をするためだった。
しかし、その時ゴロスーグの予想だにしないことが起こった。
「このおっさん殺していいんでしょ?」
入鹿はそばにいるユークリートにそう言うや否や、転生の女神たちの答えを待たず、ゴロスーグの腕を持っていたナイフで素早く切り落とした。
「グァァァァ!何すんだこのガキィ!」
ゴロスーグは入鹿に殴りかかったが、その拳は当たらずに空を切った。
いつもより何倍も体が重いような気がした。
「・・・言い忘れてました。今回は入鹿を紹介するとともに、新しい第10聖になる試験も兼ねているのです。」
ユークリートが静かに告げた。
まるで、当たり前のように入鹿がゴロスーグを嬲る姿を見ている。
「てめぇ・・・!ユークリートぉぉ!」
ゴロスーグが転生女神長を睨んだ隙に入鹿はゴロスーグの胸にブスリとナイフを突き刺した。
「がっ・・・!」
血を流し、倒れ込んだゴロスーグを覗き見るように入鹿はニタニタと見下ろしている。
「ああ、入鹿の”権能”について触れていませんでしたね。彼の”権能”は”人殺し”。
人外には全く通用しないどころかむしろ弱くなりますが、対人としては最強の、”人を殺すためだけの権能”です。」
ユークリートは何も起こっていないかのように、エルレケネンが先ほど準備した目の前に用意された紅茶を啜った。
「人道に反する異世界転生者など本来はいりませんが、対”異世界転生殺し”としては、必要です。
ただ、その者が強くなければやはりいらないのです。・・・あなたは期待はずれで、弱かったですね。
さようなら”暴虐の異世界転生番長”。」
しかし、ゴロスーグは既に絶命していて、ユークリートの話の後半は聞こえてはいなかった。
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