第59話「聖剣ゴールドシルバー」
エライトの持つ聖剣ゴールドシルバーから謎の少女が現れる。
彼女は自分のことをゴールドシルバーだと名乗り・・・?
「デリト、お前の言う通りだ。僕は兄に対してのコンプレックスと、
自分自身の不甲斐なさから目を向けるために兄の存在ごとひとつの国を消した。」
「・・・1つの国ではない。多くの人々をお前は消したんだぞ!」
”異世界転生殺し”として数々の異世界転生者を葬ってきたデリト自身がその重みを知っていた。
「だが、だからこそ僕は負けるわけにはいかない。」
エライトは大剣をデリトに向けた。
「僕は僕の道を突き進む。」
「・・・お前自身の道とはなんだ?何が目的だ?」
異世界”ゴールド/シルバー”を調べ回ったデリトは、エライトのしたことは突き止めたが、
彼や聖剣ゴールドシルバーが邪竜ジャドドなどを使役してまでこの異世界を混乱させるのかが分からなかった。
何を目的として動いているのだろうか。
「「それには我がこたえようぞ。」」
再びエライトの体をゴールドシルバーが乗っ取ったようだった。
「「エライト自身の記憶が消えたといえ、同化している我に刻まれた記録や此奴自身の罪悪感は消えん。
此奴はずっと記憶のない罪悪感に苛まれておった。我は此奴が壊れていくのを見とうない。
だから我は、このガレステリア王国を滅ぼし、この異世界全てを破壊したうえで我もエライトとともにいずれ、消えようと考えている。」」
「なんてことを・・・!」
メリオノーラスが絶句した。
「そんなんで自分自身を断罪しようというのか!他の人を巻き込んで、償いになんかなるか!」
デリトは声を荒げた。
「「償い?否、償いではない。
我は人間が嫌いなのじゃ。醜く愚かな存在には消えてもらいたい。
エライトもそう思うであろう?」」
エライトの口を借りて聖剣ゴールドシルバーが話したが、エライトは何も反応しなかった。
デリトはまたしても怒りを顕にしようと思ったが、ふと思いとどまった。
「聖剣ゴールドシルバー。お前自身の本来の目的は何なんだ?」
「「我の目的は憎き宿敵シルバーゴールドに奪われたこの異世界の秩序の回復じゃ。
だが、今はエライトさえいれば満足になった。だからこの異世界には此奴だけで良い。」」
突如として、聖剣ゴールドシルバーから何か、煙のようなものが出てきた。
するとその姿はつやつやと煌めく実体を得て、みるみると人の形になっていき、やがて銀色に輝く肌をした金色の髪の少女の姿となった。
少女はさわさわと愛おしそうにエライトの頬を撫でている。
「貴様・・・まさか聖剣ゴールドシルバーか・・・?」
数々の異世界を巡ってきたデリトもこれには度肝を抜かれていた。
ここにきての聖剣ゴールドシルバーの人型化、そして精神の実体化など予想だにしなかった。
「「その通りじゃ。我は勇者エライト、此奴に惚れた。
我は此奴が悲しむ姿をみとうないのじゃ。だから此奴を悲しませる人間どもを全て滅ぼす。」」
聖剣ゴールドシルバーの声が猫撫で声のようになり、エライトに頬を寄せスリスリする姿はとても世界を滅ぼす力をもった聖剣のイメージとは程遠く、
デリトをはじめ、その場にいた者たちの顔はひきつった。
「おいおい、やめろよ・・・世界を滅ぼすレベルのヤンデレとか・・・」
デリトがつぶやいた。
「くそっ、この状況なのにシュールすぎる・・・」
ツヴェが頭を抱えた。
「「だから貴様は邪魔なのじゃ!”異世界転生殺し”!」」
そう言うと再び聖剣に戻ったゴールドシルバーはエライトの体を操り、襲いかかってきた。
「くそっ、厄介な・・・!<インフィニット・ウェポン>!」
デリトは無数の武器で攻撃したが、再び躱された。
「ぐはっ・・・!!!」
デリトは吹き飛ばされ、広場の周囲の建物をなぎ倒し破壊した。
2人の攻防はしばらく続いたが、デリトはほとんどエライトに攻撃を当てることができず、段々と追い詰められてきた。
ただ、エライトの方も完全に自分の意思で動いているのではなく、ゴールドシルバーに操られるがままにしているようで光の速さで動く”権能”ではなく、通常の身体能力で動いていた。
僅かながらもデリトの攻撃は当たってきていた。
そして、それこそがデリトの狙いだった。
ついにエライトがデリトを追い詰め、あわや窮地と思われた時、エライトの体がピタリと止まった。
「何回も同じ罠に捕まってくれて助かるよ。ま、今回は気付かれないように偽装工作したがな。」
デリトはにやりと笑った。
「「またしても蜘蛛の糸か・・・?何度やろうと同じ・・・」」
そういったエライトはハッとして、首が固定されているので目だけを動かし真上にある建物の上を見た。
「「まさか・・・貴様・・・!」」
「そのまさかさ!サプライズだぜ神の聖剣様よ・・・!」
建物の上にはデリトと共に2つの異世界を旅してきたゾーレが眩い黄金色に輝く大剣を抱えて立っていた。
「「貴様の眷属か・・・!あの小娘は牢に捕らえていたはず・・・!」」
「眷属じゃなくて仲間だ。あんな牢くらい簡単に解除できるさ。俺がいくつ異世界を渡り歩いてきたと思ってるんだ。
牢破りのスキルくらい持っている。」
数々の異世界で手に入れた謎やトリック解明のスキルを使ってデリトは突破していたのだった。
ただ、それでも強力な牢で、実は解除に1時間かかった。
「「あれは・・・あれはぁぁぁぁ!」」
エライト、否、聖剣ゴールドシルバーは叫んだ。
そう、ゾーレが持っていたのは聖剣ゴールドシルバーと対になる、聖剣シルバーゴールドだった。
「よくやったぞ!ゾーレ!」
「うん!」
ゾーレは顔をほころばせた。
実はデリトの指示で異世界の奥深くに隠されていた聖剣ゴールドシルバーを探させていたのだった。
「オイオイ!あっしも一緒に探したんですが!」
ボッチェレヌが怒った表情を見せた。
「そのままこっちへ落としてくれ!」
デリトはボッチェレヌの言葉を無視してゾーレに伝えた。
「分かった。行くよ・・・!」
ゾーレは狙いを定め、聖剣シルバーゴールドを宙に放った。
「おわ!ピンポイントで危ないところに落としたな!」
聖剣シルバーゴールドは重力に従って吸い込まれるようにデリトのいた地点に突き刺さった。
間一髪のところで逃れたデリトに、ゾーレは手を合わせた。
「ごめん、デリト!!!」
「・・・い、いや、ありがとう。次は気をつけてくれ・・・。」
ゾーレの投擲センスが良いのか悪いのか分からないが、デリトは聖剣シルバーゴールドの銀色の柄に手をかけた。
地面からシルバーゴールドを引き抜き、デリトは構えて聖剣シルバーゴールドに語りかけた。
「聖剣シルバーゴールド。力を貸してくれ。代償として、この異世界をくれてやる。」
デリトはどうしても剣を使いたくない理由があったのだが、今回は短い時間ということで我慢することにした。
デリトの考えとしては聖剣シルバーゴールドと聖剣ゴールドシルバーは異世界転生者が手にした時のみ真の姿と力を見せるのではないかとおもっていた。
その読みは当たり、デリトを新たな異世界転生者として受け入れた聖剣ゴールドシルバーは光り輝きはじめ、真の姿を現すことになる。
「「仕方あるまい。我としては聖剣ゴールドシルバーを打ち倒せるのならば仮の勇者だろうと、仮の異世界転生者だろうと受け入れようぞ。」」
デリトの口を借りて聖剣シルバーゴールドはその真の姿を現した。
否、もとの姿を再現したという方が近かった。
デリトは聖剣シルバーゴールドから出てきた煙に包まれ、やがて、デリト自身の表層の姿を变化させた。
「貴様・・・その姿は・・・」
再び自分自身の意識に戻ったエライトは絶句した。
なぜなら目の前に殺したはずの兄・スタンライトの姿があったからだった。
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